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雨宮処凛がゆく!

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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイト

生きさせろ!
雨宮処凛の闘争ダイアリー

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「ないかくだとう」と戦争民営化。の巻

 お正月らしいことをまったくしていないせいか、いつまでも「新年」な感じがしない。そういえば紅白も見ず、おせち料理も食べていなかった。なので何か「新年らしいこと」をしようと思い、今年やりたいこと、なんかを書きたいと思う。

 今年やりたいこと。それはやっぱりメーデーだ。去年は全国14カ所でインディーズ系/独立系/プレカリアート系メーデーが開催され、私も全国ツアーをした。ドイツ、イタリアとも連携し、一緒に運動をしている人が「派遣」された。で、今年は100カ所くらいでメーデーをやりたいね、と話している。メーデーが開催されたところでは、月に一度くらいの割合で飲み会が開催されたり、労働組合が結成されたりしていて、そこが「継続的な場」となっているからだ。そういう場があれば、派遣切りで大変な時とか、死にたい時とか、とにかく駆け込める。そうしてそんな場が全国に100カ所くらいになれば、少しはこの社会も息がしやすくなっているだろう。

 でもメーデーの前に、3月末という、更に失業者が溢れる事態が予想される時期が来てしまう。こっちでもいろいろと手伝いたい。

 そんなことを考えていると、もっと運動の現場に密接にかかわりたいと思い、現在、講演やイベント出演などは、申し訳ないが基本的に断らせてもらっている。

 そして、小説も書きたい。ずーっと小説を書いていないので、小説欲求が時々頭をもたげてくる。こちらもなかなか時間がとれないが、書くつもりだ。

 また、海外の取材もしたい。去年は韓国の取材をし、『怒りのソウル』という本にまとめたが、もっといろいろな国のプレカリアートな実態を調べ、書きたい。

 その意味では、最近、とても興味深い取材をさせて頂いた。イラクで04年に人質事件に巻き込まれたジャーナリスト・安田純平さんの取材だ。

 新聞報道などで、安田さんがその後「民営化された戦争」の取材のために、イラク入りしていることは知っていた。命がけの取材である。そうして昨年末、私は安田さんに話を聞くことができたのだ。

 詳しいことは、講談社現代新書のメルマガの連載「排除の空気に唾を吐け!」を読んでほしいが(そろそろ配信される頃です。ちなみに3月頃には本として発売されます)、07年5月から08年2月まで、イラクで「料理人」として働いた安田さんの話はあまりにも凄かった。

 まずはイラクで「末端の労働者」として働くためにクウェート入り。2ヵ月半クウェートで職を探して「なんで日本人がイラクに働きに行くんだ」と怪しまれながらも30軒くらいの人材派遣エージェントを回り、イラクでの仕事を掴む。ちなみにクウェートには、イラクで働きたい人のための専門エージェントがあるという。そこに貧しい国の人々が「出稼ぎ」という形でイラクで働くことを希望して訪れる。

 安田さんの仕事は「料理人」。月収は13〜14万円。飛行機でイラク入りし、バグダッドから南に180キロの「職場」までは民間軍事会社の護衛つきで移動。イラクでもっとも死んでいるのは「移動中のトラック運転手と民間軍事会社の警備員」だという。無事「職場」についたのちは、仕事だ。イラク陸軍の基地建設現場への食事提供、後半2ヵ月間はバグダッドにある民間軍事会社への食事を提供する。

 「出稼ぎ」として建設労働者などの形でイラクに入っているのはネパールやバングラディシュ、インドなどの人々。戦後の「復興」をもくろんでイラクに進出する各国の企業と、それらの企業の社員を警備する民間軍事会社。夜になると降ってくる爆弾。誘拐の危険があるので、外を出歩くこともできない生活。爆弾などで亡くなっても、公式な戦死者としてカウントされることのない出稼ぎの民間人。「戦争に参加している」という意識などない各国の労働者たち。

 詳しくはメルマガで読んでほしいが、「民営化された戦争」に絡む様々な利権などに、何度も気が遠くなる思いがした。

 さて、今年したいことというテーマだった。最近、それに新しくひとつの項目が加わった。1月、「麻生を倒せ! ないかくだとう実行委員会」というものが結成された。詳しくはこちらを見てほしいが、内閣を打倒するために、いろいろとやらかすようである。私ももちろん、こういう物騒な響きの企みにはぜひ参加したい。

 だって、黙っていたら生きられないのだ。この数年、それを嫌というほど痛感した。そして黙らずにいろいろな方法で抵抗してきたが、状況は悪くなるばかりだ。数日前には、大阪で元派遣社員の餓死死体が発見された。1月18日には、派遣切りにあった男性が強盗殺人で再逮捕された。

 とにかく、なんでもいいから声を上げたいと思う。じゃなきゃホントに生きられない。

※アマゾンにリンクしています 小森陽一さんと対談本を出しました。「生きさせる思想」。読んでね。 ※アマゾンにリンクしています

「黙っていたら生きられない」。
そんな言葉が、まさに現実のものとなってしまっている現在。
ともかく声を上げ、動いていくしかありません。
上記「ないかくだとう委員会」も、ぜひチェック!

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