070919up
つじむら・ひろお 1948年生まれ。2004年岩手へIターンして、就農。小さな田んぼと畑をあわせて50アールほど耕している五反百姓です。コメ、野菜(50種ぐらい)、雑穀(ソバ、ダイズ、アズキ)、果樹(梅、桜桃、ブルーベリ)、原木シイタケなどを、できる限り無農薬有機肥料栽培で育てています。
第六回
前回「安倍さんには、もっとがんばって、総理大臣を続けてもらいたい」「がんばれ! 安倍」とエールを送った(?)のに、ちょうどその日に、彼はトツゼン総理大臣を辞めてしまいました。「ぼく、いやになっちゃった。いち、ぬ~けた」ということなのでしょうが、これはわたしの期待だけでなく多くの国民を裏切る、無責任という名の「責任のとりかた」だとおもいます。次の総理は、農村出身の方がいいのではないでしょうか。すくなくとも、ねばり腰がききます。
ところで、常日ごろの、マスコミの報道をみていて、五反百姓として納得できないことがあります。それは、ニュース価値のあるなし、にかかわるのでしょうが、人の死が等価に扱われないことです。
たとえば、2001年におきた米国の9.11同時多発テロは、大報道されました。実際、大報道されるべき大事件でした。死者は、約3,000人でした。
あるいは、日本で激震災害があり、数百人とか、数千人とかの方が亡くなったら、これも大報道されます。飛行機事故や、列車脱線事故で、多くの方が亡くなったときも、大報道されます。それは、マスコミとして、当然の姿勢だとおもいます。
第二次世界大戦では、日本人だけでも3,100,000人が亡くなった、と60年以上たった今も、毎年、慰霊の式典があちこちで行われます。これも、当然のことです。
そもそも、この「マガジン9条」をはじめとする多くのグループや、多くの人々が、憲法9条を守ろうと活動するのも、この大量の死者たちへの鎮魂と、そんなに大量の「理不尽な死」を作ってしまった歴史への反省があるからだとおもいます。
戦争やテロで殺されるのは、理不尽な死です。理不尽な死があれば、積極的に報道し、その原因を糾明し、責任が誰にあったのかを問うのが、マスコミの役割だとおもいます。
ところで、国連食糧農業機関(FAO)という組織があります。
その報告によりますと世界で850,000,000人以上の人々が、今現在も、飢えで苦しんでいます。
そして毎年毎年、子どもが、5,000,000人以上、食べ物がなくて、餓死しているのです。
日本の15年戦争の死者が、3,100,000人です。その1.6倍です。 それが毎年、毎年、です。
1日に、14,000人づつ、子どもが飢えて死んでいくのです。
たとえば、また大規模テロがあり、一度に14,000人が死ぬようなことがあったら、これは世界のマスコミが大騒ぎするでしょう。競って報道すべき大事件だからです。
そんな大事件が、毎日毎日、子どもたちの世界で、起こっているのです。
でも、ほとんどのマスコミは、報道しません。無視しています。
報道する価値がないからでしょうか。ニュースバリューがなければ、報道に値しないのでしょうか。テロによる死と、餓死による死と、死の価値に差があるのでしょうか?
戦争やテロによる死が「理不尽な死」であるように、飢餓による死が「理不尽な死」ではないのでしょうか?
また、餓死する子どもたちのほとんどが、アフリカやアジアの貧しい国の子どもたちです。日本やアメリカの子どもが一度に数十人規模で死んだら、大事件として報道されるでしょうが、貧しい国の子どもたちがいくら死のうと、報道される価値はないのでしょうか?
これは、国際的なネグレクト(無視による虐待)ですね。
「テロとの戦い」には、いくら予算をつぎ込んでもかまわない、というのがブッシュさんやこれまでの日本政府の、方針のようです。
では「飢餓との戦い」に、どうして予算をつぎ込まないのか?「テロとの戦い」のほうが、利権がたくさんあって、もうかるから、でしょうか。
日本の食料自給率は、39%になりました。61%は、外国からの輸入です。 金額にすると、320億ドルの食糧を輸入しています。(ダントツで世界一です) 畑に換算すると、1200万ヘクタール分の農地から収穫される農産物に相当します。 日本の全農地が、450万ヘクタールですから、日本の農地の2.5倍以上もの農地とそれを育てる水を外国から借りている、ということにもなります。
たとえば、日本の食料自給率が100%になれば、この1200万ヘクタールから生み出される作物と水が、飢えた人たちへまわります。(じつは、そう単純ではないのですが)
そうなれば、毎年飢え死にしていく子どもたちの多くが、助かる。
これこそ、国際貢献になるのではないでしょうか。
日本の安全保障のためだけでなく、世界の飢えた人々に食糧をまわす。そういう国際貢献をするためにも、日本の食料自給率を、あげたほうがいいのです。
アメリカの軍艦に燃料を補給するよりずっと効果的に、多くの子どもたちを飢えから救うという、対費用効果の高い国際貢献ができるのです。
だいいち「腹が減ってはいくさができぬ」というではありませんか。食料自給率39%の国が、戦争なんてできっこないのです。
それとも、コッカコーラとマックだけで、戦争ができるというのでしょうか。
ムラの鎮守のお祭りで奉納された鹿踊り(ししおどり)。
ことしも豊年満作だったことへの祈りと感謝がこめられています。
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