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今週のキイ

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 いよいよ安倍政権が発足した。顔ぶれをみているだけで、なんだか萎えてきそうだが、少なくとも来年の参議院選挙までは、これで行くのだろう。だからこのコラムなりの意見を書いておく。
 
 そこで、

安倍内閣の閣僚たち
 とにかく「なんだあ、こりゃあ」というのが、一般的な感想ではないか。もうすでに、各メディアで報じられているように、徹底的な「論功行賞人事」なのである。ようするに、安倍ちゃんに忠誠を誓い、安倍ちゃん総理の実現に力を尽くした人たちに「おおよしよし、よく頑張ってくれたね」とご褒美をあげたということ、それ以上でも以下でもない。

 テレビに写るのは、おいおいと泣く妻の脇で、自らも涙ぐんでいる初入閣の大臣病患者たち。見ているこちらが恥ずかしくなる。
 こんな人たちに国政を任せて大丈夫なのか、
 不安にならないほうがおかしい。

 初入閣の大臣が18人中の11人もいる。その意味では新鮮な顔ぶれ、と言えないこともない。しかし、なぜか新しさはほとんど感じられない。
 それは、ご褒美人事だからだ。つまり、財務、外務、厚生労働、国土交通、文部科学、農水、法務などの主要ポストはすべて老人たち(ベテランというべきか)が占めていて、ここには60歳以下はひとりもいない。
 (ちなみに、今回の閣僚たちの平均年齢は、60.9歳である)
 かろうじて、経済産業相に57歳の甘利明氏、総務相にこれも57歳の菅義偉氏が入っているだけ。
 あとは特命大臣などのあまり主要とはいえないポストに、高市早苗氏(45)とか山本有二氏(53)、佐田玄一郎氏(53)などが名を連ねているだけだ。つまり、大事なところは年寄りに任せて、ご褒美を若手にバラ撒いたということなのだ。それも、仲良しのお仲間ばかり。そういう意味では、これほど分かりやすい人事もない。国のことよりも、自分の好き嫌いで決めちゃったのが、この安倍ちゃん総理なのだった。
 いいのかなあ、こんなことで。

 


 自民党三役の政務調査会長には、中川昭一氏という(安倍氏と一緒になってNHKを脅した)党内きってのタカ派をお友達人事、そして、閣内には高市早苗氏や松岡利勝氏(この人の利権にまつわる噂は、安倍政権の危うい火種になるかもしれないと、一部では囁かれている)などの超右派、さらには首相補佐官の一人に山谷えり子氏というこれまた、ジェンダーフリーバッシングの先頭に立った強烈な右派人脈を配置。
 しかしこのあたりの方々、野党の攻勢にたえられるだろうか?

 安倍内閣は、これらを見るだけでもはっきりと右に舵を切った、と言えるだろう。
 あるジャーナリストからの情報によれば、前回の外相就任時に自らを「こんな右翼でいいのかなあ」と言ってみせた麻生太郎外相でさえ「最近の若い議員たちの右旋回振りにはついて行けない」と嘆息したというから、今回の組閣の裏側では、止めようもないネオコンたちの、恐ろしい事態が進行しているのかもしれない。

 通常国会が始まるとすぐ「教育基本法改正」の審議に入るだろう。その担当補佐官が前述の山谷氏なのだ。
 暗澹たる気分にならざるを得ない。

 初入閣にベッタリ笑みを浮かべて喜んでいた高市早苗氏もまた、問題のある人物である。
 この人、「家族の絆を大事にする」というのが信条とかで、たとえば、民法改正による夫婦別姓などには大反対。「結婚して夫婦が別の姓を名乗ると、家族の絆が壊れてしまう」のだそうだ。
 ところがこの人、同じ森派の衆議院議員・山本拓氏と2004年にめでたくご結婚。なのに、いまだに高市姓を名乗り続けている。んっ?
 戸籍上はどうなっているのか知らない(知りたくもない)けれど、実際の活動は旧姓使用で行っているのだ。おかしくないか?
 あれほど別姓に反対しておきながら、自分が結婚するやいなや、キャンキャン吠えまくっていた別姓反対を、すっかりどこかへ置き忘れ。こんないい加減な人に、大臣なんかさせていいものだろうか。
 それも、これまでほとんど関心など持っていなかった沖縄問題を担当するという。沖縄の人たちをどこまで踏みつけにすれば気が済むのだろう、自民党という政党は。


 ところで、すでに海外メディアも、この内閣の危険性を指摘し始めている。アメリカの有力紙「ワシントン・ポスト」は、その社説で「安倍氏は東京裁判に疑問を呈している。これは、彼の祖父(岸信介)の思想の影響だろうが、過去に関する言い逃れでは、前任の小泉首相をも上回る。過去への誠実な反省がなければ、日本は孤立を深めることになるだろう」というような主旨の論評を加えている。
 そして、このような見方はメディアだけではない。先週のこのコラムでも触れたように、アメリカ議会の公聴会でも、歴史認識についての小泉批判が繰り返され、次の首相へも釘を刺されたのである。

 とにかく安倍内閣が今国会で一番初めに通そうとしているのが、愛国心を強制する「教育基本法改正案」である。
 もっと早急にやらなければならないことが山積みなはずだ。
 一番初めに手をつけなければならないのは、なんといっても「格差社会」や「地方格差」の是正ではないか。貧困に苦しんでいる人たちや地方を救うのは、それを放置し拡大させてきた政府・行政の最大の責務であるはず。
 そんな格差を放置したまま愛国心を強制したところで、誰がそんな国を愛せるというのか。
 あの消費者金融のグレーゾーン金利を残そうと暗躍したのは、まさに今回の閣僚に名を連ねた面々ではなかったか。
 自殺者が年間3万人を超えて久しい。そんなことはほったらかしで、何が「再チャレンジ可能な社会」なのだろう。自殺を考えざるを得ない人たちに、どうやって愛国心を説くというのか。
 大騒ぎしていた「再チャレンジ議連」とやらは、やはり安倍氏の選挙マシーンに過ぎなかったのだ。

 今回の安倍内閣、まったく評価できない。
 多分、無残な結果に終わるだろう。
 (この予言、当たりますよ)。

 
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