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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。雨宮処凛公式サイト
セブン・イレブンのお弁当なんかの値下げ販売問題がメディアを騒がせている。
ワーキングプアなどの取材をはじめてから、少なくないコンビニ経営者から「コンビニ経営もものすごく大変なんです!」という声を聞いてきた。ある人は「この6年間1日も休みがない」と訴えた。驚く私に、その人は「そんな話はコンビニ経営ではザラにありますよ」と淡々と語ったのが印象的だった。
そうしてセブン・イレブンの問題が注目される中、ある本を読んだ。それは『セブン・イレブンの真実 鈴木敏文帝国の闇』(日新報道 角田裕育著)。
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ここにはコンビニオーナーのあまりにも過酷な労働実態が綴られている。24時間営業で、毎日開店しているコンビニ。これが非常に「便利」なわけだが、ということは、24時間、365日、オーナーには心の休まる時間がないということだ。アルバイトが急に休めば自らがレジに立ち、仕事が休みでも何かトラブルが起きれば対処せざるを得ない。そして同書には、オーナーが死んでも事実上「臨時休業」が許されていないという恐ろしい実態が描かれている。
「『これは実際にあったのだが、家族ぐるみでやっている店のオーナーが亡くなった。通夜、告別式をやっている間中、奥さんや息子が交代でレジに立って"ありがとうございます"、出棺は営業中の店内を通って・・・。たしかにセブン・イレブンは年中無休ですよ、しかし、オーナーや家族の死んだ時ぐらいどうにかならないものか、あわただしい葬式で、見ていて可哀そうだった。わたしたちも"下手に死ねないなあ"と話合っていたが、現在はそうしたものからは解放されたがね』(脱退店主Kオーナー)」(関根十九光著『セブンイレブン残酷物語』エール出版刊)。
更に同書には、驚愕の事実が綴られる。99年、東海村で原発事故が起きたことは覚えているだろう。その時、避難勧告が出ているにもかかわらず、開店しているセブン・イレブンがあったのだそうだ。なぜ開店しているかと問えば、それは「臨時閉店は契約違反になるから」。危ないっていうか、死ぬぞ・・・。
「その当時、避難勧告地域には十六、七軒のコンビニがあり、その内で本部の意向に逆らって避難した店鋪は二軒のみだったという」。
原発事故が起きていてみんな避難しているのに、「年中無休、24時間営業」を放棄してしまうことは「契約違反」だからと居残ってしまうオーナー。これは契約違反に対する「制裁」の恐怖が大きいことを示唆していると言えるだろう。同書を読んで頂ければわかるだろうが、何かほとんど「洗脳」のような状態なのだ。
「便利」の象徴のようなコンビニで蔓延する異常な事態。現在、ある裁判が進行中だ。それは「便利」な上に「安さ」もウリにしているSHOP99が元店長に訴えられたという「名ばかり店長裁判」。訴えた男性は、私と同じく就職氷河期世代。長い間フリーターとして暮らし、「正社員になりたい」という思いからSHOP99に入社した男性はものすごい長時間労働に晒され、07年の8月には一ヵ月で340時間労働。しかし、店長だからという理由で残業代はゼロ。時給にすると742円だったという。
結局、彼は入社から1年2ヵ月で「うつ状態」と診断されてしまう。ちなみに彼が働いていた時には上司が2人倒れ、一人は入院したという。彼は裁判を続けながら、現在も通院しているという。(首都圏青年ユニオンニュースレター 第98号)
「貧困」の問題は「派遣切り」などを経て少しは理解されるようになってきた。しかし、いまだにいびつな「労働」は放置されたままだ。
そして数日前、内外タイムスのある記事が話題になった。ネットカフェに「治験」の広告が登場したという記事である。治験とは、開発途中の薬を飲んで安全かどうか確かめる、まあ人体実験だ。「高額バイト」として私の周りのフリーター層でも経験者は何人かいる。その募集広告が「ネットカフェ」っていうのがなんというかもう・・・と感じるのは私だけではないだろう。
事態が悪くなっていくにつれ、「貧困ビジネス」のようなものばかりが進化する。最近、仕事がないので闇サイトの求人に応募して1万円くらいの報酬で銀行口座を作ったとかで逮捕された、なんて話も聞いた。失業者が増えれば、「どんなに安くてもいいから働きたい」という人が増え、貧困者をターゲットにしたビジネスも生まれ、場合によっては小額の報酬欲しさに犯罪にも巻き込まれるような形で加担してしまう。
何か、ふと10年前とかと比べるとトンデモないことになっていると思うのだが、じわじわ来るから「自覚」することさえ困難だ。
メーデーの時に掲載できなかった今年のメーデー写真を。
「24時間オープン」の便利さに、助けられることが多いのも事実。
でも、その陰にある過酷かつ異常な事態にも、
もっと目が向けられるべきなのでは?と思います。
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