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雨宮処凛がゆく!

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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイトhttp://www3.tokai.or.jp/amamiya/

生きさせろ!
雨宮処凛の闘争ダイアリー

※アマゾンにリンクしてます。

いうこときくよなやつらじゃないぞ! の巻

プラカード。見ての通り。

 11月30日夕刻、原宿・渋谷は、突如現れたサウンドカーとその後ろで踊り狂う貧乏人、暇人、変態、その他もろもろのプレカリアートによって「解放」された。デモ隊から突き出す麻生や小泉、ゆでだこ(麻生邸ツアーで「コーボー」と叫んで暴れた私服警察のオッサン)、渋谷警察署の警備課長などなどの巨大パペット、先頭で爆音で音楽をかけまくるサウンドカー、その後ろで踊り狂う人々、そして太鼓を叩きまくるドラム隊。今までのどんなデモより、最高最強に楽しいデモだった。「反戦と抵抗の祭〈フェスタ〉08 責任者出てこい! これはヤツらの戦争だ!」のデモだ。

麻生パペット。パペットに書いてあるのは「選挙から逃げ続ける」「格差と貧困の責任者」「タイホの最高責任者」「戦争協力の責任者」「今すぐヤメロ」「首相失格」。

 今回のデモコースは凄かった。表参道を出発して渋谷区役所を通り、そして渋谷の街すべてを舐め尽くすような圧巻のコース!! 途中、狭い道をサウンドカーが通る時はデモ隊で道が埋め尽くされる。そうして踊りまくる私たち。一体あんなデモコースは何年ぶりなんだろう。今年の「自由と生存のメーデー」は64年ぶりに新宿駅前解散を果たしたわけだが、今回は渋谷を思いきり「解放」してしまったのだ。

 そうして私たちは踊り狂い、叫びまくった。「いうこときくよなやつらじゃないぞ!」私が叫ぶと、みんなが一緒に叫んでくれる。デモ隊から突き出す数々のプラカード(素晴らしいプラカード例はこちらで御覧頂けます)。私は麻生に語りかけた。「麻生さん、私たちが掲げているプラカードの漢字が読めますか?」。

同じく「責任者パペット」。渋谷警察も参加。

 そして今年のデモコールがまた素晴らしい。福岡メーデーのデモコールを元にしてフリーター労組の変態組合員ヨシヤ氏がアレンジを加えたものだ。ほぼ4文字熟語。私と組合員ヨシヤ氏、そして福岡から来た「フリーターユニオン福岡」の小野さんで、サウンドカーの音楽に合わせて踊りながら叫びまくる。

 「フリーター万歳!」「ニート万歳!」「ひきこもり万歳!」「メンヘラー万歳!」「野宿者万歳!」「非モテ万歳!」「腐女子万歳!」「バイト逃亡!」「会社爆発!」「給料倍増!」「有給急増!」「年中休業!」「年金滞納!」「国保も滞納!」「家賃も滞納!」「ガス代滞納!」「電気滞納!」「水道止まった!」「残高ゼロ円!」「所持金100円!」「住むとこないぞ!」「年越せねーぞ!」「モチ買えねーぞ!」「文句を言うぞ!」「黙ってないぞ!」「貧民反乱!」「警察リストラ!」「金持ち消えろ!」「麻生はやめろ!」「与党を落とせ!」「政権やめろ!」「世襲をやめろ!」「米軍帰れ!」「戦争やめろ!」「爆弾落とすな!」

