安倍氏がそう否定したいのは、どうあってもA級戦犯を認めたくないからだろう。中国側の責任二分論を認めれば、安倍氏が尊敬してやまない祖父・岸信介元首相の評価にも関わってくる。すなわち、岸氏がA級戦犯容疑者として逮捕されたことがあるという歴史上の事実をどう考えるかに関わってくるからである。岸氏は明らかに、二分されたうちの「責任者」の側に入る。 だから、この論理を認められないのだろう。
だが、歴史を抹殺するわけにはいかない。
歴史の事実を認めたくない者がいる。
歴史の負の部分を修正したい、と願う者がいる。
これを「歴史修正主義者」と呼ぶ。
明らかに、安倍氏はこの「歴史修正主義者」である。
安倍氏は「この二分論は、文書として残されていないから、私は知らない。外交とは、文書に残されたものだけが有効なのだ」と主張していたのだ。しかし、当然のことながら、「こんな外交上周知のことを否定するのは、どう考えてもおかしい」という批判を浴びた。
で、早速の修正発言になってしまったというわけだ。
まったく、こんなに大事な問題、それも外交問題での歴史認識がこれほど従来の政府見解と違っている方も珍しい。しかも安倍氏は、その違う主張をこれまで繰り返してきたのだ。
ところが、次期首相という立場になり、発言が今までとは比較にならないほど注視されるようになると、その中身の危うさがどんどん白日の下に晒されることとなった。一介の若手政治家の放言、ということでは済まされなくなってきたというわけだ。
そこで「発言訂正」の連発となる。
責任のないときには、強くてカッコつけたことを喋りまくるけれど、責任が見えてくるやいなや、さっさと危険地帯から逃げ出す。
何度でも書くが、これが「闘う政治家」の実態だ。
情けない。
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