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ムリを承知で読み解くコラム!
「マガ」と「ジン」のコラムリコラム第4回
民主党の「突出部分」への疑問

090603up

マガ先週、久しぶりに「マガジン9条」の編集会議に顔を出したんだ。そしたらそこで、朝日新聞のあるインタビュー記事が話題になっていた。5月27日のオピニオンというページなんだけど、読んだ?

ジンああ、読んだよ。「インタビュー・北朝鮮の核実験」。農水相(元防衛相)の石破茂氏と、民主党「次の内閣」防衛相・浅尾慶一郎氏のインタビュー記事だろ? これ、けっこういろんなところで話題にされているね。例えばケーブルテレビの番組『愛川欽也のパック・イン・ジャーナル』なんかでは、軍事ジャーナリストの田岡俊次さんが、この記事を取り上げて、かなり強い調子で浅尾批判を繰り広げていたよ。

マガ僕も、編集会議でコピーをもらって、家でじっくり読んでみたんだけど、いやあ、驚いたな。

ジンうん、確かに驚くよね。これで民主党を考え直した、という人はけっこう多いよ。次の総選挙では政権交代のために、民主党に投票しようと思っていたけど、この浅尾さんの発言を読んで考え直した。民主党にすんなり投票していいものかどうか、民主党のマニフェストをじっくり読んで見直してみよう。そういうことを言う人が、けっこういるんだ。

マガああ、僕と同じだな、それは。とにかくこの記事、僕なんかの感覚だと、民主党と自民党の立場がまるで逆みたいに読めちゃったんだ。だって、見出しからして凄い。

<貨物検査へ法律作り
 敵基地攻撃の議論も
 日本の「本気」を打ち出せ>

 これがなんと民主党の浅尾さんのほう。一方、自民党・石破さんの記事の見出しはこうだった。

<米中対話で不拡散維持を
 現実的でない強硬策
 脅しに屈せぬ抑止力こそ>

 今までの自民・民主の印象からすれば、完全に逆転している感じだよね。石破さんが、とてもリベラルに見えてくる。

ジンなにしろ、自民党国防部会あたりの防衛族といわれる議員たちの議論と、浅尾さんの言っていることはそっくりだからね。

マガ浅尾さん、その自民党国防部会とやらへ特別参加していたんじゃないの?

ジンそれ、あまりにぴったりで、ジョークにもならない。この国防部会の防衛政策検討小委員会というところが5月26日に発表した提言案があるんだけど、そこには「敵基地攻撃能力の保有」「武器輸出3原則の見直し」などが明記されている。北朝鮮の核実験を絶好の機会ととらえて、日本の国是のひとつでもある「武器輸出3原則」さえ、なし崩しにしようという意図が見える。浅尾さんはまるでそれを後押ししているみたいだ。このインタビューの中でも、「今のミサイル防衛では100%守ることは不可能だ。確実なのは先にたたくということ」と主張している。

マガその武器輸出3原則って?

ジンこれは1967年に、ときの佐藤栄作首相が示したもので、(1)共産圏向け、(2)国連決議で武器等の輸出が禁止されている国、(3)国際紛争の当事国またはそのおそれのある国、この3条件に当てはまる国には武器の輸出は認めない、とした原則なんだ。1976年には、当時の三木武夫首相がこの3原則にさらに「3原則対象地域以外の地域や国についても、憲法及び外国貿易管理法の精神にのっとり武器輸出を慎むものとする」という項目を付け加えた。つまり日本はこれまで、原則として、あらゆる国・地域への、あらゆる武器を輸出禁止にしてきたんだ。この「平和国家の国是」とも言えるような「武器輸出3原則」を、自民党国防部会は破壊しようとしているんだ。当然その裏には、兵器産業を盛り立てたいとする財界の意志も働いていると思っていい。

マガうーん、そこまで行ってしまうのか。

ジンしかも問題なのは、この浅尾さんがただの民主党参院議員ではないということだ。彼は、民主党NC(Next Cabinet=次の内閣)の防衛相、つまり民主党が政権を獲った場合の防衛大臣になることが決まっている人物なんだ。

マガということは、政権交代した場合、この浅尾さんの主張が民主党政権の安全保障政策になるということ?

ジンまあ、NCというものの性格を考えれば、そういうことになるよねえ。

マガそれなら、対話路線を主張し、強硬策はとるべきではないと言う石破さんのほうが安心かも。

ジン軍事ジャーナリストの田岡さんも「石破さんは軍事知識が豊富だから突出的な路線はとらないだろうが、浅尾さんは知識よりもイデオロギー先行型で、かなり危ない」と指摘していた。

マガイデオロギーで突っ走りかねない、と。

ジンいかに民主党が、旧自民党から旧社会党や旧民社党まで、さまざまな考え方の人たちの寄り合い所帯だとしても、この記事の浅尾さんの突出ぶりは凄いよね。でもね、例えば前原誠司元民主党代表なども浅尾さんとは考え方が近いとされているから、民主党=リベラルとは、いちがいには言えないわけだ。

マガそれにしても、民主党は、この浅尾さんの意見を党の政策として受け入れているんだろうか。民主党内部はいったいどうなっているの?

