――ドイツ政府はそれほど兵士が必要ないのかな? |
ダニエル |
ないと思う。 |
マルクス |
でも、兵役外労働がなくなったら政府が困るんじゃないか? 社会福祉の仕事はいつも人手不足。 それを兵役外労働で補っているんだから。 ぼくたちだったら安いコストで済むし。 |
ダニエル |
だから「徴兵制ではなくて社会貢献活動制度に変えよう」 という話が毎年出ている。 ただ、すぐにはなくならないだろうね。 |
マルクス |
そうなったら(社会貢献活動制度が導入)されたら、 女性にも義務づけないとフェアじゃない。 |
ダニエル |
マルクスの持論だよね。 この問題については男女同権じゃなければ いけないっていう。 |
ガブリエル |
(兵役義務期間が)どんどん短くなっている。 むかしは13カ月、それが12カ月になり、 いまじゃ9カ月(国外で兵役外労働に就く場合は11カ月)。 さらに6カ月にするという話もあるんだ。 |
ダニエル |
9カ月より短くすると兵役の意味が なくなっちゃうんじゃないか。 |
ガブリエル |
兵役はいらないという意見もあるけど、たとえば 兵役義務のないアメリカだと、兵士になりたくないけど、 それ以外に仕事がないから、軍隊に入隊する人がいる。 ドイツでは学校の成績が優秀なやつだって兵役の義務がある。 どっちがいいんだろう? |
19歳ながら、
世界の情勢を敏感に
とらえているガブリエル |
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――マイケル・ムーア監督もそんなこと言ってたよね。 |
ダニエル |
『華氏911』でしょ。 |
――彼はあの映画で「イラク戦争に行くのは貧しい階層の人間ばかりで、
国会議員の息子で出兵しているのはたった1人。
もしアメリカに兵役義務を導入すれば、
政治家も戦争についてもっと慎重に考えるんじゃないか」と。 |
ダニエル |
自分の子供を戦場に行かせたくないというのはわかる。 だけど、そういう人に、戦争に関わる決定をしてほしくない。 開戦を決める立場の人間なら、 子供を戦地に送ることを誇りに思うべきだ。 「息子はお国のためにイラクに行っている」って。 でも、実際は違う。 |
協働学舎での
兵役外労働を終え、
今はドイツの大学で
学んでいるダニエル |
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――ドイツは兵役についてどう考えているの? |
ダニエル |
ドイツでは戦後、軍隊をもつ際に 「職業軍人だけだと同じような考え方の人間が 集まって閉鎖的な集団になる。 だからいろいろな人間を軍隊に入れるべきだ」と考えた。 それで兵役制度をつくったんだと思う。 (軍隊が)社会とかけ離れた存在にすると危険なので、 常に新しい人間を入れようということ。 |