戻る<<

松本哉ののびのび大作戦:バックナンバーへ

松本哉ののびのび大作戦

091125up

これまで「高円寺一揆」や、「クリスマス粉砕デモ」など、
数々の脱力系にして最強の「運動」を繰り広げてきたカリスマ店主、松本哉のコラム連載です。
高円寺から世界へ「のびのび大作戦」、日本のみならず世界各地でも増殖中!
翻訳ツールもつけました。

まつもと・はじめ 「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)

※アマゾンにリンクしてます。

第18回「ワールドツアー敢行! ドイツ大作戦!!」

 みなさん、お久しぶり!! この連載「のびのび大作戦」を2カ月近くにわたり休んでいたわけだが、ついに復活してしまう! なんでサボってたか? それは仕事に追われて手が回らなかったわけでも、飽きてきたのでやめてしまったわけでもない。 何を隠そう、ライプツィヒ、ベルリン、ハンブルク、ソウル、北京、武漢、香港の7都市をまわるワールドツアーに出かけていたのだ!! 日本や高円寺の映像や情報を持って、各地のマヌケな連中と交流してきた!! ということで、ちょっとワールドツアーの報告をしてしまおう! まず今回はドイツ!

 まず、なんではるばるヨーロッパまで行ったかというと、ベルリンのHAUという劇場の人からイベントをやりたいという連絡があり、ドイツ行きが決まった。なんでも「ドイツの人は、日本で騒ぎが起きたりしているということは全く知らないから」だという。 で、この呼んでくれた人がギョーム・パオリというとんでもない人。この人、かつて「HAPPY UNEMPLOYED(ハッピーな無職)」という最強の軍団を率いており、オルタナティブな生き方がいかに楽しいかを訴えていた奴だ。行動もマヌケなものが多く、たとえば労組などの真面目なデモがあったときに、参加して一緒にシュプレヒコールを上げるのではなく、そのデモの沿道にみんなでハンモックを掛けて、ひたすら寝てたりして、いかに労働から解放された生活が豊かかを訴えて連帯の意思を表明するというような、マヌケな作戦を展開したりしていたという。う~ん、どこにでも似たような連中はいるもんだ…。まあ、なんとなく高円寺で起こっている素人の乱とも通ずるところがあると思って招待してくれたんだろう。
 ってことで、ライプツィヒとベルリンの2都市でイベントをやることになった。高円寺でやったデモやらイベントやらの映像をちょっと見せながら、そのパオリさんとトークするというイベント。まずはベルリンから電車で2時間ほどのところにあるライプツィヒに行ったんだが、会場がまたすごかった。なんと100年以上前からありそうな、やたら立派な劇場! おい、こんなところで貧乏人の一揆を呼びかけてバチがあたらないか!? と思ったが、案の定、そこにヒッピーのオヤジとか謎のヒマ人とかがワラワラと集まってきた。パオリさんも目論見通りらしく「ここでこんなイベントやったらおもしろいね~。格式ばった伝統オヤジとかは怒るっしょ!」と喜んでいた。

伝説の男=ギョーム・パオリ氏と。彼は今、劇場の専属哲学者という謎の地位をうまく獲得して、のびのびと暮らしている!