ジン民主党内部でも、かなりせめぎ合いがあるみたいだよ。6月1日の毎日新聞も、この問題を取り上げて次のように書いていた。

見出し
<北朝鮮2度目の核実験 「敵基地攻撃論」勢い
 自民部会は強硬一色 民主容認派も声高に>

記事
<(前略)ただし、北朝鮮に強硬なのは自民党議員ばかりではない。
 5月28日の民主党外交防衛部門会議。リベラル派の平岡秀夫衆院議員が北朝鮮制裁について「国際協調の下でやらなければいけないのではないか」と慎重な議論を求めたところ、長島昭久衆院議員は「国際協調は大事だ。国連決議で船舶検査が義務付けられた場合に備えて、日本も国内法を整備すべきだ」と指摘。すかさず浅尾慶一郎「次の内閣」防衛担当が「国内法整備の検討に入ろう」と引き取った。
 長島、浅尾両氏は敵基地攻撃容認派でもある。
 浅尾氏は「2012年までを『外交交渉の時間』と設定し、それまでに北朝鮮が核を放棄しないなら日本が敵基地攻撃能力を持つことを国際社会に理解してもらうべきだ」と主張した。(後略)>

 ここでは浅尾氏は、時間を区切って圧力をかけるべきだと、そうとう踏み込んだ強硬論を展開している。「2012年以降は、日本は大きな武力を持つぞ」という脅しともとれる。ここまでいくと、対抗手段としての「核武装論」までもう一歩。そういえば、ここに出てくる長島昭久衆院議員は、ソマリア沖自衛隊派遣を政府に進言した人物だ。こういう人たちが、民主党内で大きな力を持ち始めたとなると、それこそ民主党を見直さなければならなくなる。

マガどこへ投票していいか、ほんとうに分からなくなったよ。やはり、憲法を守るときちんと言明しているところを考えるべきなんだろうけど、なにせ僕の選挙区には、その党が候補を立てないみたいだし。

ジン政権交代ばかりが話題になっているけど、この考え方の違いは大きい。やはり、憲法や安全保障問題などをきちんと議論して、同じ考え方の人たちで、もう一度、政党の枠組を作り直すしかないんじゃないか。

マガいわゆる政党再編、ガラガラポンか。

ジンどんな考えを持とうと自由だし、それを表現することも自由だ。もちろん、僕はそれを否定しない。むしろ、大いにやり合えばいいと思っている。僕は大いに反論するけど。でもね、ひとつの政党の中で、国家のあり方を左右する重要な安全保障政策について、これほど違ったグループが混在するというのは、やはりおかしい。それこそ憲法や安全保障について、同じ考え方の人たちが同じ政党にまとまるべきだと思うよ。その上で、政党間で議論をすればいい。

マガそうだよな。そうじゃないと、敵基地攻撃論や核武装論なんかに絶対反対の人の一票が、実は逆の考えの人の票に加算されることだってありえるもんね。

ジン最近、拉致被害者の蓮池薫さんの兄・透さんが『拉致 左右の垣根を超えた闘いへ』(かもがわ出版、定価千円+税)という本を出版したんだけど、その中でこんなふうに書いていた。

<北朝鮮の「ミサイル」発射が強行されました(ジン注・この本は09年5月10日発行なので、北朝鮮の2度目の核実験以前に書かれています)。拉致問題との関連を考えたとき、複雑な気持ちになります。
 国際的な制止要求を無視した発射に対し、「けしからん」「制裁だ」と、日本の多くの人たちが感情的になっています。あれだけ政府やマスコミに煽られれば、仕方のないことかもしれません。
 しかし、今回の日本政府やマスコミの対応は、過剰ではなかったかと思います。発射を口実に日本の「核保有」を支持するかような発言まで出ていました。さんざん脅威を煽っておきながら、「落ち着いた行動を」という報道は、失笑を買われても文句は言えません。
(中略)私は、日朝交渉の窓口すらない現状では、制裁よりも交渉だと思います。制裁を強化すれば、その窓口は固く閉ざされることになります。北朝鮮の脅威をいちだんと際立たせるだけの結果に終わるのではないでしょうか。>(P101~102)

 これまでの自分の意見や行動の過ちを率直に認め反省した上で、蓮池透さんは、こんなふうに言っているんだ。北朝鮮によって、最も苦しめられたおひとりである蓮池さんのこの言葉を、浅尾さんたちは、噛みしめてほしいと思う。

マガ政権交代の負の部分も考えないといけなくなってきたような気がする。

(放光院+α)

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