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2011-01-12up
やまねこムラだより〜岩手の五反百姓から〜
第四十八回
シアワセの方程式
やまねこムラは、すっかり雪景色です。白い雪に埋もれて、人も動物も植物もみんな冬眠中、といったところでしょうか。
さて、今年の7月にテレビの地上放送が終了とのことですね。じつは、わが家はまだアナログテレビのままです。そのうちデジタルテレビに買い換えようとはおもっているのですが、換える必要をあまり感じないのです。
というのも、テレビをふだんはほとんど見ないからです。新聞も地元の「岩手日報」1紙のみ。雑誌は「現代農業」だけ。ケータイももっていません。今の若い方たちからすれば、かなりの「情報オンチ」といわれそうですね。
おそらく都会のにぎやかで便利な街中に住んでおられる方は、なんと不便で時代遅れの生活なんだろう、とおもわれるでしょう。ムラにあるお店と言ったら、酒屋、床屋、美容室、豆腐屋、よろず屋(雑貨・食品)、自動車や農機具の修理工場、ガソリンスタンド、郵便局、農協・・ぐらいでしょうか。喫茶店もコンビニも本屋もありません。
若いかたには「そんな生活には耐えられない!」といわれそうです。
では、そんな生活しかできない私は、不幸なのでしょうか?
いえいえ、私自身は、じゅうぶんシアワセだと、おもっています。
そこで、シアワセの方程式とでもいったらいいものをご提案したいとおもいます。
H=d/D
これが、シアワセの方程式です。実に、単純です。
Hは、ハッピーのH。つまり幸福度です。大文字のDは、人間がもつ欲望(desire)です。小文字のdは、実現された欲望です。
このシアワセの方程式から推測できることは、Hの数値、つまり幸福度を高めるには、ふたつのやり方があるということです。
自分の欲望をより多く満たす(dの数値をあげる)か、あるいは自分の欲望を小さくする(Dの数値をさげる)か、です。
便利で快適な暮らしをしたい、とは誰もが願うことでしょう。でも、その「便利」にはキリがないですね。ケータイがあることが当たり前の生活なら、ケータイがない生活は不便でしかたないでしょう。
でも、私のようにはじめからケータイを持たなければ、ケータイがなくても不便は感じないのです。つまり、ケータイを持ちたいという欲望をなくせば、ケータイを持たない生活になんの不満も生じないのです。
いっぽう、ケータイのない生活など考えられない、という方には、ケータイは生活の必需品です。そして、次々により新しくて便利な新型のケータイが発売されますから、いつも最新型のケータイをもっていないと満足できない、という心境になってしまいます。
人間の欲望にキリはありません。常に最新型のケータイを持っていたい、という欲望に終わりはありません。メーカーも、その心理をついて、企業の業績を上げるために、次々と新型ケータイを開発してくるでしょう。そのいたちごっこを終わらせるには、「いつも最新型のケータイを持っていたい」という欲望をなくすことしかありません。シアワセの方程式でいえば、大文字のDの数値を縮小させるしかないのです。
つまり、ケータイを持たないと決心するか、あるいはいま持っているケータイで十分と満足すれば、ケータイジレンマから解放されて、気持ちはのびのびします。シアワセになれるのです。
ケータイはひとつの例にすぎません。個人だけでなく、企業も国家も、おのれの欲望を縮小させれば、いらぬ訴訟ごとや戦争はおきません。
尖閣諸島の問題にしても、北方領土問題にしても、国家が自分の領土を「もっともっとほしい」と欲望を拡大することが、原因だったのではないでしょうか。
尖閣諸島は、中国の領土でも日本の領土でもない。もともと無人島だったのならば、それは地球全体のものだったということで、南極のように誰のものでもない、とする。クナシリ島もエトロフ島も日本領だロシア領だという前に、もともとはアイヌ人のものでした。ならば、アイヌの方にお返しする。(現実的でない、という批判は百も承知ですが、まあわたしの初夢ということで、ご容赦ください)
個人だけでなく、企業も国家も自分の欲望を縮小させなければ、地球そのものが危うい時代になってしまった、とわたしは感じています。
H=d/D
単純な方程式ですが、この分母のDを小さくする(欲望を小さくする)ことが、世界の平和にとっても、人のシアワセな暮らしにとっても、たいせつなのではないか・・。
こんなことを考えていたら、あるバアサマにこんなことをいわれました。
「雪と欲ぁ、積もれば積もるほど、道ぃ忘れる・・」
なるほど、みちのくのバアサマたちは、学問はなくてもほんとうに暮らしの知恵があるのだなぁ、とおもいます。
やまねこムラは雪のなかです。わたしも道を忘れないように、降り積もった雪の道をゆっくりと歩いていきたいとおもっています。
(2011.1.2)
どうか今年こそいい年になりますように・・。
やまねこムラのお地蔵さんからの祈りです。
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溢れるモノに囲まれて暮らしていると、
「あれが欲しい、これも必要」と、
欲望はどこまでもふくれあがっていきます。
ときにはちょっと立ち止まって、
「ほんとに必要?」と考え直してみることが、
人も国も「シアワセ」になる第一歩なのかも。
つじむら・ひろおさん
プロフィール
つじむら・ひろお1948年生まれ。2004年岩手へIターンして、就農。小さな田んぼと畑をあわせて50アールほど耕している五反百姓です。コメ、野菜(50種ぐらい)、雑穀(ソバ、ダイズ、アズキ)、果樹(梅、桜桃、ブルーベリ)、原木シイタケなどを、できる限り無農薬有機肥料栽培で育てています。
やまねこムラだより〜
〜岩手の五反百姓から
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