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「マガ」と「ジン」のコラムリコラム
第13回:やっと選挙だ、憲法9条はどうなる?

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マガ ようやく、あと数日ってところまで来たね。

ジン ああ、本当に長い選挙戦だった。なにしろ去年の秋から、「もうじきだ、もうすぐ選挙だ」と言われ続けてやっとだもんね。でも、我々も待ちくたびれたけれど、候補者たちのくたびれ具合も“ハンパねえ”だろうな。

マガ あはは…。無理してそんな若者言葉を使わなくたっていいよ。それにしても真夏の選挙戦、関係者に死人が出るんじゃないかなんて噂さえ流れてるみたい。

ジン 確かに「もう引退したらいかが?」と言いたくなるようなご老体もけっこういるからね。選挙が終わったら、しばらく入院静養なんて方もでてくるかもしれないな。

マガ メディアの報道も最終盤。新聞や週刊誌には、いろいろと予測記事が載ってるね。

ジン 毎日新聞(8月20日付)が面白かったな。「マガジン9条」の読者なら、特にじっくりと目を通して欲しいようなアンケート調査だった。

マガ 憲法9条に関係ある記事?

ジン そう、いろんなことを全候補者に聞いているんだけど、特に憲法観や安全保障問題、外交姿勢などに関する部分が興味深かったな。

マガ この「マガジン9条」でも「民主党候補者に憲法9条を問う」というアンケート調査を実施しているよね。それとは違う結果が出ているの?

ジン いや、そんなことはない。9条に限って言えば、民主党の候補者たちの回答は、「マガジン9条」のアンケート結果とよく似ている。「マガジン9条」では、「7・その他」という回答がいちばん多かったけど、その理由をよく読んでみると、「他の部分には問題があるが、9条は変える必要がない」という回答が多かった。毎日新聞の結果とほぼ同じだったと言える。「マガジン9条・民主党候補者アンケート」はぜひ、読んでおいて欲しいね。文章での回答が読めるのは貴重だからね。
さて、毎日新聞ではこうなっていた。

<憲法改正について
 自民=賛成97% 反対3%
 民主=賛成57% 反対24% その他・無回答19%
 公明=賛成73% 反対18% その他・無回答10%
 共産・社民=反対100%

 9条改正について
 自民=賛成82% 反対11% その他・無回答7%
 民主=賛成17% 反対66% その他・無回答16%
 公明=賛成24% 反対71% その他・無回答6%
 共産・社民=反対100%>


ね、なかなか面白い結果だろ? つまり、自民以外の政党では、憲法そのものには変える必要がある部分もあるが、こと9条に関してはこのままのほうがいい、という意見が多いということだね。ま、共産と社民が憲法改正自体に反対しているのは、今までの主張からしてよく分かる。しかし面白いのは、公明と民主の回答が極めてよく似ていることなんだ。むしろ、公明のほうが民主よりもリベラルな感じがするほどだ。
さらに、集団的自衛権の行使を禁じている現在の政府の憲法解釈については、こうだ。
「集団的自衛権を行使できるように憲法解釈を見直すべきか」について、賛成が、自民77%、民主25%、公明8%、共産・社民0%となっている。こうなると、公明のほうが民主よりも共産や社民の意見に近いことになるね。

マガ うーん、驚くなあ。確かにかつては、公明党は「反戦平和の党」と自らを規定していた。その根っこが今でも残っているということなんだろうか。

ジン そう言えると思う。しかし、それならばなぜ、公明党が自民党にべったり寄り添っているのか、その意味が分からない。政権与党にいれば、自分たちの政策が実現できて、その存在感を示すことができる、という判断なんだろうけど、それにしても国家の根底の憲法観がこれほど違う党と連立しているっていうのは、自分たちで矛盾を感じないのか。彼らはよほど美味しい政権の蜜を味わってしまったのかもしれないな。

マガ しかし、これほど民主と公明の考えが近ければ、選挙後に、公明が民主に擦り寄る、ということも起こるかもしれないね。

ジン そういう観測はすでに流れ始めている。特に公明党の地方組織では「こんな事態になっても、まだ自民の応援をいなければならないのか。中央は考え直して欲しい」という声がかなり強まっていると聞くよ。実際に以前の選挙と違って、地方の創価学会員の自民応援の動きが中央の指示にもかかわらず、そうとう鈍いらしい。「今回だけは、自民党への協力はしたくない」と言っている学会員も増えているというからね。それに、この与党への逆風は公明にも吹きつけているから、「自民党になんかかまっていられない。自分のところの候補を勝たせることで精一杯」という思いも強い。なんとか自分たちは生き残って、選挙後の政界再編のキャスティング・ボートを握りたいという考えが出て来て当然だろう。だから、自民党と距離を置こうという動きになるのも分かる。

