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やまねこムラだよりー岩手の五反百姓からー

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つじむら・ひろお 1948年生まれ。2004年岩手へIターンして、就農。小さな田んぼと畑をあわせて50アールほど耕している五反百姓です。コメ、野菜(50種ぐらい)、雑穀(ソバ、ダイズ、アズキ)、果樹(梅、桜桃、ブルーベリ)、原木シイタケなどを、できる限り無農薬有機肥料栽培で育てています。

第二十八回

「新学習指導要領」を読んで

 先週号の「マガジン9条」で、どなたかが言及してくれるだろうと思っていたのですが、「君が代」の事以外はふれられていませんでしたので、門外漢のわたしがあえて、申し上げます。間違いや勘違いがあれば、あとで専門家の方が訂正をお願いします。

 3月28日付けで、渡海文部科学大臣が告示した、新しい小中学校の学習指導要領についてです。
 これは、告示の1ヶ月半前、2月15日に公表された「改定案」とは、微妙に、しかし重要な内容が、変更されています。これを文科省は「パブリックコメントのほか、改正教育基本法の趣旨や国会審議、与党とのやりとりを踏まえた修正。特に重要な修正部分はない」と説明しているそうですが、ほんとうにそうでしょうか。
 教科書検定で、虫メガネでしか見えないような箇所まで、修正を要求する文科省の役人が、こんな重要な修正を「特に重要な修正部分はない」と、とぼけている。まず、これがアヤシイ。

 そもそも、2月の改定案公表まで、長いあいだ中教審で、ああでもない、こうでもないと、公開審議された上での改定案だったはずです。国民のあいだでも、おおくの賛否が分かれた議論でした。
 それを、いとも簡単に、しかも文科省内部という密室の中でカッテに「修正」を加えたうえでの告示です。これは、国民に対する一種のサギ行為ではないでしょうか。
 たとえば、家の修理を大工さんに頼んだ。その見積もりは100万円だったとします。それが、いつの間にか、請求書では200万円になっていた。そんな感じです。国民は、だまされてはいけません。

 具体的に、「改定案」からの「修正」を見て行きましょう。
 まず「小中学校総則」。改定案では「道徳教育は・・伝統と文化を継承し、発展させ・・道徳性を養うことを目標とする」だったのが、修正後では「・・伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し・・」と変えられています。
 「愛国心」については、国民の間にも賛成反対それぞれの意見が多く、かなり問題になった箇所と思いますが、かくもあっさり、なしくずしに「修正」です。

 「小学校・音楽」。「「君が代」はいずれの学年においても指導すること」が「「君が代」はいずれの学年においても歌えるよう指導すること」になっています。事実上、子どもたちに君が代を歌わせろ、ということです。

 「小学校・国語」。「昔話や伝説などの本や文章の読み聞かせを聞いたり・・」が「昔話や神話・伝承などの本や文章を読み聞かせを聞いたり・・」と変更。日本神話の復活の予兆です。

 「中学・社会」。「我が国の安全と防衛の問題について考えさせる」が「我が国の安全と防衛及び国際貢献について考えさせる」と変更。「国際社会から尊敬される国家になりたい」といった前総理の遺言が生きているようです。

 このほか、問題点のある「修正」はまだまだあるようですが、わたしは専門家でないので、よくはわかりません。しかし、わたしのシロウト考えだけでも、上記の箇所は「特に重要な修正部分はない」と、とぼけられてはたまらない、重要な変更だとおもいます。

 子どもたちの教育という、大切なことだからこそ、中教審は時間をかけて、しかも公開で審議してきたはずです。その「改定案」が公表されるまで、紆余曲折もありました。ともあれ、その多くの時間とエネルギーと税金が費やされた集積の結果としての、「中教審の改定案」だったはずです。
 それがいとも簡単に、文科省の一握りの役人の恣意的な思惑で、カッテな「修正」が加えられて「新学習指導要領」とされて告示されてしまう。おまけに「特に重要な修正部分はない」ととぼけている。この国家の、詐欺師のようなやり方は、どう考えても民主主義のシステムではない。

 わたしは「国家」と「国土」は、別物として、わけて考えたほうがいいと思っています。
 日本の国土は実に美しい。特に、わたしの住むやまねこムラはとても美しい。誇りにおもっています。
 ですから、どっかの誰かがやってきて、今日からやまねこムラはおれの支配下にある、みんなおれの言うことを聞け、とかいったら、わたしはやまねこムラを守るために、テッポウで抵抗することも辞しません。それくらい、やまねこムラの「国土」が好きです。
 でも、その国土と、いまの「日本国家(体制)」とは別物なのだ、と考えています。今回の文科省のような、詐欺師まがいのことを平気でやる国家を、私は信じていません。

 国家にだまされないためにも、国家の言うことは、最初からハナシ半分に聞いていた方が精神衛生によろしい。「宙に浮いた社会保険料」の問題も、3月末までに最後の一人まで全部の照合を終わらせる、といった当時のアベ総理大臣やマスゾエ厚生労働大臣を全面的に信用するからハラが立つのです。最初から「ハナシ半分」に聞いておけば、ハラ立ちも半分ですみます。みなさまは、どうおもわれるでしょうか。

 ところでハナシは変わりますが、先日「日本の青空」という映画を、地元の自主上映会で見ました。鈴木安蔵(1904~1983)という憲法学者の生涯を描いた作品です。(大澤豊監督・2007)。
 現在の日本国憲法はアメリカの押しつけだ、という論調がありますが、じつはアメリカ側が参考にした憲法案を日本人がすでに作っていた。その憲法草案を考えたのが、鈴木安蔵だった、という内容です。いってみれば、現在の日本国憲法の誕生裏話といった物語です。
 「マガジン9条」ではすでにこの映画を取り上げていたのかもしれませんが、わたしがお世話になるようになった昨年8月以降は、話題になっていなかったようですので、改めてふれました。
 これも、「六ヶ所村ラプソディー」同様、「マガジン9条」の読者には見ていただきたい映画だと思いました。

(2008.4.3)

今年は、ダンシャクを3キロ、メークインを3キロ、畑に植え付けししました。
6キロのジャガイモが、7月には100キロ以上の新ジャガになってくれます。
粉のように見えるのは、ストーブの灰。ジャガイモにはいい肥料になります。

「我が国と郷土を愛する」ことも、「君が代を歌える」ことも、
それ自体が悪いわけではないけれど、
国家から「教育」の形で押しつけられるべきことでないのは明らか。
政府がどんな「国民」を育てたがっているのかが、
この「修正」からはくっきりと透けて見えるようです。
みなさんのご意見もお待ちしています。

辻村さんもお勧めの、
映画「日本の青空」に主演した高橋和也さんのインタビューは、
こちらから読めます。
『使える9条』にも収録されています。
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