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森永卓郎の戦争と平和講座:バックナンバーへ

森永卓郎の戦争と平和講座(22回)

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日本にもその余波がやってくるといわれている
アメリカの「サブプライムローン」問題。
どんなシステムで、何をもたらしているのでしょうか?

第22回:サブプライムローンの残酷

 アメリカのサブプライムローンが、世界の金融機関を震撼させている。サブプライムローンのこげつきが、金融機関の利益を大きく減らし、経営を揺るがしているからだ。

 サブプライムローンとは、アメリカで、銀行から融資を受けられない低所得者(信用度の低い人)に対して、住宅ローン会社が融資する住宅ローンだ。その特徴は二つある。一つは、当初3年間は5%から9%という銀行の住宅ローンとあまり変わらない、ほどほどの金利で貸し出すのだが、4年目からその金利が10%から18%程度という高利に急上昇するということだ。

 住宅価格が上がり続けていれば、そうした金利上昇があっても、住宅を売却したり、条件のよいローンに借り換えたりできるのだが、アメリカの住宅価格は昨年秋から下落に転じている。そうなると、借り換えもできないから、借り入れをした人は、金利の引き上げをもろに被ることになる。低所得者がそんな高い金利の住宅ローンを支払えるはずがないから、いま全米で200万人を超える人が支払い不能に陥っているのだ。

 サブプライムローンのもう一つの特徴は、住宅ローン会社が、貸出債権を証券化して、他の金融機関に売却してしまうことだ。つまり、住宅ローン会社は、回収の見込みが薄くても、とりあえず貸してしまうというモラルハザードが起こることになる。こげついても、その損失を被るのは、住宅ローン会社ではなく、証券を買った金融機関になるからだ。

 だから、変動金利であることを告げずに契約したり、借入者の年収を大幅にごまかしたりといった滅茶苦茶な融資が行われてきた。一番多いのは、「3年経てば、住宅価格が上がるので何とかなりますよ」という根拠のない楽観論を、住宅ローン会社と借入者の間に立つブローカーがささやくというパターンだ。

 住宅ローンを支払えなくなると、裁判所が住宅を競売に付すために、退去命令を出す。実際に退去を迫るのは、保安官だ。ライフル銃を持った保安官が住宅にやってきて、抵抗すれば逮捕される。そうして主を失った家には、次々に泥棒が入り、残された家具や備品や洗面台の下のS字管までが奪い去られていく。

 競売にかけられた住宅は、購入価格の半額程度で次々に新しい買い手のもとに渡っていく。一生の夢が実現し、やっと取得できた住宅、自分の好みに飾られた住宅が、跡形もなく消えていくのだ。

 統計があるわけではないが、サブプライムローンを借りて破綻した人は、大部分が有色人種だ。そして、彼らが手放さなくてはならなくなった住宅を安値で買っているのは、生活に余裕のある層だ。白人も多い。自ら返済計画を立てず、ローンの契約書をきちんと読んでいなかったのが悪いという意見を言う人もいる。しかし、教育水準の低い人が、分厚い契約書をきちんと読んで、判断をすることが可能だとは、私は思わない。

 サブプライムで儲けたのは一部のずる賢い人たちだけで、その裏側で、弱い人が食い物にされ、人生を滅茶苦茶にされてしまう。その構造は、戦争と同じだ。そして、世界を不安と混乱に陥れるという事情も、戦争と同じだ。

サブプライムローンのシステムは、いったい誰がどのようにして作ったものなのでしょうか?
弱者を食い物にする社会構造や一部の人々に対して、私たちはどうすればいいのでしょうか?
戦争と根を同じくする大きな問題が横たわっています。

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