そこで、今週のキイ・ワードは
「靖国問題」
で決まり、とは思ったけれど、それよりもっと大事なことが今、起きているのではないか、と考え直した。現実の人間の命にかかわる、凄惨な出来事が。
「中東の真珠」と呼ばれた美しい都市だったベイルートは、航空写真で見る限り、まるで虫食いのような穴だらけの無残な都市に変貌している。イスラエルの激しい空爆の結果だ。
これほど悲惨な戦争も(戦争は悲惨に決まっているけれど)あまり例がない。イスラエルの猛烈な空爆で殺されているのは、ほとんどが何の関係も、もちろん何の罪もないレバノンの子どもたちや一般市民だ。
戦闘を繰り返すイスラエルとイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの、どちらが正しいのかを、ここで述べるつもりはない。その判断材料を持ち合わせてもいない。
戦争当事者は、必ず自らの正当性を主張する。今回も、イスラエルは「自国の兵士がヒズボラに拉致されたことが、ことの発端である。彼らを解放しない限り、ヒズボラに対する攻撃は続行する」と繰り返し主張している。
しかし、これに対してヒズボラ側は、「レバノン領内に侵入してきたイスラエル兵士を捕虜にしたもので、これは戦時中の正当な行為であり『拉致』などではない」と言い返す。
どちらの言い分に正当性があるかは分からない。しかし、そんな論争が殺し合いに発展していいわけがない。
圧倒的な武力を誇るイスラエルの攻撃は容赦ない。
8月6日現在での死者は、イスラエル側約94人(兵士58人、市民36人)。対するレバノン人の死者は(ヒズボラの戦死者も含め)すでに1000人を超えたと報道された。しかし、爆撃で破壊された建物の瓦礫の下にはまだ相当数の人が埋もれていると見られ、レバノン側の死者数は確定できていない。
多分、イスラエル側の20倍ほどの死者がレバノンでは出ているらしい。それでもヒズボラ側は反撃、イスラエル領内に多数のミサイルやロケット砲を撃ち込み、戦闘が収まる様子は今のところ、ない。 |