こんな人たちが牛耳る「財界」だから、このところの政治的な右傾化は激しい。憲法改定は言うに及ばず、武器輸出三原則まで踏みにじろうとしている。グローバル化する経済において国際競争力を付けるには、どうしても法人税率の引き下げが必要だと強調する。そのためにも、あらゆる規制を取り払って、武器のアメリカとの共同開発や輸出も認めるべきだというのだ。
ネオコンに支配されたアメリカに追随して、日本版ネオコンが大量発生している自民党は、「財界」にはとても可愛く見えているに違いない。
かつて、絶頂期にあった堤清二氏にインタビューしたことがある。そのとき「堤さんは財界人として、この件について----」と問いかけると、堤氏はこちらの質問を遮ってこう言った。
「私は経済人ではありますが、財界人なんかではありません」と。
つまり、財界などという「業界」に所属しているつもりはない。経済活動をしている一経営者にすぎない、ということだったと思う。
もはや、こんな大企業経営者は珍しい存在になってしまった。「財界」という名の「業界人」ばかりだ。業界人は、自分の属する業界の利益にしか目を向けない。
国家の経済をどう運営していくのか、自分の企業で働く従業員にどうやって利益を還元するのか、さらにはこの国全体のために、経営者としての自分に何ができるか。そんな問いかけを忘れた「財界人」ばかりが幅を利かせる。
私たち国民はいま、とてもひどい政府を持つ不幸の中にいるが、同時にそれ以上にひどい財界という足枷をも嵌められている気がしてならない。 |