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今週のキイ

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 よく「日本を戦争の出来る国にするな」などという言葉を見聞きする。
少し前までは、 
「まあ、そこまで心配することもないだろう」とか
「大丈夫、日本には憲法9条という歯止めがあるから」、さらには
「そういうことばかり言うから、左はダメだって言われるんだ」
「過剰反応だよ、誰が戦争したがるもんか」
などというのが、まあ、一般的な反応だったと思う。

 しかし、このところの安倍内閣の凄まじいばかりの前のめりの姿勢は、そんな楽観論をすでに超えようとしている。
 もはや、「戦争の出来る国」というのは、絵空事ではなくなりつつある。決して単なる杞憂ではない。

 本当に危機感を込めて

戦争の出来る国


 1. ミサイル迎撃

 いつもの手口ではあるが、またも安倍首相、外国メディアできな臭い発言をしている。なぜか、危ない発言は日本のメディア向けではなく、いつも欧米のメディアで行う。観測気球のつもりなのか。
 今回も、「他国へ向けたミサイルを日本が迎撃するのは、(政府がこれまで出来ないとしてきた)集団的自衛権の行使にあたるかどうかを研究する考えがある」と、「ワシントン・ポスト紙」のインタビューで語った(11月17日朝日新聞)という。
 つまり、従来の集団的自衛権の解釈を、またも一歩前に進めて、拡大させようというわけだ。
 もちろんこれは、北朝鮮のミサイルを念頭においてのことだろうが、その矛先が、いつ中国やロシアに向かわないとも限らない。なぜこうも、自ら敵を作り出そうとするのだろう。


 2. 教育基本法

 沖縄知事選の余勢をかって、教育基本法改定を無理押ししてくるだろう。すでに、衆議院では単独採決。
 教育基本法改定の強行採決による沖縄知事選への影響を図りかねていた安倍内閣だったが、この結果でもう怖いものなし。
 例の「愛国心」むき出しの攻勢をかけてくる。小中学校では、この愛国心を通知表で評価する、というところまで、安倍首相は公言し始めた。
 「お前は愛国心が足りない。成績はCだ。この結果では大学進学はできんぞ」などと言われるような時代がやがて来るのかもしれない。自由に考えることを許さない世界が、SF小説の中の設定ではなく、もうじき私たちの上に覆いかぶさろうとしている。
 ジョージ・オーエルが書いた反ユートピアSF小説『1984年』の恐るべき世界が、世紀の時を超えてこの日本に現れるのか。ビッグ・ブラザー(『1984年』に登場する独裁者)の声がすべてを統御する自由なき国家。
 安倍首相という矮小化されたビッグ・ブラザーが、この小説の形だけをなぞったカリカチュアとして突き進もうとしている。


 3. 防衛庁の省昇格

 これも、すぐにでも提案されて出てくるだろう。
 教育基本法改定を、今国会の最重要課題と掲げ、とにかくこれを通すことを最優先してきた安倍内閣だが、その目処もついたとして、ほとんど同時にこの「防衛庁の省昇格案」も持ち出してくる構えだ。
 見落としてならないのは、この案に付随して「自衛隊法改定」も同時に行おうとしている点だ。
 自衛隊の海外任務(つまり海外派兵)を、現在のような時限立法ではなく、恒久法にしようという案だ。これまでは、イラク特別措置法に見られるように、一つ一つの事案に限って特別立法として、自衛隊海外派兵を処理してきた。もちろん、細かな議論が必要になるし、事態の急変によっては撤退も視野に入れておかねばならない。
 しかし、恒久法になれば、そんな面倒な手続きは不必要。いつでもどこへでも、ということになる。
 まさに、日本軍が日本軍として、アジア諸国や場合によっては中近東や中欧辺りまで出向いていくことになる。戦後60年、営々として築いてきた「平和国家日本」は、なし崩しに消えていくのだ。


 4. 核武装論

 現在、青森県六ヶ所村の核サイクル施設がついに動き出した。ほとんど使える当てのないMOX 燃料(プルトニウムとウランを混合させて、もう一度原発燃料として再使用しようとするもの)を作る施設だ。
 各電力会社の幹部たちすら、「ほとんど必要がない。費用がもったいない」と嘆くほどのMOXを、なぜムリヤリに作らなければならないのか。その理由は、プルトニウムの存在にある。
 プルトニウムは核兵器の原料になる核物質だ。これは、原子力発電所を稼動させれば、いやおうなく発生するいわゆる「核廃棄物」なのだが、これがなんと日本には4トン以上も蓄積されてしまっている。使いようがないから、溜まるばかりだ。
 すなわち、核兵器に転用するしか使い道のない物質が、現在の日本には膨大に蓄積されている。その量は、広島型原爆で約500発分。しかも、日本の技術水準からすれば、数ヵ月後には使用可能な核兵器の生産は可能だ。
 諸外国がこれに危惧を抱かないわけがない。イランの核開発に、アメリカはじめ各国は神経を尖らせているが、実は、アメリカやヨーロッパでは「日本の核武装」にも相当な危惧が持たれているのだ。もちろん、アジア諸国の目も厳しい。
 IAEA(国際原子力機関)は、イランに多くの査察員を送り込んでいるが、実は日本にはそれ以上の人員が査察に入っているという事実を、なぜか日本のメディアはあまり報じていない。
 それだけ日本の核政策が疑惑視されているのが実情なのだが。
 こんな危うい国際環境にあって、中川昭一氏も麻生太郎氏も、核保有論議を止めようとしない。
 しかもそれを安倍首相は後押しさえする気配だ。
 国際情勢を考えれば、ここはまず「核論議」を封印するのが、政治家としての当たり前の対応なのだが、そんなことは考えもしないらしい。
「日本危険論」がこの先高まってくるのは目に見える。

