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鈴木邦男の愛国問答

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自他共に認める日本一の愛国者、鈴木邦男が「マガジン9条」の連載コラムに登場です。
改憲、護憲、右翼、左翼の枠を飛び越えて、
会いたい人に会いにいき、「愛国問答」を展開する予定です。隔週連載です。

すずき くにお 1943年福島県に生まれる。1967年、早稲田大学政治経済学部卒業。同大学院中退後、サンケイ新聞社入社。学生時代から右翼・民族運動に関わる。1972年に「一水会」を結成。1999年まで代表を務め、現在は顧問。テロを否定して「あくまで言論で闘うべき」と主張。愛国心、表現の自由などについてもいわゆる既存の「右翼」思想の枠にははまらない、独自の主張を展開している。著書に『愛国者は信用できるか』(講談社現代新書)、『公安警察の手口』(ちくま新書)、『言論の覚悟』(創出版)、『失敗の愛国心』(理論社)など多数。 HP「鈴木邦男をぶっとばせ」

『失敗の愛国心』(理論社)

※アマゾンにリンクしてます。

第8回「強いリーダーを欲する“蟻の集団”」

 「もう首相なんかいらない。各大臣がいればいい。それで十分だ」と言ってやった。9月8日(月)、大阪・朝日放送の「ムーブ!」に出た時だ。「憲法もいらない。法律さえあれば十分だ」とも言った。いささか乱暴だが、同じようなもんじゃないか、と言ったのだ。
 実際、イギリスには憲法はない。でも法律があるから十分だ。日本だって、刑法や商法など、具体的な法律があれば十分だ。それに従って僕らは生きている。それに違反したら処罰される。憲法は「宣言」のようなものだ。スポーツ大会における選手の「宣誓」だ。「スポーツマン精神に則り、正々堂々と闘います。薬物には絶対に手を出さず…」ということだ。
 昔は、「薬物」なんて言葉は入ってなかったが、今はオリンピックを初め、主催者、選手も必ず強調する。日本の「国技」大相撲でも、これからは「力士宣誓」でやるだろう。要は、卑怯な手を使わず、自分の力で堂々とやるということだ。国際政治においては、「薬物」はいわば核か。大国は核は持ってるが、絶対に使わない。そう言っている。同じことか。
 その意味では日本の憲法は、薬物に頼らない健全な国家の憲法かもしれない。核(薬物)どころか、痛み止めの薬(軍備)も一切、持たない、使用しないと「選手宣誓」してるのだから。立派だ(でも隠れて使っている。卑怯な国家だ)。

 さて、言いたかったのは首相の方だ。安倍さん、福田さんと続けて1年で政権を投げ出した。まわりのイジメに耐えかねて投げ出した。「こんな人間は早く辞めろ」と野党、マスコミは連日言ってたのに、いざ辞めると「なぜ辞めるんだ」「無責任だ」と攻撃する。これも変だ。「トップがこんなに簡単に辞める。首相の座はこんなに軽くていいのか」とマスコミや評論家は攻撃する。でも、そんな人たちが首相の座を「軽く」したのだ。
 首相の座を「重く」するのは簡単だ。アメリカのように国民に直接、選ばせる。そうしたら、「国民に選ばれたのだ」という自覚を持つ。派閥の談合で選ばれたのではない。又、首相に、たとえ誰がなっても、いちおう4年間はやらせる。そうしたら「重い」ものになる。簡単だ。
 中曽根元首相は「首相公選論」を主張していた。国民に直接選ばせる。国民の民意を反映した首相になる。そして強力な権力を持つ。アメリカの大統領のように。国民の民意を表すのなら、首相は別に国会議員でなくてもいい。大臣は民間からも入れられる。だったら首相、大臣も含め、大幅に民間人を入れて直接選ばせたらいい。いや、首相だけを選び、その首相が大臣を任命する。その方がスッキリするか。
 今、新聞を見ていると、「強い首相」を待望している。中国、北朝鮮とは断固として闘い、アメリカにも対等にものを言える人。そうすると今の政治家にはいない。民間まで目を向けると、この人しかいない。北朝鮮とも、一歩もひかず堂々と闘っている人だ。そう、櫻井よしこさんだ。この人を首相にする。防衛大臣は金美齢さんだ。外務大臣は井脇ノブ子さんだ、文科大臣は神取忍さん(元女子プロレスラーの国会議員)だ。さらに民間から上坂冬子さん、浜口京子さんも入れていい。闘う女性たちで強力な内閣をつくる。ヤワな男どもと違い、政権を投げ出したりしない。
 さらに、全国民が国政に参加できるようにする。裁判だって一般国民が参加するんだ。国会もそうしたらいい。全ての法案の審議に参加する。全国民がパソコンを持っているのだから、そこと国会をつないで、審議し、議決する。それでいい。そうすると、国会議員も不要になる。じゃ、捨てたらいいだろう。あるいは、「TVタックル」や「太田総理、秘書田中」などテレビに出ていたらいい。そこで、お笑い芸人と一緒に、お笑いをやっていればいい。彼らの芸を参考にして、「主権者の国民」が国政に参加し、全ての法案を審議し、決める。これでこそ、我々は本当の「主権者」になる。そして日本は平和になる。

 まあ、これは一度やってみてもいい。「アマゾネス内閣」のもと、日本は強力な国家になるだろう。自衛隊は国防軍になる。いや、「地球防衛軍」になっちゃう。「アメリカに任せていられない。地球の平和は我々が守る!」と、世界中に出てゆく。今の人数じゃ足りないから、国民皆兵だ。外国からの移民も無制限に受け入れる。ただし、兵役の義務を課す。そうしたら一挙に3億人の地球防衛軍になる。日本が地球を守る。地球の盟主になる。大東亜共栄圏どころか、大地球共栄圏だ。
 その時は、日米安保も廃棄している。いや、新安保のもと、日本がアメリカを守ってやる。21世紀は日本の世紀になる。

 でも、国家は強くなっても、国民はもっともっと弱くなるだろう。強いリーダーを選ぶだけの「蟻の集団」になってしまう。政治家にばかり期待した報いだ。政治や政治家が変わらなければ日本が変わらないと思っている人が多い。それでは何も変わらない。彼らに期待していてはダメだ。「強いリーダー」を待望していったら、国民はますます弱い蟻になる。それよりも、本当の「主権者」になることを考えるべきだ。
 首相なんか1年ごとに替わったっていい。弱いリーダーばかりでもいい。それは成熟し、平和な国の証拠だ。その間に、国民一人一人が自覚し、成長し、真の主権者になることだ。その為なら、ネットも大衆運動も駆使したらいい。そうでないと、ネットも国民世論も、ただ単に「強力なリーダー」を作るためだけに利用される。そんな気がする。

日本の、あるいは世界の歴史を振り返ってみても、
ひたすらに「強いリーダー」を求めることには、
常に危うさがつきまといます。
1人1人が「主権者」の自覚を持つことが、まず何よりも重要です。
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