●小泉純一郎
本年9月に首相退任。なにしろ目立つ人だった。政治的には、06年前半を独占した感がある。
ほとんど無内容なワンフレーズを連発、それに無批判に乗っかったテレビとの相乗効果で、最後まで人気を持続した。すぐに「古いものをぶち壊す!」を絶叫した。それが人気の基だったようだ。しかし、彼が「ぶち壊したもの」は、単なる「戦後の古い遺物」ではなかった。
それは戦後日本が守り続けてきたもの、すなわち、「非戦の思想」だったのだ。その最たるものが「初の軍事的海外派兵」だ。
いくら彼が「自衛隊のいる場所は非戦闘地域だ」と強弁しても、自衛隊を戦地に送るという、これまではどんな首相もなしえなかった悪しき前例を作ったことは、誤魔化しようもない。
日本が「軍事的な意味で」他国民を殺すことも、また同じ意味で他国の軍隊に日本人が殺されることもなかったという戦後日本の非戦の価値を、この男が一人で崩してしまったのだ。まさに「非戦の精神は小泉によって殺された」のである。 |