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今週のキイ

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 今週のトップページでも触れていますが、いよいよポスト小泉は安倍晋三官房長官で決まり、といった情勢です。ついに、根っからのタカ派首相の登場ということになるのでしょうか。
 マンガ以外の本はほとんど読まないという噂の方に、私たちの国はいったいどこへ連れて行かれるのでしょう。
 というわけで、

 ということにしようかなと思ったのですが、さすがにこの人、いまや「時の人」、テレビや新聞、雑誌などの出まくり状態。今更このコラムで取り上げるのもどうかな、という感じです。

 しかし、これほど出まくっているのに、テレビと新聞は例によって、もう「次の権力者」にすりより始めていて、まったく批判的なトーンは聞こえてきません。ジャーナリズムの批判精神はどこへ行ったのか?

 それに比べれば、まあ、月刊誌・週刊誌などの雑誌群はかなりのゲリラ性を発揮、特に今週の「サンデー毎日」(7月30日号)は、新聞社系の週刊誌ではありますが、大健闘。かなり突っ込んだ批判を繰り広げています。腰砕けにならず、ぜひこの人物の危険性、脆弱性、非論理性、そして冷酷性を暴いていって欲しいものです。

 特にこの安倍氏の欺瞞性と冷酷性は「再チャレンジ」などという実体のない言葉を持ち出して、格差社会の拡大をごまかし、高齢者や年金生活者に一層の負担を強要する「小さな政府」論者であるところに現れています。

 小泉首相、竹中大臣らが標榜した「小さな政府」が、いったいどれほどの生活保護所帯を生み出し、学童補助所帯を作り、健康保険や介護保険の負担増で高齢者や病人などの弱者をいじめ、障害者自立法なる言葉だけ美しい悪法で障害者たちを苦しめているのか。
その「小泉改革」をそのまま継承する、と宣言しているのが安倍氏です。
 もちろん、小泉首相の人気にあやかろうという魂胆はみえみえ。実際、安倍氏が声高に叫ぶ「再チャレンジ」なるものの実態はまるで見えてきません。ただ、彼を支持する山本一太議員らの「再チャレンジ推進議員連盟」なるタカ派議員集団の隠れ蓑に使われているだけの言葉に過ぎないのです。
 情けない。


 本当に「再チャレンジ」が可能な社会を再構築したいなら、再就職やフリーター対策、特に正規社員と非正規社員(アルバイト、パート)との待遇格差の改善などに、具体的にメスを入れる政策を提示しなければならないはず。

 景気回復が叫ばれて久しいけれど、その回復はいったいどのようにして行われてきたのか。
 大企業における凄まじいリストラと、下請の中小零細企業への締め付け買い叩き、アウトソーシングと称する派遣社員の低賃金労働に支えられた回復に過ぎないでありませんか。それが景気回復の実態であり、陰で泣く労働者や失業者には、冷酷な扱い。
 ホリエモン、村上ファンド、さらにはそれに群がった福井日本銀行総裁、さらにさらに、その日銀の超低金利政策で史上空前の利益を出したメガバンク各行のウハウハ顔の下で、私たちの社会に何が起こっていたのか。

「下流社会」なる言葉さえ生んだ低賃金の人々の犠牲の上に成り立った景気回復。どこに「再チャレンジ」なる優しさがあるのでしょう。路上に暮らさざるを得ないホームレスの数をこれほど増やしておいて、何が「再チャレンジ」なのですかっ!

 なのに、それらの人々への本当の救済政策には一言も触れず、この言葉を政局の武器としてもてあそぶ。とてもまともな政治家とは言えない。

 さらに官房長官としての公式発言が、例の「敵基地攻撃論」。
 あのかつての自民党きってのタカ派政治家と呼ばれた山崎拓氏にさえ、「なんたる暴論」「日本の国是たる専守防衛に反する重大な憲法違反だ」と批判される始末。
 このいきさつを、先ほどの「サンデー毎日」は「まるで子どものギャング団だ---」と批判しています。その通りでしょう。

 靖国問題では、各新聞やテレビの世論調査で、「靖国参拝反対」が「賛成」の倍以上の率を示しています。安倍氏はいったいどうするのか?

