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昨年、普天間基地を抱える沖縄・宜野湾市で開催された、
「ピース・ミュージック・フェスタ! '09」。
3年前からフェスタにかかわってきた伊丹さんが、
「一番嬉しかった」という周囲の変化とは?
いたみ・ひでこ
1962年三重県生まれ。ミュージシャン。ロックバンド「メスカリン・ドライヴ」などを経て、1993年に中川敬らと「ソウル・フラワー・ユニオン」を結成。1995年の阪神淡路大震災の後、アコースティック・ユニット「ソウル・フラワー・モノノケ・サミット」を結成し、被災地での演奏活動を続ける。2005年より沖縄・宜野湾市に在住。2007年から、基地問題や平和を考える野外音楽イベント「ピース・ミュージック・フェスタ!」の実行委員会共同代表を務める。
前回、始まりのきっかけをお聞きした“ピース・ミュージック・フェスタ!”はその後、翌2008年に東京・上野で開催。そして昨年はまた沖縄に戻って、普天間基地のある宜野湾で開催されましたね。
上野でやったのは、その前の年にせっかくたくさんの人が内地から辺野古まで来てくれたのに、それで終わりにしたくない、と思ったから。もっと東京の人にも辺野古に目を向けてほしいな、と。
で、去年の宜野湾での開催はやっぱり、もう1回沖縄でやりたいっていうみんなの気持ちがあったから。辺野古でもう1回、という案もあったけど、普天間基地を抱える宜野湾っていうのはやっぱり基地問題に関するキーワードじゃないかな、と思った。それに、この時点では、まだ政権は自民党だったから、宜野湾の伊波市長は県内移設反対をずっと言ってるけど、もし次の選挙で市長が替わってしまったらもう宜野湾でもできない、これが最後のチャンスかも、とも思ったし。
振り返って、どうでしたか。
一番嬉しかったのは、地元の人たちが初めて、がっちり手伝ってくれたこと。それまではやっぱりどこかに「ナイチャー(内地の人)がやってるイベントじゃないの?」みたいなのがあったから。
特に、娘が保育園で一緒だった、ずっと友達付き合いしてるママちゃんたち。中には基地で働いてる人もいっぱいいるんやけど、その彼女らが「私らも手伝う」って言ってくれた。「子どもを育てるために、今は基地で働かないといけないけど、本当は働きたくないし、働いてることを誇りとは思ってない。子どもにはちゃんと『基地はいらない』っていうことを伝えていかないといけない」って。当日の食べ物の屋台とか、ボランティアの炊き出しもみんな彼女たちが出してくれたし、保育園までもが全面協力してくれた。
「チケットはどうなってんの」って言われて、「あんまり売れてない」って言ったら、「なんで早く言わないの」って、親戚中に連絡してくれたりね。「こんないいことしてくれてんのになんでもっと積極的に言わないの、私らも手伝わなかったら恥ずかしい」とも言ってくれて・・・。3年前やったら、こんなことはちょっと考えられなかった。私の方が「本当にいいの???」ってオロオロしたくらい(笑)。
あと、宜野湾のときは“オゾマトリ”っていうグループが来てくれて。
ロサンゼルスを拠点に活動してる、ラテンミクスチャーのグループですよね。唯一の、アメリカからの参加。
そう。もともと、フジロックで1回一緒だったときに、「めっちゃええなあ」って思ってて。それで、知り合いの音楽ライターが彼らに辺野古の話をしたら、「行く」って言ってくれてね。それを聞いて、すごいテンション上がったもん、私。米軍基地をなくそうっていうフェスに、アメリカのバンドが来る。しかもアメリカの文化特使として、つまりアメリカの税金を使って、やから。
そうなんですか?
だから、事前にアメリカ大使館から電話がかかってきたよ。「まさか基地反対のイベントとか、そういうのではないですよね」って。「いやー、環境問題とか、いろいろですね」って言ったけど(笑)。
で、ステージに出て来て、いきなり「沖縄に基地はいらないーーー」って叫んだからね(笑)。マネージャーもすごかったよ。「自分たちでやりたいことを決めて活動してる、それを認められて文化特使になってるんだから、政府にがたがた言われることはない」って。
かっこいい!!
当日会場に来てた、基地で働いてるママたちも、まさかアメリカ人が「沖縄に基地はいらない」とか言うとは思わないから。みんなビックリしてた。
さて、普天間基地の移設問題については、鳩山首相が「5月までに結論を出す」と言っていますが・・・。伊丹さんは、今後どうなると思っていますか。そして、どうなってほしい?
