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雨宮処凛がゆく!

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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイト

生きさせろ!
雨宮処凛の闘争ダイアリー

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ユニオン・エクスタシー、
無期限ストライキに突入!! の巻

 私も組合員の一人である「ユニオン・エクスタシー」(京都大学時間雇用職員組合)が、「5年で首切り」という非常勤職員の扱いに対して立ち上がり、無期限ストライキに突入した! 「首切り職員村」を作り、京大の「5年雇用期限」を撤回させるまで、テントを張って寝泊まりするという。しかも、ブログには「ストライキ中」の映像がアップされているのだが、なんと「こたつ」でストライキ中!!この闘いを、「ユニオン・エクスタシー」組合員として、熱烈に応援したい。

 京都大学は、04年の法人化の時に、今後雇う非常勤職員については、「5年で自動的に雇い止め」という規定を作ったそうだ。京大の非常勤職員は2600人。そのうち法人化以降に採用された1300人は1年ごとに契約を更新し、時給制で働いているという。彼らはどんなに頑張って働こうとも、5年が経てば自動的に首を切られてしまうのだ。

 詳しくはユニオン・エクスタシーのサイトも参照してほしいが、そこにもアップされている「挑戦状」には30代の非常勤職員の厳しい生活実態が綴られている。

 仕事は図書室で、時給は1200円(ちなみにこの額が上限。最低は900円)。非常勤は週30時間までと決められているので月の手取りは12万円程度。年収にして130万円ほど。京大は2010年に、まず100人を解雇するそうで、「挑戦状」を書いた人もその100人に含まれる。挑戦状には、以下のようにある。

 「『非常勤の業務は臨時的で一時的で補助的』『(解雇しても)新たな人を雇うまでだ』一一大西珠枝理事長(年収1700万円)は、このような物言いが、どれだけ働く人の気持ちを傷つけるか、考えたことがあるのでしょうか。生活保護水準なみの低賃金で2600人もの職員を働かせておいて、5年たったら使い捨て。ここはトヨタやキヤノンの工場ですか。これじゃまるで京大は現代版『蟹工船』、いや一一京大非常勤の85%は女性ですから、一一むしろ現代版『女工哀史』ではないですか。その背後にはパート労働の問題、つまり女性の労働力をいいように安く買い叩いてきた、長い歴史があります」

 大学などで講演をするたびに、その大学で働く非常勤職員の人々の低賃金、不安定さについては多く見聞きしてきた。また講演後に、その大学の非常勤の女性たちと飲んで話を聞いたこともある。時給はやはり1000円程度で、常勤の人と同じ仕事をしていても大きな格差がある上、立場はこの上なく不安定。

 そこにこの「5年経ったらクビ」という制度だ。ということは、毎年毎年大量の人がクビを切られ、そして新しい人が入ってきて、そして5年経てばその人たちもいなくなる。そうすることによって、低賃金はずっと維持されていくこととなる。不満が出る前に解雇、という制度だからだ。

 今、多くの大学は、こうして大量のワーキングプアを生み出している。非常勤職員の人たちも大変だが、非常勤講師の人々の問題も大きいだろう。私の周りにも、いくつもの大学や専門学校の非常勤講師を掛け持ちしつつ、月収12万円、なんて人がザラにいる。大学は、一方で非常勤職員たちを「使い捨て」にし、その一方で非常勤講師を酷使し、更に学生をワーキングプアに仕立て上げてもいる。

 「高学歴ワーキングプア 『フリーター生産工場』としての大学院」(光文社新書・水月昭道)に詳しいが、大学院を出て博士号を取得しながらも、コンビニバイトなどで食い繋ぐ人たちは多くいるという実態がある。同書によると、「『博士』と呼ばれる人たちで、現在、正規雇用にない者(つまり、フリーター)の数は、既に一万二〇〇〇人以上」。それは「『大学院重点化計画』における院生増産が、文部科学省の主導によって"計画的に"達成された結果」だ。この計画によって大学院生は20年前と比べて約19万人も増やされたのだが、結果として社会のどこにも吸収されず、フリーターとなったり、または低賃金の非常勤講師として働いている。同書では、大学の教員格差についても指摘されている。専任教員と非常勤講師の格差だ。

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高学歴ワーキングプア「フリーター生産工場」としての大学院(光文社新書)

 「一方は年収600万円を保障され、必要経費や保険にも不自由していない"本物"の先生であり、他方は、年収200万円・経費自腹・保険なし・貯金なし・嫁さんなしの"バイト"センセなのである。もちろん、講義を受ける学生さんたちは、そんなこと、知るよしもないだろう」

 更に以下のような衝撃の数字もある。

 「ある私立大学では、その大学で開講している全講座の専任教員による担当率は、わずか24%だという。75%の講義は、大学で正規に雇われている教員によってではなく、その大学に本来関係のない外部の人たちによってまかなわれているのだ」

 格差社会の矛盾が凝縮しているような大学の現場。そして学費もやたら高い。私の周りにも、400万円もの奨学金に苦しめられている若者たちが多くいる。でも、学費が高いのって仕方ないんじゃないの?と思う人もいるだろう。が、ヨーロッパの多くの国では大学の授業料はタダである。そうして日本政府は、国連から「高等教育の無償化」を迫られてもいる。国際人権規約の社会権規約13条2項「高等教育の漸進的無償化」を保留しているのは、日本とルワンダとマダガスカルだけである(「ネオリベ現代生活批判序説」より)。

 このように、日本の常識は世界の非常識だったりするし、「学校」の常識はだいたい社会の非常識だ。

 そんな中、とにかく09年2月、京大・非常勤職員の大量解雇問題に対して、ユニオン・エクスタシーは立ち上がった。「私たちは5年で壊れる機械やないぞ!」と。

 昨年のメーデーファイナルで、「酔った勢い」で入ったユニオン・エスクタシー。ちなみに「労働にエクスタシーを!」というスローガンにひかれてだ。一組合員として、私はこの闘いを応援するぞ!!

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ネオリベ現代生活批判序説(新評論)

人を「育てる」場であるはずの大学で、
なぜ「人の使い捨て」がまかり通るのか?
雨宮さんが引用している、サイトに掲載された「挑戦状」、
一読の価値ありです。ぜひ全文を。

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