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松本哉ののびのび大作戦

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これまで「高円寺一揆」や、「クリスマス粉砕デモ」など、
数々の脱力系にして最強の「運動」を繰り広げてきたカリスマ店主、
松本哉による待望のコラム連載です。
来るべき世界恐慌には、この作戦で立ち向かえば、怖くない?。

まつもと・はじめ 「素人の乱」5号店店主。1974年東京生まれ。1994年に法政大学入学後、「法政の貧乏くささを守る会」を結成し、学費値上げやキャンパス再開発への反対運動として、キャンパスの一角にコタツを出しての「鍋集会」などのパフォーマンスを展開。2005年、東京・高円寺にリサイクルショップ「素人の乱」をオープン。「おれの自転車を返せデモ」「PSE法反対デモ」「家賃をタダにしろデモ」などの運動を展開してきた。2007年には杉並区議選に出馬した。著書に『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)、『貧乏人大反乱』(アスペクト)、編著に『素人の乱』(河出書房新社)。「素人の乱」公式ホームページ

『貧乏人の逆襲!タダで生きる方法』(筑摩書房)

※アマゾンにリンクしてます。

第8回「高円寺&阿佐ヶ谷でメーデーデモ勃発!」

 5月といえばメーデーの季節! いやー、また騒ぎがやってきてしまった! メーデーは、本来は労働者が声を上げる日。だが、最近は、世の中が世の中なだけに、単に労働の問題だけじゃなく、我々貧乏人の生存の問題を訴えるようになってきている。そう、もはやメーデーは、この金儲け連中によるボッタクリとせせこましい奴らによる窮屈な世の中に反旗を翻す日でもあるのだ。よし、こいつはちょっと、ひと騒ぎするしかない!
 そういえば、去年の5月1日には、高円寺で「労働に興味のないやつらのマヌケメーデー」っていうのをやった。高円寺あたりをウロつく、貧乏人、ヒマ人などがわらわらと集まり、例によってサウンドシステムを積んだトラックを先頭に、大騒動のデモが行われた。

ド派手なデモカーと参加者。2〜300人集まっていた。

 さて、今年は別のイベントがあった関係で、デモの準備はしていなかったんだが、あろうことか、今年も高円寺・阿佐ヶ谷でメーデーのデモがあるという。さらに、あろうことか主催者はまんまと阿佐ヶ谷・高円寺界隈をウロつく友達だった。なんと、これはもう参加するしかない!!!
 デモとなるといつもは主催側だったが、今回は久々に参加者側。う~ん、これはちょっと新鮮だな。ま、どうせ仲間の主催するデモだから、たぶんちょっとぐらいムチャがきくだろう。…ってことで、なんか騒がしいものでも持って行こうかっていうことになった。そこで考案されたのが、最終兵器=移動式ドラムセット! ドラムを叩きながらデモについていったら、こんなバカバカしいものはない! ってことで、まずは、ちょうど店にあった小型のドラムセットを台車の上に設置してみた。で、さらに、一年ほど前に売約済みになって、まったく取りに来る気配のないギターアンプがあったので、それも積み込んでみた。そして、その台車に「素人の乱」というノボリを立てた。おお~、できたできた! とんでもないマシンができてしまった!! これは騒々しそうだ!

 いよいよデモ。出発地点の高円寺中央公園に行ってみると、早くもヒマ人がたくさん集まっており、早速デモ出発! まず先頭にデモの先導カーが出発したんだが、これがまた金ピカに装飾された、とんでもなくド派手なサウンドカーだった。そこからDJがこれまたとんでもない音を出し始める! その後を参加者がなんだか騒ぎながらついて行き、デモの中ほどでは、あのアナキスト芸術家のイルコモンズらの太鼓軍団がノリノリで出発地の公園を出て行く。で、またその後に参加者が続き、我が最終兵器はデモの最後に続いた。
 さて、そこに出現したのが、最近高円寺で結成されたバンド“パンクロッカー労動組合”。この連中、工事用のヘルメットをかぶりサングラスをかけ、田舎で拾ってきたハッピを着て現れ、その移動式の騒音マシンで演奏を始めた! おい、このいでたち、あの忌野清志郎のTHE TIMERS にしか見えないぞ! なんだなんだ!?