「おい小泉!お前は何人自殺させた!?」。

 そのうちにデモコールはアドリブも含み、意味不明な方向に。「ミクシィ退会!」「ブログ炎上!」「学校脱出!」「家庭崩壊!」「社長水虫!」。一体見ている人は、なんのデモだと思ったのだろう・・・。でも「反戦と抵抗の祭〈フェスタ〉」は、年に一度のお祭りなのだ。先頭の車でマイクを持った実行委員の若者が、買い物やデートのためにやってきた若者でごった返す渋谷のど真ん中で叫ぶ。「渋谷のHMVにCDを買いに来た人、音楽にはこういう使い方もあるんだ!買い物に来た人、お金を払って消費するだけじゃなくて、楽しいことはこうやって自分たちの手で作れるんだ!」。
 そう、そのことこそが、私たちが街頭に突然現れ、お祭り騒ぎの解放区を作り出す一番と言っていいほどの目的だ。こうして路上を取り戻し、そこで大暴れしながら歌い、踊り、叫ぶこと。それが当たり前の風景になっていったら、例えばアキバ事件みたいなことって、なくなりはしないにしても少しは減るような気がする。デモ隊が何年ぶりかにデモコースとして解放した道に入る時、先頭の若者がマイクで叫んだ。「何年ぶりだ!何年ぶりだ!見てるか渋谷!見てるか日本!見てるか世界!ここが世界の中心だ!!」

デモ最中。手前のプラカードの言葉は「『君のために死にに行く』ってマジうぜぇんだけど。アタシはあんたの死神なんかじゃないんだけど」。

 そして私たちは歓声を上げ、叫びまくる。「路上解放!」「渋谷を解放!」「路上で歌え!」「路上で騒げ!」「路上で踊れ!」。沿道の人々も一緒に踊りだす。手を振ってくれる人、拍手してる人。沿道の人たちもなぜだかみんな満面の笑顔だ。

 解散地点の宮下公園にサウンドシステムを持ち込み、DJが流す音楽で私たちは踊りまくるアフターパーティーに突入した。ものすごい寒空の下なのに、みんな汗だくだ。麻生邸に行こうとして逮捕されたりしたけど、今回のデモは1人の逮捕者を出すこともなく終えることができた。警察は何度も警告を出してきて、その中にはなぜか「凶器準備集合罪」とかいうワケわかんないものまであったらしいけど、とにかく私たちは最高のデモを終えた。それがみんな嬉しくて嬉しくて、次々と人が胴揚げされていく。私も胴揚げされた。生まれて初めての胴揚げだ。パーティーの最後、良心的兵役拒否をしている韓国の若者(日本の大学に通っている)が、言った。

デモ後のアフターパーティー。踊りすぎて筋肉痛。

 「国境なんて関係ない! 馬鹿馬鹿しいナショナリズムを超えて連帯しよう!」

 なんて美しいまとめ。「連帯」。ああ、この言葉に「照れ」がない世代で良かった。

 こうして私たちの「反戦と抵抗の祭〈フェスタ〉」という2日間は終わったのだが、1日目の屋内集会もすごかった。アルゼンチンでピケテーロという「生存運動」的取り組みをしている人々の映像を見たのだが、その「貧乏人の集まり」がとにかくハンパじゃないのだ。リーダー格のオッサンはいきなりピケテーロの人々を連れて高級ホテルに入っていったかと思うと、「なんでここに来たかわかるか!こんな高級ホテルの持ち主なら、何か食わせてくれると思ったからだ!」とブチまかし、「サンドイッチくらい出せないのか!」と叫ぶ。彼が連れているのは若者や老人や子どもたち。かと思えば突然みんなでカジノに乗り込んで占拠。食料をよこせ、と居座る。カジノを占拠する赤ちゃんから老人までの人々。麻生邸に行こうとしただけで逮捕される日本の状況とはあまりにも違うのだ。

 そんなふうにこの2日間はアルゼンチンの運動や韓国の兵役拒否、アメリカのイラク帰還兵、世界レベルの金融危機、そして日本の状況などを絡めて「貧困と戦争」について知り、考え、感じ、語り合い、最後に路上で大爆発、という、あまりにも楽しい「祭り」だったのだ。メーデーもそうだけど、現場がどんどん変化し、進化していっているのが最高に面白い。ああ、また早くサウンドデモやりたい!

DJさん。アフターパーティーも最高でした!

 デモ写真は、ムキンポさんのサイトにアップされてます。

なんとも痛快、その場の熱気が伝わってくる雨宮さんのレポートに、
次は参加したくなった!人も多いはず。
こんな「解放区」がもっと増えれば、
もう少し風通しのいい、息のしやすい社会になるのでは?

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