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雨宮処凛がゆく!

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あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を訪ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイトhttp://www3.tokai.or.jp/amamiya/

生きさせろ!
雨宮処凛の闘争ダイアリー

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3人、無事に釈放!!の巻

3人釈放後の集会にて。この日、浮かれたみんなで祝杯を上げ、盛り上がる。

 とりあえず、本当によかった・・・。
 11月6日、お伝えしていたように麻生邸を見に行っただけで逮捕された3人が、無事、釈放された。この日開催された「でてこい3人! でてこい麻生! 麻生邸リアリティツアーの不当逮捕に抗議する集会」には、麻生は出てこなかったが、釈放された3人は出てくる、という嬉しい展開になったのだった。250人が詰めかけた集会後、私たちは公園ではなく居酒屋で祝杯を上げ、その後カラオケ闘争に突入したのだった。みんな元気そうで、一安心だ。

 釈放されて、本当によかった。よかったのだが、麻生の家を見に行こうとしただけで逮捕され、11日もブチ込まれる、ということが前例になってしまったということは、由々しき事態である。今回のことは、格差社会に疑問を持つ貧乏人が、なんらかの意志や考えを持って、麻生の家を見に行こうとして道を歩く、そのこと自体が東京都公安条例にひっかかって逮捕される、という恐ろしい管理社会の実態を暴くことにもなった。「集団示威行動」だそうだ。

 しかし、逮捕の瞬間の動画を見てもらえば一目瞭然なように、私たちはただ道を歩き、時々通行人に「麻生さんの家に行きませんか」と肉声で言いながら歩いていただけだ。用意した横断幕なんかも「ダメだダメだ」と言われてたたんでいた。肉声で話しながら、渋谷の街を「お散歩」していたのだ。「麻生邸を見に行く」という「意思」を持って。そして先頭の男性が迷子防止の目印のプラカードを上げて、麻生の「格差・貧困を作り出した責任」「戦争を支持した責任」と言った途端、捕まった。権力者の責任を街頭で肉声で問う、そのことが「公安条例違反」として11日もブチ込まれてしまうって、なんか、なんか、独裁国家っていうか、映画みたいな話だ。

 この事件は、管理・監視社会を語る上でも、格差社会を語る上でも象徴的な事件として語り継がれていくだろう。貧乏人は、当たり前だが「格差社会の犠牲者」という側面だけで語られるものではない。意思をもち、自らが社会を変える主体なのだ、という自覚を持ち、声を上げている。政治の責任、首相の責任を問う権利は、貧乏人だろうが金持ちだろうが当たり前に存在する。そして歩道を自由に歩き、麻生の家を見に行く自由がある。

 折しも現在、景気の悪化で派遣など非正規労働者の人々が大量にクビを切られている。先日、厚生労働省が発表した非正規雇用率は37・8%。3人に1人が非正規だった時代から、既に4割弱が非正社員の時代になったのだ。
 今回逮捕された1人「渋谷3号」さんは、留置場の中からこんなメッセージを送っている。

 「労働者人口の三分の一を占める非正規労働者の中から今、新たな政治が提起されようとしています。要求されているのは、政争ではなく、政治であり、政治文化の復権です」

 そして今回の逮捕で悲しかったのは、私の大切な仲間である3人を侮辱し、冒涜した報道の数々だ。現場にいたのに、嘘の警察発表そのままで「警官に暴力をふるった」「無届デモをした」などと流したマスコミ。それが真っ赤な嘘であることは救援ブログやYou Tubeの動画を見れば明らかなのに、まったくなんの訂正もなく、彼らは侮辱されたままだ。私のように1人で、自分の名前を出してやってるような人間がそんなニセ情報に基づいた大嘘を書き散らしたら、今頃もの書き生命自体を失っているだろう。今回の報道の件では、「誰も責任をとらない」一部マスコミの体質もよくわかった。ちなみにYou Tubeの映像は、11月4日までに14万アクセスとなり、大きな話題を呼んでいる。救援ブログのトップページから見られるのでぜひ。

 だけど、嬉しいこともたくさんあった。私は「文化人賛同」の呼びかけ人となり、多くの人に呼びかけたのだが、本当に様々な立場の人が賛同人になってくれたのだ。こちらについても救援ブログの右側の「文化人賛同」を参照してほしい。コメントも沢山頂いた。本当に本当に、ありがとうございました。

 そして鈴木宗男議員は、今回の逮捕の件で、内閣に「質問主意書」を提出して下さった。この11日間、本当にたくさんの人々にメチャクチャお世話になった。ものすごく多忙なのにもろもろ打ち合わせの時間をとってくれた、佐藤優さんをはじめとする文化人の方々、動いてくれた政治家の方々、秘書の方々、そして救援会はたぶん不眠不休の状態だったと思う。今回、初めて「救援」のほんの片隅を担い、いろんな人の熱意やあたたかさや、そんなものに何度も触れた。そしてこの11日間、〆切ブッちぎりまくりだったのに「こっちはいいから」と応援してくれた編集者のみなさんにも大感謝だ(そしてマガジン9条も先週、お休みさせてもらいました。御理解御協力、本当に感謝です)。
 さて、今月末は「反戦の抵抗の祭〈フェスタ〉08 責任者出てこい! これはヤツらの戦争だ!」、本番だ(麻生の家を見に行くツアーは、このイベントのプレ企画として行われたのだ)。29日、30日と連続で開催される。29日は13時から渋谷勤労福祉会館。30日は15時に宮下公園に集合、デモに出発だ。
 街頭での表現や、言葉や、権利や、自由を奪われないために、プレカリアートたちは再び路上に返り咲くだろう。しつこいくらいに何度でも。

無事釈放のニュースに、まずはほっと一安心。
けれど、今回の事件が浮き彫りにした問題の数々を思えば、
気を緩めてばかりもいられません。
というわけで、月末は渋谷に集合! です。 

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