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森永卓郎の戦争と平和講座(24回)

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ますます加熱する、アメリカ大統領選・民主党の候補者指名争い。
日本を含む世界の情勢にもその結果が大きな影響を与えそうなこの戦いを、
森永さんはどう見ているのでしょうか?

第24回:頑張れオバマ

 アメリカ大統領選で、民主党の候補者指名争いの激戦が続いている。2月16日現在、獲得した代議員の数はオバマ氏が1102人、クリントン氏が978人と、オバマ氏のリードが大きいように見える。しかし、2月17日付の朝日新聞によると、民主党幹部に割り当てられている特別代議員の数を加えると、オバマ氏1262人、クリントン氏1213人と、その差はわずかだ。

 このままいくと、6月上旬までの予備選挙では決着がつかず、候補者決定は、8月末の民主党全国大会での最終決戦にもつれ込みそうだ。
 両候補の政策は、違いがよく分からないとされる。実際、変革を旗印にしているオバマ氏が、「具体策が見えない」という批判に応えて発表した景気対策は、クリントン陣営から「ヒラリー候補の政策の盗作なのではないか」と揶揄されるほど、似通ったものだった。
 また、対イラク政策についても、両候補とも米軍のイラクからの撤退を掲げており、大きな違いはない。

 私は、どちらが大統領になってもブッシュ政権時代よりは、ずっと世界は平和になると思う。911で逆上し、アフガニスタンで市民を戦争に巻き込み、アルカイダとは無関係のイラクに「大量破壊兵器がある」との難癖をつけて戦争を仕掛け、さらにいまでもイランへの武力攻撃を示唆するジョージ・W・ブッシュ大統領と比べれば、どちらの候補も、普通の「人の心」を持っていると言えるからだ。

 ただし、オバマ氏とクリントン氏には、決定的な差がある。それは、オバマ氏がイラク戦争に一貫して反対してきたのに対して、クリントン氏はイラク戦争の開戦時に、イラク攻撃に賛意を示していたという事実だ。
 クリントン氏は、誤った情報を与えられていたので判断を間違えたのだと主張している。しかし、アメリカ大統領は世界最大の軍の指揮官であり、核兵器の発射ボタンを握る存在でもある。だから、間違った情報の下でも、判断を誤らなかったオバマ氏の方が、私は大統領としての適性が高いと思うのだ。

 ブッシュ大統領の任期は来年1月までだが、8月末には、実質的に新しい大統領が決まる。そのころには、ブッシュ政権が軍事面でも死に体になってくれているとよいと心から願う。
 そうなれば、中東情勢も安定してくるから、原油価格も落ち着いて、我々の生活もずいぶんと改善するはずだ。

「非難合戦」の様相をも呈しつつあるこの争いですが、
どちらが勝つにせよ、世界の平和にとっての「前進」となる結果であってほしいものです。
森永さん、ありがとうございました。

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