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今週のキイ

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 衆議院補欠選挙での2勝に、すっかり気をよくした自民党。この気に乗じて、とにかくイケイケドンドンの方針を打ち出したようだ。

 特に、自民党中川昭一政務調査会長のはしゃぎぶりは尋常ではない。
 「核武装についての論議をすることは必要だ」と発言して物議をかもしたのだが、反省の色などかけらもない。
「論議することがなぜ悪いのか。それを否定するのは思想の自由を侵害するものではないか」などと、「思想の自由の侵害」をNHK問題であれほどあからさまに行なった当の本人が言うのだから、物は言いようだ。

 その中川政調会長の援護射撃をかって出たのが、なんと外交に責任を持たねばならないはずの麻生太郎外務大臣。
 まあ、口の悪さでは有名なお二人だから、さもありなんとは思うのだけれど、かたや政権与党の政策責任者、もうお一人が政府の外交責任者なのだから、事は簡単にはすまされない。

 当然のことながら、諸外国から(お二人の大好きなアメリカ政府筋からさえ)「日本の核武装論の危うさ」を指摘する声が噴出しているのだ。
 政策責任者と外交責任者が外交を損なってどうするつもりか、などと批判しても、馬の耳に念仏、届きそうもない。
 そんな二人を、叱責もせずに放置している安倍首相。やはりこの人も、本音は「核武装論議必要論者」なのだろう。
危ない!

そこで今週は
「非核三原則」と「核武装論」
というキイ・ワードを考えてみたい。

「非核三原則」と「核武装論」
 


 「非核三原則」とは、次の3カ条をいう。
「核を、持たず、作らず、持ち込ませず」

 これは、世界唯一の被爆国である私たちの国の、絶対に譲れぬ悲願としての国是、政策であった。したがって、「憲法改正」を党是とする自民党でさえ、この三原則を否定するようなことは、これまでには一度もなかったのである。

 もっとも、この中の「持ち込ませず」については、政府自民党はこれまでずっと誤魔化し答弁に終始してきた。
 なぜなら、日本の米軍基地(特に沖縄米軍基地)では核の存在疑惑が常に指摘されてきたのだが、政府は一貫して「アメリカがあるとは言っていないのだから、ない」と否定し続けてきたという経緯があるからだ。
(「アメリカがあると言うのだから、ある」と言って、イラクにおける大量破壊兵器の存在を検証もなしに認め、アメリカの言いなりになって、自衛隊の海外派兵に踏み切った際の小泉前首相のロジックも、まさにこれだった)
 それでも、日本自体が核を持つ、ということについては、さすがの自民党政府も一度として言及したことはなかったのだ。

 だが今回、外務大臣という内閣のもっとも主要な外交閣僚が「核武装」についての発言を繰り返している。

 妙なことに、その際の発言には、必ず前提として「私は、決して核武装論者ではないが」とか「私は、非核三原則は守るべきだと思っているが」などというエクスキューズ(言い訳)がくっついている。これは、麻生大臣も中川会長も同じだ。
(かつて、同様の発言をした自民党の方々も、ほとんど同じ前置き付きだった。はっきりと「核武装すべき」と言い切ったのは、あの民主党除名の西村慎吾議員ぐらいのものか)

 なんだか背筋がむず痒い。
理屈に筋が通らないから、気持ち悪いのだ。

「核武装は認めず、非核三原則を守り抜く」というのであれば、いったいどんな「核武装についての議論」が必要になるというのか。

「どうすればアジア非核地帯を構築できるのか」とか「北朝鮮の核を、どうすれば放棄させられるのか」などという議論ならば分かる。いまや、そういう議論が本当に必要な時期にきているのだ。
 さらに議論を進めて「世界の核拡散をどう防ぐのか」「核軍縮に日本はどのような役割をはたすべきか」という方向へいくべきだろう。


 ところが、麻生大臣や中川会長の議論は「世界の核軍縮」や「核拡散の防止」「アジア非核地帯」などへの提言とはほど遠い。
 むしろ、逆転している。
「日本が核武装することがいいのか悪いのかを議論しよう」というのだ。
つまり、核武装を戦略の中の一つとして認めることから話を始めよう、といことだ。

 国是(すなわち、国の譲れぬ指針)として「非核三原則」を堅持しているのなら、その国是を世界に広め実現していくにはどうすればいいのか、これが議論の前提になるはずではないか。
 ところがこのご両人、口先ではその国是を言いながら、中身はまるで反対のことを議論しようと言うのだ。自らが認めてもいない「思想の自由」を旗印に掲げて。こんな本末転倒の論理もあるまい。

 繰り返して言おう。

 非核三原則を守るのであれば、「いかに非核の考えを実現させるか」を議論すべきであって、「日本の核武装の是非」など議論の対象にならないのだ。

 もし、麻生・中川ご両人が「日本も核武装すべきだ」という意見を自ら鮮明にした上で「だから核武装是非論を闘わせよう」と提言するなら、それは論理としては成立する。
 だが、自らは「核武装論者ではない」「非核三原則は守るという立場だ」などと言い訳しながら、「それでもなお、核武装の是非を議論しよう」というのは論理矛盾としか言いようがない。

 このお二人、普段の言動からして、「核武装論者」なのではないだろうか。だとすれば、それを隠して議論を提唱するのは、政治家としてとても汚いやり方だと思う。
 核武装論を正面きって言い出せば、閣僚の地位にはいられない。いかに自民党であったとしても、さすがに政調会長という要職には踏みとどまれない。それを計算しての発言だとすれば、根性が泣く。
 お辞めなさい。


 こんな人たちの危ない発言を、安倍首相はなぜ叱責できないのか。それはもちろん、安倍首相自身も彼らと同じ考え方だからだろう。
「訂正首相」の命名どおり、「小型核保有は憲法違反にはならない」とかつて述べたことを、「非核三原則は堅持する」という答弁で逃げ切ったとはいえ、正確に否定はしていないことが、安倍首相の本心を示している。

 それにしてもこの中川昭一自民党政調会長、物凄い失言(本人はそう思っていないようだが、そこがまたコワイ)を繰り返す。

「金正日は旨いものばかり食って、糖尿病だから何をしでかすか分からない」と放言。
糖尿病患者がその病気ゆえに、とんでもないことをしでかす、などということは聞いたこともない珍説だ。誰か、この珍説を裏付ける資料を持った人はいるだろうか。
 糖尿病患者にあやまんなさい!こんなでたらめ発言が問題視されないのであれば、何を言っても許されると勘違いしても仕方ない。

 でもねえ、大の酒好きとしてとっても有名な中川会長さん、あなたが「中川は酒ばっかり飲んでいて、酔っ払いだから何をしでかすか分からない」などと、からかわれたらどうするんですか? 


 またこんな発言もあった。
「デモなんかで騒音を撒き散らすような教員は免許剥奪だ」
 組合活動なんか、ぜーったいにダメッ。デモをする奴らには権利なんか必要なーい。免許剥奪だあーっ!
 もうほとんど「駄々っ子だーちゃん」じゃありませんか。
 憲法に保障されている労働者の権利、などと言ってもこの人には理解不能なのだろう。
 もはや、政治家としての適格性を疑わざるを得ないのだが、それでも安倍首相は、お友達だからといって、この人を庇い続けるのだろうか。

 そんなに遅くない時期、これら政党幹部や閣僚の失言・妄言で、この内閣がガタガタになるのが目に見えるようだ。

 
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