 5. 共謀罪

 このように、様々な危険な法案や政策が押し進められれば、当然、それに対する反発も予想される。そこでまたもやゾンビのごとく生き返ろうとしているのが、共謀罪だ。
 いろんな方がその危険性を指摘している。例えば何人かが、「あの政策はおかしいから、反対のためのデモを組織しよう」とか「私たちの意見を表明したビラをまこうか」などと相談しただけで、逮捕される可能性だってある。そのデモやビラを違法である、と警察や検察が認定してしまえば、その時点でこの相談は共謀罪にひっかかる可能性があるということだ。
 その他、600以上の罪が、相談だけでこの共謀罪に問われかねない。窃盗罪やわいせつ罪、なんだって危ないのだ。酒場での猥談が盛り上がって、
「A子の家の風呂場を覗きに行こうかぁ」
なんてバカな話をしただけだって、その場の連中、一網打尽。
 最初はもちろん、非政治的なところから始まるだろう。しかしそれがいつの間にか、政治的反対派を弾圧するための法律に化けてしまう。治安維持法や新聞紙法などの戦前の例を引くまでもあるまい。



 6. そして、憲法改定

 こんなきな臭い法律や政策の集大成が、当然のごとく「日本国憲法の改定」である。国民(というより、選挙民)の反応を見ながら歯切れ悪く意見を小出しにしてきた安倍首相だが、ついにここにきて「任期内での改憲」を公言し始めた。
 なぜこんなにも「憲法改定」にこだわるのか。
 「マガジン9条」編集部編の『みんなの9条』(集英社新書)で作家の橋本治さんも述べているように「なんでいま、憲法を改定しなければならないのか、その理由がわからない」のだ。
 とにかく改憲にこだわった安倍首相の母方の祖父・岸信介元首相のDNAを受け継いだため、というだけでは納得できない。
 60年間、軍隊として一人の外国人も殺さなかった「平和国家・日本」という輝かしい勲章を、なぜかくもあっさりと捨て去ろうというのか。



 7. 番外

 以下は直接、戦争に結びつくものではないが注意しておいてほしい。
 政府のこのところの一連の政策は、明らかに格差の拡大、大企業の優遇でしかない。
 法人税の大幅減税が、まもなく実施されるだろう。もちろん、これで潤うのは大企業。経団連の御手洗会長がえびす顔になるのも分かる。
 「いざなぎ景気を抜いて戦後最長の景気拡大だ」などと日銀及び政府は発表しているが、この10年、サラリーマンの実質賃金は下がり続けているのだ。一般庶民の支出額も当然のことながら下がっている。これを称して「景気拡大」とか「好況」などと言うその神経が分からない。
 そして、財政再建のための「消費税アップ」もまた、早晩実施されるだろう。戦後最大の利益を計上している銀行や金融各社が、預貯金の金利をその利益還元として上げてくれただろうか。殆ど0金利のままだ。
 そして、このようにして拡大した格差で辛酸をなめている層に対する「再チャレンジ」とやらが売り物の安倍内閣。だがその中身は吹き出すしかないほどの貧弱さ、呆れるしかない。
 なんと「各官庁で中途採用者を100人程度増やす」というのが目玉なのだそうだ!
 100人ですよ、100人。

 庶民を食えない状況にまで落とし込んでおいて、やがて、「兵士になれば衣食住は保証されますよ」と甘い誘惑が始まる。これは、妄想だろうか。
 いくら働いても正社員並みの賃金を得られず、ほとんど年収100〜200万円ほどの、若年ワーキングプア層が100万人を超えたとの報告もある。とすれば、彼ら若年貧困層には、「兵士という職業」は天の援けとも見えかねない。
 もはや妄想ではないのだ。

 安倍内閣の支持率が、各メディアの調査ではかなり下がり始めている。軒並み6〜8%ほどの下落を記録しているようだ。
 やっとこの内閣の危うさや、その政策の庶民切捨て振りが認識され始めたのだろうか。

 それにしても、公明党はどこまでこの内閣と歩みを共にするのだろう。
 「反戦平和の党」の旗印が、ゆらゆらと-----。

 
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