 余談だが、このライプツィヒの日、街にやたらと機動隊がたくさんいた。後から聞いた話では、この日、ライプツィヒで極右集団のとんでもない連中=ネオナチが大集会を予定していたとのこと。で、ここぞとばかりに、ネオナチの3倍ぐらいの人数のアナキストやらパンクスの兄ちゃんやらが、右翼の集会を潰すために乗り込んできて、大パニックになったという。あちゃ~、惜しかった! イベントとかぶってなかったら駆け付けたのに!! ちなみに、余談の余談になるが、駆け付けるといっても役には立たない。2年前ベルリンに行った時、友達とデモに参加したら、まんまと警察と大乱闘になったんだが、2m以上あるサイボーグのような警官が棍棒を持って追いかけてきたので全力で逃げまわって、日本人の弱さをドイツ人に知らしめて来た覚えがある。どうだ、まいったか!
 さて、翌日はベルリンのHAUという劇場で同様のイベント。両日ともにたくさんの人が集まって盛況だったが、素人の乱などでやっているマヌケな反乱をドイツの人々に伝えるのはかなり難しい。普通に東京のデモの映像や、高円寺駅前のゲリラ的な騒ぎの映像を見せただけでは、なかなか反応しない。だって、ドイツの奴らは、街頭での自己主張がもう染み付いちゃってるから、デモなんか毎日のようにやっている。本気で怒ったデモをやろうもんなら、悪徳企業や右翼のショップをぶち壊したり、金持ちの車に火をつけたりするし、デモ以外の日常でも空きビルや空き地などを占拠して、自分たちのスペースを切り開いたりしている。あるいは、HAUもそうだが、日本では「ムダ」とされているような芸術活動をちゃんと認めさせて、市や国から補助金を取ったりもしている。そういう自分たちのスペースや生活スタイルの切り開き具合だけで見たら、ドイツのほうがはるかに進んでいる。ちょっとやそっとじゃ驚かない。で、そんなところで何をレクチャーするかといえば、やはり日本の誇るべき文化=マヌケ作戦だ。デモをやって機動隊ともめたときに、森進一の『襟裳岬』を大音量でかけたときにどれだけ効果を発揮するかとか、商店街の自民党支持の老人とお茶を飲んで仲良くなると、いかにアベコベの事態になってくるかとか…。とりあえず、ドイツの人々には思いもよらない作戦を報告してきた。だが、そうはいっても「最終的に目指す政治体制は何か?革命か?」とか「政治的立場の違う人を巻き込もうとするのは、やはり仏教の影響ではないか?」などという、とんちんかんな質問も飛び交い、なかなかいい交流になった。

街を歩けば、いたるところにこういう貧乏人の拠点のビルがある。バーやライブハウスなどの遊び場だったり、住居だったり、あるいはデモの出撃基地になったりもする。うらやましい。

 こんな感じで2日間のイベントも無事に終わり、あとは、2週間ほどかけてドイツのマヌケ衆のところをウロウロとまわってきた。しかし、ドイツの連中は相変わらずたくましく、自分たちの居場所を確保していた。空きビルを占拠して、バーや映画館、ライブハウス、アトリエ、住居など、コミュニティの道具を持っていたし、占領をとがめられて市から「立ち退きか契約か」の圧力をかけられるも「年間約5万円」というとんでもない低価格の家賃交渉に成功した奴らもいたし、なかなかすごかった。
 ウロウロしている途中も、次から次へと妙な連中が連絡してきて登場するし、ちょっといる間にも、IKEA反対行動だったり、ゲイ・レズビアン映画祭だったり、ネオナチショップ襲撃だったり、スクワット(占拠して使ってるスペース)の防衛のデモなんかも垣間見られたりもした。あるいは、すぐに知り合いができて、そのつてで別の遊び場に行ってみたりもできたし、ドイツの連中はとてもいい広がりをもっていた。
 ともかく、こういうドイツの連中のすごい作戦の数々を吸収して、逆にドイツ連中に「路上さんま作戦」などのマヌケ作戦を伝授して帰ってきた。外国には我々のあずかり知らない情報や新作戦が満ち溢れているので、とりあえず今後もっと行き来が増えることによって、お互いの貧乏人ののさばり具合を向上させて、悪い金持ち連中を叩きのめしていかなきゃいけない。
 ということで、これを読んだ諸君! 現地の団体とうまく話を進めて交通費を出してもらうもよし、商売のうまい人は日本の物をドイツで売りドイツの物を日本に売って交通費を捻出するもよし、芸を披露してカンパをもらうもよし、シベリア鉄道をキセルするもよし、悪い金持ちの弱みを握って交通費をゆすり取るもよし…、いろんな手を使ってドイツに行ってみよう! いろんなものに遭遇できるはずだ!

ドイツのデモにも参加。日本のデモとは大違いで、道路を全部使うわ、目立つ交差点ではデモを止めて騒ぎまくるわで、とても賑やか。

■次回予告!■
韓国大作戦! アジア最強の貧乏人=チュ・ドッカンの再来!

【ドイツに行く方へ】
ベルリンに着いたらこのサイトをチェック↓
http://stressfaktor.squat.net/termine.php
BARやライブから映画の自主上映、共同炊事、フリマまで、いろんな情報にありつけます。

久々の復活編はドイツから。
ガイドブックには間違っても出ていない、
もうひとつのドイツの「顔」がここにある?
ますますワールドワイドに展開する大作戦、
次回は韓国編、お楽しみに。

ご意見フォームへ

ご意見募集

マガジン9条