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マガ 最近は、ニュースを見るたびに驚くなあ。毎日のように新しい出来事が起きている。それも政治絡みのニュースがとても多い。なんかヘンな感じがするほど。
ジン これまでの自公政権が、新しい政治的メッセージをほとんど発して来なかったことの裏返しだろうね。民主党政権が出来てまだ1カ月ほどしか経っていないのに、まるでジェットコースター。連日、新聞のトップ記事は各大臣の名前と動向を報じている。50年以上も続いた自民党中心の政治を引っくり返そうと、各大臣が懸命になっている感じだものね。お陰で自民党は、もうすっかり霞んでしまった。公明党なんか、記事にもならない。
マガ 国内ニュースばかりじゃなくて、国際的にもいろいろとビックリするようなニュースが多いよね。特に、オバマ大統領へのノーベル平和賞受賞の知らせには驚いたなあ。でもアメリカ国内では、あまり大喜びって感じにはなっていないようだけど、どうしてなの?
ジン オバマさん自身もビックリしたほど突然の受賞だったらしいね。下馬評にもほとんど上っていなかったというから。この受賞はとても政治的な思惑が大きい。オバマさんの新しい政策、特に「核なき世界」を展望するオバマさんの背中を押すための受賞だと言われている。だから、「オバマはようやく方向性を打ち出しただけで、まだ何の成果もあげていないじゃないか」という批判も強い。
マガ 日本では、かなり受賞歓迎ムードが強いようだけどね。
ジン 広島長崎という被爆地を抱える日本では、これで多少とも「核廃絶」への動きが強まるだろうという期待感が大きいからね。オバマさんが「核兵器を使用した唯一の国としての責任」に触れた初めての米大統領だけに、彼への期待感は、米国内よりもむしろ日本でのほうが強いとさえ感じられるね。
マガ この受賞がきっかけになって、よりいっそう核廃絶の動きが鮮明になるといいね。
ジン その通りだけど、しかし、政治的受賞であることは、それだけ政治的リスクも大きいということなんだ。ノーベル平和賞受賞者は大きくふたつに分けられる。「これまでの活動に対する受賞」と「これからの活動に期待する受賞」だ。例えば、ルーサー・キング牧師(米、64年)、マザー・テレサ(印、79年)などは、過去の活動を評価されての受賞だった。ま、佐藤栄作(日、74年)なんて、何の評価だかよく分からない人もいたけれど。これに対し、ダライ・ラマ14世(チベット(中国)、89年)、アウン・サン・スー・チー(ビルマ(ミャンマー)、91年)などは、受賞が逆に当該政府による弾圧を強める結果になっている。すなわち、その活動を後押ししようというノーベル賞委員会の政治的意図が、いまのところ裏目に出てしまっているという例なんだ。
マガ そういうことが、オバマさんにも言える?
ジン オバマ大統領に対するアメリカ国内の保守派の反発は、予想以上のものがある。特に、医療保険制度についてのオバマ政策については、富裕層のみならず、中間層からもすさまじい反発が起きている。「政府の援けなどいらない。自立して生きるのがアメリカ国民の伝統だ」とする草の根保守といわれる人たちの反発だ。これが、このところのオバマ大統領の急激な支持率低下を招いているんだ。
マガ それが核廃絶政策への反発にも結びつく、ということか。
ジン そう。共和党を中心とする保守派や、もっと右に位置するいわゆるファンダメンタリスト(キリスト教原理主義者)の多くは、「核兵器は平和を守るために絶対に必要なもの」と考えている。したがって、この「核廃絶を後押しするためのノーベル平和賞受賞」には、強い抵抗感を持っているようだ。
マガ そうすると、逆にオバマ大統領に対する風当たりも強まる、ということになりかねない…。
ジン その惧れは大いにあると思うね。なにしろ「原爆投下は戦争の早期終結のためにはやむを得なかった」という原爆肯定の意見が7割を超すのが、いまでもアメリカの世論だというからね。つまりアメリカ国内だけで言うと「核廃絶論」よりも「核の平和論」のほうが、圧倒的に強いんだ。オバマ大統領がアメリカ国内で窮地に陥れば、せっかく世界に広がりつつある「核廃絶機運」に水が差されることにもなりかねない。
マガ 難しいなあ。僕は、素直に「核廃絶へのオバマ大統領の意志に対するノーベル平和賞受賞」を喜びたいんだけどなあ。