 こう考えてくると、この安倍氏に私たちの国の舵取りを任せるのは、とても不安です。ちょっと育ちのよさげなお坊ちゃまぽさと、やや舌っ足らずの口調に騙され、その陰の超タカ派的短絡思考回路にうかうかと乗っては危ないと思います。
 私たちは、憲法改定、特に九条の改定には反対するからです。


 こんな中央政界の怪しげなお祭り騒ぎの裏側で、地方は崩壊しつつあるのではないでしょうか。

そこで、

 例えば、北海道夕張市では、市の財政が破綻。「財政再建団体」に指定されてしまいました。
 これは、すべての予算が国に握られ、自前では何も決められなくなる、という状況になったことを意味します。
 もちろん、市財政を支えていた炭鉱の閉山が最大の原因です。しかし、その後に行われたいわゆる「箱物行政」、つまり、やたらと巨大施設を作ってそれを町おこしの起爆剤にしようとした、相も変らぬ土建行政の失敗だといわれています。これと似たことは、全国各地の自治体で起きています。

 しかしこれも、地方のことを考えずに、とにかく景気回復に走ることで、地方をないがしろにしてきた国の政策に帰着します。最近、国と地方自治体の争いが多発しているのは、この地方の不満が爆発寸前になっていることを意味するのです。

 切ないほどの地方の町の商店街の崩壊。
「シャッター通り」などと呼ばれる閑散とした商店街。クルマを持たない高齢者たちは、買い物さえままならない状況に追い込まれています。
 景気回復など、どこの国の話なのでしょう。


  景気の話だけではありません。
 モラル・ハザードは、地方自治体にまん延しつつあります。

 例えば、東京都町田市。
ここの石阪丈一市長は横浜市港北区の前区長でした。彼の政治団体はその彼の地位を利用し、横浜市の幹部職員たちに政治資金パーティーへの参加や献金の呼び掛けメールを行ったのです。
 むろん、これは政治資金規正法違反。ところが、当の市長は「知らぬ存ぜぬ」、果ては「友人が勝手にやった」「娘が私の知らないところでやってくれたものだ」などと、すべてを人になすりつける。自分の娘まで身代わりに使う、これが現職の市長サンです。
イヤハヤ。

 こんなこともあります。埼玉県所沢市。
 ここの文化振興事業団は、管理するホールの使用許可を取り消しました。えっ? どこへの使用許可?
 全日本教職員組合の教育研究全国集会への使用許可です。
「反対する団体の妨害で、近隣に混乱が予想される」というのがその理由だそうです。既に私たちの国では、合法的な団体の集会さえ、開くことを拒否されるようになっているのです。


 東京都国立市では、こんなことも起こっています。
JR国立駅は、その三角屋根の愛らしさや木造建築駅舎としての珍しさで、とても市民に愛されてきました。ところが中央線の高架工事に伴うこの駅舎の保存を巡って、トラブルが起きたのです。
 国立市は、なんとかこの駅舎を残すべくJRと交渉を続け、「曳き家方式」で一旦駅舎を別の場所に移し、工事終了後に元の場所に戻すという案を作りました。ところが少数与党の悲しさ、それに伴う予算措置が数度にわたって否認されたのです。
 これは自民党など多数派野党の少数派上原市長に対する嫌がらせではないか、と怒った市民は何とか自ら運動を展開しようとしているそうです。
 市民の要望さえ、政治的思惑の前には否定される。これは、中央だけでなく地方でも起きている現実なのです。

私たちは中央だけではなく、もっと身の周りにも目配せしていく必要があります。


(今週のキイ選定委員会)
 
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