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もりなが・たくろう経済アナリスト/1957年生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁などを経て、現在、独協大学経済学部教授。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)、『年収120万円時代』(あ・うん)、『年収崩壊』(角川SSC新書)など多数。最新刊『こんなニッポンに誰がした』(大月書店)では、金融資本主義の終焉を予測し新しい社会のグランドデザインを提案している。テレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。
普天間飛行場の移設問題に関して、候補地に関する政府案を5月までにとりまとめる必要があることから、政府与党は水面下で移転先を模索している。しかし、その候補地は米国ではなく、どうやら国内になりそうだ。社民党までが、国内移転の可能性を示唆しているからだ。報道によると、社民党は、普天間飛行場の移設先として、グアムが困難な場合には、沖縄県外の米軍基地や自衛隊基地に分散移転することを提案する方針を固めたとされる。具体的な移転先についても、馬毛島(鹿児島県)、鹿屋基地(鹿児島県)、大村基地(長崎県)、相浦駐屯地(長崎県)、佐賀空港(佐賀県)、築城基地(福岡県)、東富士演習場(静岡県)、米軍岩国基地(山口県)、米軍横田基地(東京都)、苫小牧東部地区(北海道)の10ヶ所が候補になっていると伝えられている。もちろん、最終的な国外移転までの暫定施設という位置づけだが、暫定が何十年も続くというのは、よくある話だ。
そもそも、連立政権を組む時の合意文書には、「沖縄県民の負担軽減の観点から、日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地の在り方について見直しの方向で臨む」と明記されている。しかし、いま連立政権内で行われているのは、移転先探しであって、米軍再編や在日米軍基地のあり方を見直していない。
1月16日に、私は辺野古を訪ねた。おそらく10年ぶりだが、辺野古はあまり変わっていなかった。ただ、キャンプシュワブとの境界の海岸には、海中に至るまで鉄条網が張られ、そこには色とりどりの布が巻きつけられ、そして新基地建設反対のプラカードがたくさん掲げられていた。
海岸では、波の音と鳥のさえずりしか聞こえない。本当に静かな空間だ。ところが、その静けさを、突然マシンガンの銃声が打ち砕いた。キャンプシュワブで実弾演習が始まったのだ。普天間の住民が、米軍基地から大変な被害を受けていることは、間違いのない事実だ。しかし、辺野古の住民も、すでに十分大きな被害を受けている。普天間基地の辺野古への移転は、さらなる負担を辺野古に押しつけるということだ。
実は、辺野古に作られようとしているのは、普天間飛行場の代替施設ではない。オスプレイと呼ばれる垂直離発着ができる航空機の滑走路を含む新たな巨大基地だ。しかもオスプレイは、開発段階で何度も墜落事故を起こしている不安定でリスクの高い航空機だ。そうした航空機を国内で飛ばせば、いつか必ず事故が起き、住民が巻き込まれるだろう。
いま本当に考えなければならないのは、普天間飛行場の移転先をどこにするということではなく、日本の平和を守るために、世界とどのように付き合っていけばよいのかという議論だ。確かにアメリカへの服従をやめたら、何をされるか分からないという主張に根拠がないわけではない。アメリカで、自動車のリコールが数え切れないほど行われているのに、トヨタだけが議会の公聴会に呼ばれて詰問されたのも、政権交代で日本がアメリカの言うことを素直に聞かなくなったということが背景にあるのかもしれない。
しかし、そうした問題を含めても、果たして日本が引き続きアメリカに全面服従することなしには生きていけないのか、他に外交上の選択肢がないのかということを、国民全体で議論していかなければならないと思う。少なくとも、私は米国べったりの外交姿勢は、日本社会にとっても、日本経済にとっても見直していかなければならない時代が来ているのだと思う。
日米同盟を守るためには、どこかに普天間の代替施設を作らないといけないと、多くの有識者が語っている。そのために政府はどこに代替施設を作るかで右往左往している。だが、そもそも東西冷戦が終わったいま、引き続き日米同盟が必要なのかという議論はほとんどなされていない。そもそも、もし日米同盟が役割を終えたということになれば、代替施設そのものが必要なくなるのだ。
せっかく政権交代をしたのだから、駐留米軍が、なぜ日本にいて、彼らが日本のために一体何をしてくれるのかというところに立ち返って、冷静で建設的な議論を国民全体ですべきではないだろうか。
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なぜ「移転」が覆ることのない前提として語られるのか。
普天間基地問題に関する報道に触れるたび、
わきあがってくる違和感がまさにこれ。
今こそ本当に必要なのは、
「押し付け合い」とも見える移設先探しではなく、
もっと本質的な議論なのでは?
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