ドラムを叩くパンクロッカー労動組合メンバー。いまは大喜びで叩きまくってるが、彼は後にシンバルで額を割ることになる。

 デモは高円寺から阿佐ヶ谷に向かい、駅前のロータリーや大通りを通る。はたから見ると、スローガンを掲げた巨大なチンドン屋にしか見えない! でもその割に「賃金よこせ」的なものから「勝手にのさばるぞ」的なものまで、文句だらけのプラカードやら横断幕! これはなんだか景気がいい! で、音が鳴っていれば人が集まってくるという高円寺のマヌケな性質もあって、通りがかりの奴らもやたらとデモに混じってくる。「俺にもやらせろ」とドラムをたたき始めるスーツ姿の兄ちゃんもいた。また、その辺のオッサンが勝手にギターを奪い取って、ギンギンにギターソロを弾き始めたと思ったら、調子に乗って歯で弾き出して、まんまと歯が欠けていたイカした奴もいた! アホ過ぎる!!

 ま、そんな感じでデモは阿佐ヶ谷まで行き、駅前広場に到着。ここまで来ると、もうムチャクチャで、盛り上がりすぎて、最終兵器のドラムセットに飛び込んでシンバルで額を割って頭から血を流すバカなやつなんかも現れつつ、大パニックのままデモは終了。いやいや、やっぱり景気がいい!
 その後は、阿佐ヶ谷で行われたメーデー関連のトークイベントに行く者、そのイベントの入場料が高いと文句を言い始める者、その辺の路上で酒を飲み始める者など、それぞれ散っていった。

 その2日後には渋谷でもメーデーのデモがあったり、今年も全国各地で勝手な奴らによるメーデーが繰り広げられたりして、大盛況だったようだ。世界恐慌のドサクサで、貧乏人からのボッタクリを強めようと悪いこともくろんでる金持ち連中をビビらせるためにも、こういうデモを連発していったほうがいいね!! やい金持ち、覚悟しろ!!

【おまけ】
 余談だが、そのニセTIMERSが登場したデモが終わった数時間後の2日未明に、忌野清志郎が死んでしまった。これにはビックリした。この、一見すると窮屈でくだらない世の中で、ムチャなことを景気よくやりまくっていた清志郎は相当カッコよかった。ああいう、いかした奴はもうちょっと、しぶとく生き延びてほしかったね~。 小さいことでゴチャゴチャと小うるさいことばっかり言うようになって来たいまの世の中でこそ、文句と愛に満ちた清志郎の歌でも聞いたほうがいいね!! ってことで、商店街の重鎮にも頼んで、高円寺北中通り商店街のBGMをしばらくの間、忌野清志郎にしておいた。
 ちなみに、THE TIMERS は忌野清志郎とは別人という設定になっているので、まだ現役のはず。 やいやい! TIMERS の登場を待つぞ!!

●出版情報
『貧乏人の逆襲!』韓国版発売開始!
イル出版社/11000ウォン。

日本では「素人の乱5号店」で売ってます。一冊1000円。知り合いに韓国・北朝鮮の人がいたら見せてみよう!!

※現在、英語版・中国語版の翻訳作業も進行中(ただ、これは いつできるかわかりません)。

 

「原点」ともいえそうな、高円寺・阿佐ヶ谷でのデモ。
そこに登場したニセTIMERS!
TIMERSって? という人は、是非
本家のCD「THE TIMERS」を聞いてみましょう。
ある意味とっても「のびのび大作戦」です。
こんな窮屈な世の中、どうにか復活させましょう。

さて、次回の「大作戦」はどこへ行く?

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