マガ もう選挙後のことを考えているわけだ。

ジン 自民の大物候補たちが、かなり苦戦しているらしいけど、その大物たちの選挙区で立候補予定だった例の幸福実現党が、自民に協力するために立候補を取りやめるというケースが出始めている。特に、自民党の候補者が幸福実現党の協力を仰ぐという構図が、東京のある選挙区では顕著になった。自民党と幸福実現党が、一緒の街宣車に乗って演説までしていたからね。これに公明が反発しないわけがない。宗教団体間の反目というのは、我々が考える以上に激しいらしいから。

マガ すると、その選挙区の公明票は自民から逃げ出すことになるよね。よけい苦戦に陥るんじゃないの。

ジン もちろん、どう考えたって公明党の票のほうが幸福実現党より圧倒的に多いに決まっている。妙な話だよね。貧すれば鈍する、としか言いようがないな。

マガ それも、公明党が自民党と決裂する理由のひとつになるかもしれないってことだね。

ジン 火種にはなると思う。それからもうひとつ、触れておきたい重要なことがある。

マガ やはり憲法問題?

ジン うん、憲法とも大いに関係ある。それは「核武装」に関することなんだ。毎日新聞の記事を引用しよう。

<(略)アンケートでは日本の核武装について「将来にわたって検討すべきではない」「今後の国際情勢によっては検討すべきだ」「検討を始めるべきだ」「核兵器を保有すべきだ」の四つの選択肢で質問した。
 自民党の候補者は70%が「検討すべきでない」、23%が「今後の国際情勢によっては検討すべきだ」、2%が「検討を始めるべきだ」と回答。民主党は90%、公明、共産、社民3党は全員が「検討すべきではない」と答えた。
 自民党では昨秋の立候補予定者アンケートで17%だった「情勢によっては検討すべきだ」が6ポイント増えた。同様の質問をした03年は30%、05年は19%で、増加に転じたのは今回が初めて。06年に北朝鮮が最初の核実験を実施した際には中川昭一政調会長(当時)が「攻められないようにするために核(兵器保有)も議論としてある」と発言。当時外相だった麻生太郎首相も同調したものの論議は広がらなかったが、北朝鮮による今年4月の2回目の核実験が自民党内の検討容認論を強めたとみられる。(略)>


 つまり自民党内の「核武装検討論」が、30%→19%→17%と減り続けてきたのに、今回は23%へと上昇に転じたわけだ。これは、追いつめられた自民党が、ナショナリズムを煽って右派層を取り込もうとしている焦り、とも考えられる。民主党との違いを際立たせるために、思いっきり右へハンドルを切り始めた麻生首相の姿勢を露骨に反映しているように見えるね。

マガ 危なくなると、国家主義的ナショナリズムを鼓舞して国民の支持を得ようとするのは、ある意味で権力の常套手段だよね。それが国家を危機に陥れるということは、歴史が証明していると思うんだけどね。

ジン 例えばハリウッドでも、低支持率の大統領が再選のために戦争を起して国民の支持を得ようとする、なんてストーリーの映画は幾度となく作られている。つまり、ナショナリズムを煽って人気を得ようとする手法は、日本に限らない。そしてそれが国民のためになんか絶対にならないということもまた、明らかだと思うんだけどねえ。

マガ そういえば、先日(8月17日)の党首討論で、麻生首相が最後に「民主党の会合で国旗を切り刻んだ。そういう報告が私のところに入ってきている。恐るべき政党だ」と突然大声を張り上げて鳩山代表に迫った。まるで日の丸をグチャグチャに切り裂いたような表現だったので、その“切り刻まれた国旗”をあとで検索して見つけたけれど、それは二つの日の丸を張り合わせて民主党のシンボルマークに似せたものだった。これを“切り刻んだ”というのは、かなり表現が違うと思う。大声を張り上げた麻生首相に、なんだか切なさを感じたなあ。
でもよく考えてみれば、核武装検討論が自民党内でさえ、計25%しかいない、ということが分かっただけでも、僕は少しホッとしたね。

ジン まあ、そうも言えるかな。とにかく、もうじき選挙。小選挙区では1票を投じたい候補者がいない、と頭を抱えている人もいるだろうけど、せめて比例区にだけでも投票を、と呼びかけたいね。

マガ 僕も実はそうなんだ。我が選挙区の民主党候補者は、確信的9条改憲論者らしい。ところが護憲の党の候補者はいない。もったいないんだなあ、選挙区の1票が。でも、投票所には必ず行きますよ。そうじゃないと、開票速報を見る楽しみが半減するからね。

ジン それじゃ、選挙結果が判明したころに、また話をしよう。

(放光院+α)

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