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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。雨宮処凛公式サイト
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選挙が終わった。
開票の時間になった途端、民主党の当確が続々と続き、テレビ画面を見ながら何かゾッとした思いが込み上げてきた。とにかくそこに、いいようのない「ヒステリック」なものを感じたのだ。
そしてそのヒステリックなものは、やはりメディアが作り上げた「政権交代か否か」という空気で、なんだか4年前の「郵政民営化か否か」というワンフレーズのもとに自民党圧勝、と本質的に近いものを感じた。
そのうちにも、自民党の「大物」な人がガンガン落ちていく。「何か変わるかも」。それが民主党に入れた多くの人の思いだろう。失業率は過去最悪だし、首相がコロコロ変わる自民党にはうんざりだし、とにかく自民党を引き摺り下ろしたいし。そしてそんな空気は、4年前の選挙の時と非常に似ている気がする。好景気と言われながらも人々の生活は苦しくなるばかりで、「閉塞」としか言えない空気がこの国全体を覆っていて、そこに「郵政民営化!」のみをブチ上げた小泉に人々は熱狂した。
ここでも自民党の悪口ばっかり書いてきたわけだが、この「政権交代」を素直に喜べない自分がいる。「自公政権に怒りの鉄槌!」という感じで入れた人もいれば、消去法で民主、という人もいただろう。或いはなんらかの「変化」に期待して、など。だけどこの圧倒的な選挙結果は、「民主党圧勝」というよりも、「自民党」というブログの大炎上のようにも見えてしまう。
この連載に何度か登場した片山さつき氏も落選した。ある意味で、彼女はこの格差社会、或いは貧困に対する「無理解」の象徴となっていた気もする。それに本人が気付くのが遅すぎた。自公の議員が「セーフティネット」という言葉をさかんに使いだしたのは、リーマンショックと派遣村を経た09年の年明けからだ。09年のお正月が過ぎてみると、いきなり彼らの言うことが180度変わっていたのには心底驚かされた。だけど、それじゃあ遅すぎた。それ以前、人々の生活がどんどん苦しくなり、将来の展望さえ思い描けないワーキングプアが大量発生する中で、彼らは「自己責任」的なことをあまりにも言いすぎてしまった。それほどに、たぶんそんなに悪気もなく、現実を知らなすぎた。そんなことも知らないの? 片山さんに限らず、自民党の人と話すとあまりにも「雲の上の人目線」で、普通の人の生活なんてまったく知らないことに打ちのめされた。こっちがホームレス化に至るまでの個別ケースを話しても、なんだかニヤニヤ笑って「その人は特別でしょ」「そんな極端な話、あるわけない」なんてスルーされた。そんな人々が今年に入ってから取りかえそうとしても、すべては手遅れだったのだ。
さて、それじゃあ民主党の議員がどこまで貧困の問題に本気で取り組んでくれるのか、ということが私にとって最大の関心だ。選挙を前にして、非正規で働く人や失業中の若者などと話したのだが、彼らは「自民党が酷い目に遭うのは大歓迎だけど、それで民主っていうのもねぇ・・・」と口を揃えた。主に安全保障面や改憲、そしてアフガニスタンとかどうなるの? という不安で、私もまったく同感だ。もちろん、民主党の中には非正規問題に本気で取り組んでいる人たちもいる。集会に積極的に顔を出し、反貧困ネットワークなどと密に連絡を取りながら動いてくれている人がいる。
その一方で、「大丈夫か?」という現実もある。その現実の一端を、私は派遣ユニオン・関根秀一郎氏の「非正規労働通信207号」で最近知り、愕然とした。マニフェストに「登録型派遣原則禁止」や「日雇い派遣禁止」を掲げる民主党だが、選挙前に「派遣ネット関西」が近畿一円で候補者に行ったアンケートでは驚くべき事実が発覚したのだ。それは民主党の候補者5名が「日雇い派遣は禁止すべきではない」と回答していたこと。そして「日雇い派遣は禁止すべきでない」と回答した民主党の候補者5人(川端達夫氏、田島一成氏、三日月大造氏、奥村展三氏、大西孝典氏)は、今回、全員当選している。選挙前から堂々とマニフェストとは違う主張をしている人たちがいて、しかも当選してしまっているのだ。
日雇い派遣という究極の使い捨て労働がワーキングプアの温床になっていることはずーっと指摘されてきた。知らないのだろうか? と思ったものの、もっと確信的だった。なぜなら、民主党副代表でもある川端氏は、「日雇い派遣禁止」などに反対する「派遣制度の改善を推進する議員連盟」会長。派遣の問題ひとつとっても、「??」なのだ。っていうか民主党って「国民の生活が第一」と言ってるわけだけど、どの辺が? と勘ぐりたくなってしまう。
今回、「民主党」ってだけでうっかり当選しちゃった人たちの中に、どんな「マゼモノ」が入ってるか、しつこくしつこくチェックしていきたい。
とにかく、これからが本番だ。
選挙翌日。フリーター労組の争議に参加。組合員の職場だったキャバクラに突入!! 詳細は次号で。
開票速報を見ながら、どこか「ゾッとした思い」を感じたのは、
きっと雨宮さんだけではなかったのでは?
ここからこの国がどこへ向かうのか、
私たちにとっても「これからが本番」です。
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