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これまで「高円寺一揆」や、「クリスマス粉砕デモ」など、
数々の脱力系にして最強の「運動」を繰り広げてきたカリスマ店主、
松本哉による待望のコラム連載です。
来るべき世界恐慌には、この作戦で立ち向かえば、怖くない?。
まつもと・はじめ 「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ
衆院選も終わり、悪の権化=自公政権もケチョンケチョンになり、ひとまずはめでたしめでたしっていうところだ。
しかし! そんな歴史的な選挙の1週間ほど前、いったいなにが行われたかというと…。そう、かねてから目論まれていた長野作戦!! いや~、とんでもなかったね! こりゃ、民主党どころの騒ぎじゃないぞ。
政治が盛り上がっている傍らで、我々は日々、仕事に行けば安い給料でコキ使われ、日常生活では「あれを買え、これを買え」と、やたらと金を使わされ、散々金を巻き上げられる。で、たまには遊びに行こうかと思ってみると、各種の遊び場やイベントに金もうけ連中が入り込んでいて、これまた金をふんだくられる。職場でも日常でも金を取られ、遊びですら金を使わされる。おまけにその、金を使った遊びですら、「明日の労働の糧」にされてしまうという、まさにボッタクリ経済もはなはだしい世の中。まったく、冗談じゃねえ!!
…という、そんなくだらない社会に対抗して、タダ同然で遊んでしまおうという強力なイベントが、その長野作戦「なんとかフェス2009」だ。長野の話はこの連載でも何度も登場しているので、ご存知かもしれないが、要するにたまたま知り合ったリサイクル屋のオッサンのウラ山でやるイベント。ということで、その会場には、まさに何もなかった!! 水道もなければ、トイレもない。店もなければ、そもそもそこへ行くための交通手段すらない。まさに、勝手にやるイベント!
それを、半月ほど前から準備の先発隊が現地に行って、草を刈ったり、ステージを作ったりして何とか会場を作り、イベントに備えた。しかし、その「なんとかフェス2009」が行われるのは8月21~24日と、3泊4日。大丈夫なのか?
ジローズビッグマウンテン。なかなか広い。
【与作事件勃発】
さて、フェス初日。イベントが始まる時間になったのだが、いまいちまだ人の集まりが悪い。しまった、さすがに山奥過ぎたか? それとも告知の地図がいい加減すぎたのか??
とりあえず景気づけにDJがレコードをかけ始めてみるが、その会場のジローズビッグマウンテンのボス=ジローさんが、すかさず「おい、これを頼む」と1枚のレコードをDJに渡した。北島三郎の「与作」だ! そして、ジローさんはイスを持ってきてスピーカーの前に設置し、ゆったりと座る。超特等席だ! しかもマンツーマンなので、DJも与作をかけざるを得ない! そして、DJはそっとレコードに針を落とす。夕暮れ時の山には「与作は木~を~きる~ ヘイヘイホ~ ヘイヘイホ~」と爆音で流れる! おいおい、なんだこれは! フェスの初日だぞ!! そんなことをするために2ヶ月も準備してきたのか!?
【狂乱の4日間が開始!】
しょっぱなの与作事件で一瞬ひるんだものの、その後はいきなり大盛況だった。適当な地図で告知したにもかかわらず、どいつもこいつもテントや食料を持って山に登ってきて、なんだかよくわからないうちに100人ほどが集まった。しかも、東京から来た人も多かったが、関西や富山、もちろん地元長野からもとんでもない奴らが続々と登場した! で、祭りが始まってしまえば、もう、あれよあれよと、連日、大騒動のままイベントが延々と続く。バンドやDJが20組弱出演して盛り上がりつつ、「祭りとは何か」というテーマのトークセッションもあり、映像もあり、火も煙もあり、「祭」は続いた!
さらには、かまどを作って共同で自炊をしたり、その辺に落ちているもので妙なものを作り出す奴がいたりと、好き勝手にやっていた。ドサクサにまぎれて、床屋とかマッサージ屋、カフェの露店を出す人がいたり、本やCD、Tシャツを売る人もいたりもした。まあ、イベント内容に関しては、この紙面じゃ語りきれないところもあるので、また別の機会にでも紹介するとして、とりあえず、今日のところは写真で雰囲気を見てみてもらうよりない。まあ、すごいことになっていた。
かまどを作って自炊。なかなか豪華な食生活だった!
【ステテコ事件勃発!】
当然、近隣住民にも衝撃は走った! 普段はあまりに人のいない長野の山に、若い奴らが集まってきてるのに触発されたのか、その山の入り口にある自動車の板金工場の社長も、ステテコ姿のままカミサンを連れて飛んで来た! なんか文句でも言いに来たのかと思ったら、まったく逆! 「やっぱり、若い奴らはこれぐらい賑やかにやらなきゃいかん!」などと、大喜びだった。あまりに絶賛していたので「一言、挨拶お願いしますよ」と頼むと、「いや! この姿じゃ人前には出られないからダメだ!」と、木の陰から出てこずに帰ってしまった。あれ、残念! …と思ったら、翌日、今度はちゃんとした服でやって来て、差し入れなんかも持ってきた。「いよっ、ステテコ社長!」の聴衆からの掛け声とともにステージに立ち、「ジローさんと必死になってこの山を切り開いてよかった! 今回だけではなく、毎年、大いにやってください!!」と、大げさすぎるほどの大演説! ありがとう、ステテコ社長!
一方、なんだなんだとビックリするおじいさんもいた。山に散歩にでも来たのかフェスをみかけ、訝しがるが、「山でなにやってんだ? ジローんとこか。まったくしょうがねえな~」と言って帰っていった。さすが、田舎。全員が知り合いだ!
ステージ付近では、常にマヌケなやつらが騒ぎ続ける。
まあ、そんな感じで、4日間、特に問題もなく祭は終わった。いやいや、よかったよかった!
しかし、やっぱり、祭の醍醐味はやっぱり自分らの手でやることだ。その手を離れて、誰かにゆだねると一瞬で祭はつまらなくなる。これはもう、金もうけと化したしょうもないイベントなんかに行って祭を消費してる場合じゃないね!
ついでだから、もう一言。
こういうくだらない世の中だから、反乱は起こしたくなる。だが、デモや集会をやったり、立て篭もってみたり、なだれ込んでみたり、警官を殴ってみたり、っていうことばっかりに追われてしまっては本当の力にはならない。なんでも金を巻き上げようとするボッタクリ経済に巻き込まれないような日常生活だったり遊びだったりを、自分らで勝手にやってしまえば、もう怖いものはない。
金もうけ連中の世話や餌食にならなくて済むような生活と祭!
う~ん、これはやはり、ステテコ社長の言う通り「なんとかフェス2010」をやるしかないか!
巨大スクリーンに映像が流されたり、花火が焚かれたりと、何が起こるかわからないフェス!
【次回予告!】
そんな長野作戦が終わった直後、米騒動発祥の地=富山県でもひと騒動が勃発! 乞うご期待!!
●お知らせ
9月3日(木)
19:30〜 自民党滅亡祝賀会へ参加
Asagaya LOFT/A
デモや集会だけじゃない、
既存の経済システムにNOを示す、
こんなに楽しい「反乱」もあり!なのです。
それにしても「ステテコ社長」、素敵すぎ。
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