県外移設はもちろん当たり前。この事は、宜野湾の伊波市長くらいしか具体的には言ってないけど、本当は普天間基地そのものが、もうすでに老朽化してほとんど機能してないし、アメリカにとっては「いらないもの」。伊波さんは、アメリカも普天間の海兵隊の大部分をグアムに移転させるつもりでいた、とずっと指摘してる(※)。ヨーロッパとかのニュースを見ても、「もうグアム移転に決まってるようなものなのに、なんで日本人はいろいろ言ってるの?」っていう感じの、日本のメディアとは全然違うことを言ってるよ。
※宜野湾市の伊波洋一市長は、「米軍自身が普天間の海兵隊をグアムに移転させる計画を作成していた」ことを、いくつもの証拠文書を挙げて指摘し、与党議員に対する講演や鳩山首相への働きかけも行っている。詳細は宜野湾市HPにて。
特に、一時期の沖縄県外での報道では、「辺野古に移設できなかったら日米関係は終わり」みたいな論調でした。
そんなん、ないない(笑)。それを言うなら「日本にお金がなくなったら日米関係は終わり」でしょう(笑)。アメリカとしては、グアムにほとんど全部移して、でもたまに演習とかをするために辺野古にも基地をつくりたい。で、日本側にも「つくってほしい」事情があるんやと思う。でも、そういう話の真ん中にいるのは沖縄県民であって、何を勝手に頭上で話してるんや、私らと直接話しようや、という思いがあるね。
沖縄県民も、今こそ「絶対基地はいらん」っていうのをちゃんと言わないとあかんと思うよ。これまで、どうしても「基地がなかったら沖縄はやっていけない」っていう刷り込みがあったけど、そこの根本的な考え方を変えて、「基地がなくてもやっていけるような経済を、自分たちでつくっていかないといけない」っていうふうにならないと。
宜野湾のフェスでのお話や、名護市長選の結果を考えると、すでに少しずつそういう変化は起こりつつあるのかな、とも思います。
うん。辺野古の移設賛成派だった人たちの中でも、「結局私らが頑張らないから、こういうふうになってしまってる」って言い出す人も出始めた。そんな歴史を持つ沖縄だからこそ、逆に沖縄から発信していく、沖縄がオピニオンリーダーになるみたいな部分があってもいいと思うし、時間はかかっても、絶対そうできるはずやと思ってる。
それはすごく重要かも。沖縄県外にはどうしても、「基地問題は沖縄の問題」という意識がどこかにあるような気がしますし・・・。
東アジア最大の米軍基地が辺野古につくられようとしてるっていうのは、全然沖縄だけの問題じゃないよね。ヤマトの問題やと思う。
辺野古の座り込みは、おばあたちが「絶対に孫たちにこの辺野古のきれいな海を残す」って思ったところから始まったわけやけど、そういうふうに「自分の子どもや孫の代には、こんな社会にしたい」っていう思いを、ヤマトの人は持ってるのかなあ、って思うことがあるなあ。環境問題でも何でも、ただ流行として消費するだけで、「これは目先のことだけじゃなくて、未来につながっていく問題だから」っていう意識が、沖縄よりもない気がするから。
さて、最後に今後について。今年、ピース・ミュージック・フェスタ! 開催の予定はないんですか?
宜野湾で頑張っちゃったから、赤字がすごいんやけど(笑)、だからって腰砕けになるんじゃなくて、規模は小さくていいからやりたいなとは思ってる。辺野古の浜でやっぱりやりたいね。私は活動家ではないし、音楽っていうものを通じてしか何もできないから。
こないだ辺野古に行ったときは、「もう基地は建たない、よかったね」っていうフェスタができたらいいのになあ、っていう話をみんなとしたんだけど。結局、私らは本当はこんなことがしたいわけじゃないのに、「やらないとあかん」って思ってやってるわけやから。「ピース・ミュージック」なんてやらないでいい沖縄があるのが一番いいよね、って。
それも多分「子どもや孫の代にこうあってほしい社会」ですよね。
そうやね。・・・ちょっと前、娘のそらの誕生日やったの。それで、朝起きて「なんか好きなもの買ってあげる」って言ったら、「ママ、お空って買えるの? お空買ってちょうだい」って言うのね。小学校に入って、いろいろモノもわかってしっかりしてきてたのに、突然。「なんで?」って言ったら、「お空をママが買ってくれたら、もう飛行機は飛ばないでしょう。うるさくないでしょう」って。・・・あれは、ホロッと来たなあ(笑)。
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キャンプ・シュワブ陸上部への移設案浮上など、
揺れ動き続ける普天間基地問題。
そもそも、なぜ「基地返還」ではなく「移転」なのか?
次の世代に私たちが残したいのは、どんな社会なのか。
沖縄でも、それ以外でも、1人ひとりが改めて考えてみるべき時です。
伊丹さん、ありがとうございました!
なお、今回のインタビューは、高円寺「素人の乱 セピア」に場所を提供いただきました。
あわせてお礼申し上げます。
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ピース・ミュージック・フェスタ! のホームページでは、
売り上げの一部が活動費となるオフィシャルTシャツの販売や、
カンパの受付も。今年のフェスタ実現のために、ぜひチェック!
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「カンテ・ディアスポラ」
辺野古とのかかわりをきっかけに生まれた曲
「辺野古節」が収録された、
ソウル・フラワー・ユニオンのアルバム。名作です。
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