100224up
畠山理仁●はたけやま みちよし/1973年愛知県生まれ。早稲田大学在学中の1993年より週刊誌を中心に取材活動開始。1998年、フリーランスライターとして独立。興味テーマは政治家と選挙。米国大統領選、ロシア大統領選、台湾総統選など世界の選挙も取材。大手メディアが取り上げない独立系候補の活動を紹介した『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著・扶桑社刊)では取材・構成を担当した。 昨年9月18日、記者クラブ加盟社以外にも開放された外務大臣記者会見で、フリーの記者として日本で初めて質問。今年1月22日には、東京地検からの事情聴取直後に開かれた小沢一郎・民主党幹事長の記者会見を、iPhoneを使ってゲリラ的にインターネットで生中継し注目される。twitterでは、 @hatakezo で日々発信中。
「例の検察の裏金について、全部オープンにするように評価をしなさい、と申し上げました。聖域なくしっかりやっていく」
(原口一博総務大臣)
※iPhoneでUstream中継しました。録画映像はこちらで視聴できます。(2:53以降〜に上記の発言があります)
これは定例の記者会見ではなく、フルオープンでの取材が許可された「行政評価機能強化検討会」での発言。「検察の裏金」という言葉がショッキングだったため、複数のメディアがこの発言を取り上げた。
それには理由がある。これに先立つ1月29日、鳩山内閣は鈴木宗男衆院議員の質問主意書に対して「検察庁の調査活動費は適正に執行されていることから、ご指摘のような調査をする必要はないものと考える」との答弁書を閣議決定していたからだ(原口大臣も署名)。
私は翌々日の19日夕方、総務省で開かれた記者会見で、その整合性について質問した。対する原口大臣の回答は次の通り。
「結論から言うと、全く矛盾しません。鈴木議員の質問主意書は、特定のお話による調査費が裏金化されているという話。私が申し上げたのは、別にどこかの政府機関が聖域になるわけではない、と。特定の検察事案とか、特定の行政機関を指して言ったわけではない。ちょっと例示の仕方が、頭が飛んでいた。また、検察に裏金があるということを断定したものでもございません」
ちなみにこの日、原口大臣は記者会見を二回開いている。一回目の会見は閣議終了直後の午前中、フリーの記者が入れない参議院内の食堂で開かれた。その会見が短時間だったこともあり、夕方にフリーの記者も参加できる二回目の会見が総務省内で開かれたのだ。
後になってわかったことだが、一回目の会見でも私と同じ質問が出ていた。限られた時間の中で会見を開いてくれたのに、質問がかぶってもったいないことをした。反省。
「どこの省庁で、オープンで、そして1時間近く毎週2回、こういう形で会見をしている大臣がいるだろうか」
(岡田克也外務大臣)
岡田大臣が「閣議後のぶら下がり会見を中止する」と表明したことを受け、記者クラブに所属しないJ—CASTニュースの亀松太郎記者が事実関係を質問。続いて読売新聞の二人の記者が「取材機会が減る」として連続で大臣の見解を求めた。それに対する岡田大臣の発言がこれ。
そもそも「ぶら下がり会見の中止」は、先だって閣内で行われた「閣議の発言は対外的に公表しない」という申し合わせを受けてのもの。従来、岡田大臣は閣議後の「ぶら下がり」を「閣議における発言を紹介する」場と定義しており、「論理的に考えても、何もものを言えない」(岡田大臣)との理由で中止を表明したのだった(ただし、「いろいろな出来事があったときなど、必要に応じてぶら下がりはやる」とも発言)。
ちなみに官邸内や国会の中で行われる「ぶら下がり」に参加できるのは、国会記者証を持つ記者クラブ所属の記者のみ。岡田大臣は「取材の機会が偏ってしまう」との考えから、「オープンで取材機会に偏りがない中でやるべきだ」と改めて強調した。
実際、岡田外務大臣就任後に記者会見がオープン化されてから、外務大臣の記者会見時間は長くなっている。他省庁の大臣会見は閣議終了後すぐの午前中に開かれるため、日程の都合上、10分〜20分の短時間で終わることが多い。ところが外務省は比較的長い時間が取れるよう、午後に定例会見を設定しているのだ。そのため他省庁でありがちな「次の予定がありますので…」という決まり文句で会見が打ち切られることも少ない。
余談だが、岡田大臣の会見を毎回テープに録音し、テキスト化して外務省のホームページに掲載するのは外務省職員の仕事だ。テープ起こしを担当する職員さんからは「会見が長くなって文字起こしが大変。今日も徹夜です…」との声も聞かれる。お疲れ様です!
「政務三役会議は私の主催です。その場はすべての方にオープンにして、生の情報を流していただく。これはフリーでございます」
(原口一博総務大臣)
現在、総務大臣の記者会見は総務省の記者クラブが主催している。その意味するところは「記者会見への参加資格を決めるのは、大臣ではなく記者クラブ」だということだ。
原口大臣は就任以来、広い意味でのオープン化を呼びかけてきた。ところが記者クラブ側が参加に一定の条件を課しているため、すでに実績や影響力のあるメディアであっても会見に参加できないケースが生じている。
そして、仮に参加が認められたとしても奇妙なルールが存在する。たとえばこの日の会見では、フリージャーナリストの岩上安身さんがこんな問題を指摘した。
岩上「総務省の記者クラブは、フリーである私、あるいはその他のフリーランスに対して、動画の撮影、配信は許さないという姿勢をとっています。このことは御存じでしょうか」
原口「知りません」。
私も動画撮影を希望している一人だが、いまだに記者クラブ側から「動画撮影禁止」を言い渡されている。しかも合理的な説明はないままだ。「情報は政治家が統制するもの」とばかり思っていたが、オープン化を阻んでいるのは政治家ではない。記者クラブだ。
もっとも、総務省の場合は記者クラブ側がフリーの参加を認め、門戸を広げたという点ではまだ救いがある。
いまだにフリーの参加を一切認めていない省庁の記者クラブのみなさん! 政治家のほうが「オープンにしよう」と言っている状況は、どう考えてもマズくないですか?
*
大臣側が「オープン化」を言っているのに、
それを阻もうとする「省庁の記者クラブ」。
いったいなぜ、何のために? という素朴な疑問がわきます。
大臣の言葉は、特定の人たちのためだけにあるのでは、もちろんありません。
*
ご意見募集