松本哉ののびのび大作戦

　以前、長野にとんでもないリサイクル屋があるという話はしたと思う。そう！　ジローさんという男がやっている店だ（詳しくはこの連載の第４回目を参照！）。そして最近、またもや長野方面からキナくさいにおいが漂ってきたので、今回は長野作戦２の話をしてしまおう！！

　前回の長野大作戦の後、しばらくしてジローさんから連絡があった。「どうもうちの畑にイノシシが出て困ってる。ロックフェスでもやって、音でも出してくれれば少しはイノシシが遠ざかっていいんだけどねぇ」という。さらには、中途半端に夜やめないで朝までやってくれれば、近くで畑をやっているおじいさんやおばあさん達も大喜びだということだ。「東京からわざわざ来てくれて、朝までイノシシを退治してくれるなんて有り難いねぇ」ってことだ。なんだなんだ、東京では大声出しただけで警察呼ばれるようなシビアな世界なのに、まったく逆じゃないか！！　ともかく、田舎にないものが東京にあるのと同じように、東京にないものが田舎にはある。これは大いに活用しない手はないぞ！　

　さて、そんないい話を聞いて黙っているわけには行かない。さっそく長野作戦の決行に備えて準備に取り掛かった。長野作戦の噂は早くも広がり、近所に住んでるマヌケなバンドマンも、店の前を通るたびに「長野いつやるですか？　行きますよ」ときいてくるし、高円寺の音楽スタジオの兄ちゃんも「長野、手伝うよ～」と言って来る。うちの商店街に夜中に出没する占い師までが、「いや～、早く長野作戦やろうよ」などと言い出す始末だ。うわ、これは大変だ。
　まずはいったい何ができるのか探るために、さっそく下見に行くことにした。興味ありそうな奴らに声を掛けまくり、６月２０日に数人で長野に行くことになった。
　ちょっと余談だが、前日の１９日、フランスからエミリーとビンセントという２人の旅行者が高円寺にやってきた。どうやら、フランスの雑誌に紹介されたのを見てきたらしく、「シロウトノラン　ミマシタ」と、うちの店を訪れてくれた。そのまま飲み会になり、すぐに仲良くなったんだが、こっちも酔っ払ってきてるもんだから「ゴーツーナガノ、トゥギャザー！　ツモロー、アーリーモーニング！！」などと無用にけしかけたので、フランス人もさすがに断りきれないのか「イ、イエス」と快諾！　しまった！　英語もロクに話せないのに、勢いでうかつに誘ってしまった！！！　ま、何とかなるか！

　さて、そんなわけで翌２１日の朝８時に待ち合わせすることになった！
　普段は昼１２時ごろ起きるので、起きる自信がまったくない…。だが、今回はフランスの若い奴らとの待ち合わせだ。ワインばかり飲んでまったく約束を守らないイメージもあるので、まあ遅れても大丈夫かという気もする。…いや、まて。フランスと言えば、よく若い奴らがデモを起こして大パニックになっている。ニュースでみると、デモ中に悪い奴らの車を燃やしてたり、フランス版自民党みたいなロクでもない連中を追いかけてぶっ飛ばしてたりと、どうも穏やかではない。これはやばい！　寝坊したら怒られる！！　…いや、まてよ。それとも、フランスパンは固くて食べるのに時間がかかるから、朝メシに手間取って、やはり遅れてくるんじゃないか？　うむ、これは難しい。
　だが万が一、２人がキチっとしてたらうちの軽トラの命が危ない。念のため、耳元に目覚ましを置いて必死に起きて定刻に待ち合わせ場所に行ったら、なんと、フランス人はちゃんと来ていた！　ふぅ～、あぶないあぶない。うちの軽トラは買い換えたばかりだからね～。

なんとなくリサイクル。これはすごい！

　ありゃ、こんな話してる場合じゃない。長野作戦だ。
　その日の昼過ぎには長野について、早速、ジローさんの店に行ってみた。すると、自分の店の庭に迷彩服でジープ（しかも、どこから持ってきたのか軍用のやつ）に乗って待っていた！　なんだなんだ！　パッと見は沖縄の米兵かアルカイダのどちらかにしか見えないクセに、「いや～、いま新潟の柏崎までボランティアに行ってきたんだよ」という。とりあえず、出で立ちが行動と合ってなさ過ぎる！！
　それはともかく、すぐにイベント候補地に案内してもらった。「とりあえず、俺の山に行こう」と、ジローさんのジープを先頭に、山の中に入り、林道をひたすら奥へ。果たして、こんなところにイベントスペースがあるのか？？？　で、ここで不安になってくるのは、エミリーとビンセント。わけもわからず長野まで来てみたら、謎のアルカイダ風の男に連れられて山の中へ…。これはコワイ。しかも、はたから見たらどうみても捕虜にしか見えない！

ジローさんとジープ。外見はとても善人には見えない。
ジローズビッグマウンテン（アメイジングプレイス）にて

　着いてみると、これがまたすごいところ！　尾根と尾根の間の少し開けた谷間で、そばには小川が流れている。うわ～、これは何でもできそうだ！　…おや？　これは見たことがあるぞ！？　そう、以前紹介した、謎のカンフーマスターたちが古い食器棚に一撃必殺のパンチをお見舞いしていた、あの作業場だ。なんだ、ここか！　この日は天気があまりよくなく、薄くモヤがかかっていたので、もはや少林寺にしか見えない。エミリーとビンセントも目を点にして「ジローズ　ビッグマウンテン！　アメイジング　プレイス！！！」と、大喜びだった。
　さて、そんな感じで、下見も完了し、ジローズクレイジーショップの庭で作戦を練りつつ飲み会。いやいや、これは面白いイベントができそうだ。もはや、巷にのさばってる、金もうけイベントと化したボッタクリ夏フェスなんかに行ってる場合じゃないね！　やいやい、こうなったら祭りも自分らで作ってしまおう！

　しかし、いったい今年は長野で何が起こるのか！？　今後の長野作戦に注目だ！！！！

店内は普通にいい店です