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このコラムの記事について、先週の「みんなの声」に次のような意見(問い合わせ)が載っていました。
りくにすさんとおっしゃる女性の方からです。
この方は、この共謀罪で「治安維持法」を連想し、生理的嫌悪感をもった、と書いていらっしゃいます。まったく当然の感覚だと思いました。この法律に嫌悪感を抱かないほうがどうかしているのです。
その上で、3つの質問を提起してくれました。
[1]諸外国ではすでに(法律が)整備されているのか?
[2]日本のと違うというが、具体的にどんな感じなのか?
[3]その新しい法律は成果をあげたのか?
正しい疑問ですよね。
そんなわけで、「今週のキイ・ワード」は |
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と、張り切って調べてみたのですが、あまり資料が見つかりません。委員の一人のジャーナリストが新聞記事に当たってみたところ、次のような驚くべき(というより、呆れ果てた)記事を見つけました。
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5月17日付け、東京新聞より
「議論尽くした」と言うが---
乱用・拡大解釈
共謀罪 尽きぬ懸念
海外の適用範囲 調査不足
<リード略>
「『分かりません』と言われて、『ああ、そうですか』。そんな口頭でのやりとりしか、していなかったんですか」。十日の衆院法務委で民主党の川内博史委員が、外務省国際社会協力部の辻優参事官の答弁にあきれたように問い返した。
二〇〇〇年の国連総会で採択された国際組織犯罪防止条約は、締約国に「共謀罪」の国内法整備を課した上で、適用対象を懲役・禁固四年以上の犯罪にすることを求めている。日本の法律では対象犯罪は約六百に上る。
例えば、マンション建設に反対するため「座り込みをしよう」と相談しただけで、組織的威力業務妨害の共謀罪に問われかねない。市民団体や労働組合が「捜査当局の乱用が怖い」と反発する大きな理由だ。
民主党の修正案はこうした批判に配慮し、「適用対象を、懲役・禁固五年を超える犯罪」として対象犯罪を約三百に絞り込んだ。また適用するのは「国境を越えた国際的な組織的犯罪」に限るという縛りもかけている。だが、こうした修正は条約の趣旨に反する、というのが政府の立場だ。
では既に共謀罪を備えている締約国に、懲役・禁固四年以上の罪はどれほどあるのか。冒頭の川内議員が聞いたのは、そんな素朴な疑問だった。
「大使館の書記官が、英米、カナダの政府担当者に質問しましたが、『把握していない』と言われました」---。辻参事官の答弁は、法案を審議する基礎的なデータさえ、極めて不十分なことを露呈させた。
十六日に答弁に立った伊藤信太郎外務政務官が再調査の結果を公表したが、大半の先進諸国から得た答えはやはり「把握していない」。フランスから「刑法に限れば二百十の犯罪がある」という回答があっただけだった。
「そんなあいまいな状況で『四年以上』という条約の文言を守る必要があるのか」。野党側からは怒りの声が上がった。
<以下略> |
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ちょっと引用が長くなってしまいましたが、ね、呆れ返るでしょ。
政府・与党は、既に2回にわたって廃案になっているいわくつきのこの法律を、とにかくムリヤリにでも通そうとしていたのです。
むろん、まだそれなりの支持率を誇っている小泉首相が辞める前に、なんとか成立させてしまいたい腹でした。でなければ、次の首相ではまたしても廃案の憂き目をみるかもしれないからです。さすがに3度も廃案になると、事実上、成立はかなり難しくなります。
ところが肝心の小泉さん、詳しい議論はどうも苦手。それよりもとにかくこだわった「小泉改革」法案を優先させたい。だから小泉さん、あまり共謀罪には熱心じゃなかったようです。
というわけで、今国会では、さすがの政府・与党もこの共謀罪の成立は先送りにしてしまったようです。
だからといって、廃案になったというわけではありません。また時期を狙って、ゾンビのように復活してくるのは目に見えています。
油断できません。
それにしても、あの記事には呆れませんでしたか?
開いた口が塞がらないというのは、こんなことを言うのでしょうね。
なにしろ、与党の政治家のみならず、その政治家たちを陰で操って法案を作り説明する役目の黒子の官僚たちさえ、なんにも知らなかった!
海外ではどうなっているのか? 日本と比較するとどういうことになるのか、などという当たり前の疑問にさえまるで回答することが出来ない。
りくにすさんが抱いたような素朴な疑問に、あっさり立ち往生してしまったのです。国会の議論って、こんな程度のレベルだったんですねぇ。
国民の当たり前の疑問や危惧に、なんら正しい情報で答えることもできないのに、自分たちの都合のいいように条約を解釈して、国民を縛る国内法を、これ幸いと成立させようとする。まったく火事場泥棒より酷い。こんな政治家や官僚たちが、私たちをいいように操ろうとしているのです。 |
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とにかく機会さえあれば、権力に都合のいい法律、国民を縛る法律を作りたい。反対するヤツラなんか国民とは思わない。だから、反対する連中には「非国民」という言葉を投げつけて黙らせればいい。
自由な言論空間は、この政治家や官僚たちにとっては邪魔なものでしかないのです。最近、一部の言論誌などで飛び交っている「非国民」や「売国奴」という言葉は、こうして権力のお墨付きを得つつあります。
そんな風潮に、なんとか歯止めをかけなければならないと思うのです。
国民に義務や責務を課す法律を作る場合、その説明責任は何よりも重いはずです。ところがこの共謀罪、国際条約に伴う国内法であるにもかかわらず、その国際的な現状を政府も与党もまるで把握していなかったということが、はからずもバレてしまいました。
それでは共謀罪が成立した後、この国でどんなことが起きるのか、私たちにはまるで分からないということになります。
多分、政府にとって、あまり開示したくない情報のほうが多いから、まじめに調べなかったのではないか、と勘ぐりたくなります。意外とそれが正解だったりして---。
こんなデタラメが許されていいはずがありません。なぜこんなことが起こったのか。それを考えると、この後に続く「改憲」への道筋が浮かび上がってくる。そうは思いませんか?
反対するものを縛る法律。何か大きなことを起こすときには必要になる。そう考えているんじゃないでしょうか。 |
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さて、りくにすさん。
せっかくのお問い合わせだったのに、きちんとしたお答えができなくて申し訳ありませんでした。
でもこれは、私たちの調査能力の問題ではなく、不利な情報は取ろうともしない政府与党のせいだということは、お分かりいただけたのではないでしょうか。
それにしてもこのところ、この国の政治状況について、とても納得できるような批判的視点で紙面化しているのが「東京新聞」だと思います。今回のこの記事も、政府のいい加減さを白日の下にさらしてくれました。ますますこの共謀罪の危なさが際立ってきました。
東京新聞さま。
このスタンスを崩すことなく頑張ってください、とエールを送ります。
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(今週のキイ選定委員会) |
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