ジン そこに国際政治の妙な奥深さを感じてしまう。そういう意味では、同じようなことが「広島長崎への五輪招致」にも言えるんじゃないか。10月11日、秋葉忠利広島市長と田上富久長崎市長が記者会見し、2020年の夏季オリンピック招致を検討する「オリンピック招致検討委員会」を共同で設置すると発表したけど、このニュースにも驚いてしまったね。でもこのことにも、大いに慎重さが必要じゃないかと思うよ。
マガ 僕は、この前の「オリンピック東京招致」とは違って、今回の「広島長崎への招致」には、大賛成なんだけど。
ジン そう単純に言えるかなあ。私は慎重派だな。そういうお祭ではなく、例えば「世界核兵器不使用条約締結会議」とか「核兵器完全廃絶条約準備会議」などを広島長崎で開くほうが先決だと思っている。オリンピックとこのような国際条約会議を、同じ都市で開催することはとても不可能だから、国際会議に絞るべきだというのが私の意見だな。
マガ しかし、世界中の多くの一般人が大挙して広島長崎の被爆地に集まり、一緒になって平和の祭典を繰り広げる。その人たちが草の根となって、世界中に被爆の悲惨さや核廃絶の大切さを伝えていく。そういう夢もいいなあと思うんだけど。
ジン そのこと自体は否定しないよ。でも、ようやく世界が「核兵器廃絶」へ目を向け始めたいまだからこそ、祭典よりも実質的な廃絶運動の場所を提供するのが筋なんじゃないかなあ。とにかく、世界の主要国の首脳が、被爆地に集結して「核のホロコースト(大量虐殺)」をその目で確かめ、その上で核兵器廃絶条約の締結に臨む。そのほうが、もっと大事なことじゃないか。
マガ それもそうだけど…。
ジン 考えてもごらんよ、オバマ米大統領、メドベージェフ露大統領、胡錦濤中国国家主席、サルコジ仏大統領、ブラウン英首相。これらの核兵器保有国の首脳たちが一緒に、広島の原爆ドームを訪れ長崎の平和の像の前に佇む。それを想像するだけで、心が躍らないか?
マガ そういえば、先週の「マガジン9条」のトップページに面白いことが書いてあったね。「核兵器不使用条約」の締結を求めていた。つまり「核兵器保有国は、非保有国に対して絶対に核兵器を使ってはならない」という単純極まりない条約なんだけど、これは凄く重要な指摘だと思ったな。日本のような核兵器を持たない国は絶対に核攻撃を受けない、ということだからね。
ジン それと同様のことは、胡錦濤主席も9月24日の国連演説で触れていたよ。核保有の超大国の首脳も実際に言及したんだから、不可能なことじゃない。その「核兵器不使用条約」を締結すれば、確実に世界は変わる。“核クラブ”と言われる国連安保理常任理事国の5首脳がそろって被爆地に足を踏み入れ、そんな条約を、この被爆地で締結する。その締結を日本が先導し、場所を提供する。広島長崎は、被爆地というだけでなく、今度は「核兵器廃絶の地」として歴史にその名を刻む。これこそが、被爆地広島長崎の究極の役割だと強く思う。
マガ うん、確かに胸躍る光景には違いない。日本が初めて世界に誇れる国になれる瞬間かもしれないからね。でも…、それでも「広島長崎オリンピック」、僕は捨てきれないなあ。
ジン 来月12日にはオバマ大統領が、シンガポールで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に参加する途中で来日する。とにかくそのときに、なんとしてでもオバマさんを広島長崎に“招致”するべきだと思うよ。もしどうしてもと言うのなら、オリンピック“招致”は、その後で考えても遅くはないと思うんだけど。
マガ なんだか説得されてしまいそうだけど、それとは別に「広島長崎オリンピック」の夢も見たい…。
ジン そういう意見も含めて、我々は、もっとどんどん政府へ注文をつけていい。「首相官邸」というHPがある。そこには「ご意見募集」というコーナーがあってメールできるようになっているから、とりあえず「オバマ大統領を広島長崎へ招待するよう、政府が先頭に立て!」というような意見を書き込んでみたらどうだろう。そんなメールが殺到すれば、鳩山首相も直接オバマさんに「広島か長崎へ同行しましょう」と要請するかもしれない。まあ、これも夢だけど、やってみる価値はあると思うよ。
マガ それはいいね。広島長崎でも「オバマさんを現地へ」という声は高いというから、それを応援すればいいよね。
ジン
うん、ついでだから電話やファックス番号もここに記しておこう。どんどん要望すればいいと思うよ。
首相官邸電話 03-3581-0101
ファックス 03-3581-3883
我々の声が届くかどうかも、政権交代効果を知る上でのひとつの指標にはなるかもしれない。
(放光院+α)
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