畠山理仁の「永田町記者会見日記」:バックナンバーへ

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フリーランスライター 畠山理仁の「永田町記者会見日記」~首相官邸への道~【第2回】

畠山理仁●はたけやま みちよし/1973年愛知県生まれ。早稲田大学在学中の1993年より週刊誌を中心に取材活動開始。1998年、フリーランスライターとして独立。興味テーマは政治家と選挙。米国大統領選、ロシア大統領選、台湾総統選など世界の選挙も取材。大手メディアが取り上げない独立系候補の活動を紹介した『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著・扶桑社刊)では取材・構成を担当した。 昨年9月18日、記者クラブ加盟社以外にも開放された外務大臣記者会見で、フリーの記者として日本で初めて質問。今年1月22日には、東京地検からの事情聴取直後に開かれた小沢一郎・民主党幹事長の記者会見を、iPhoneを使ってゲリラ的にインターネットで生中継し注目される。twitterでは、 @hatakezo で日々発信中。

2010年2月9日@総務省会見室

「全組織について、誰がどのように会見をやっているのか。1回調査を検討させてみたい」
(原口一博総務大臣)

 東京地検から二度にわたって事情聴取を受けたものの、2月4日に不起訴が決定した民主党・小沢一郎幹事長。この日の原口総務大臣の記者会見では、記者クラブ所属メディアから「小沢幹事長のさらなる説明責任」についての質問が飛んでいた。
 …でも、不起訴だよね? これまで新聞やテレビをにぎわした“検察のリークと思われる情報の洪水”は一体なんだったのか?
 しかも驚くべきことに、政治と並ぶもう一つの権力である東京地検は、司法記者クラブに加盟する記者以外には一切情報を提供していない。フリーの記者は会見場に入ることはおろか、どのような処分が決定されたかも「公式に」知ることはできないのだ。
 そこで私は「説明責任を放棄したとも思える検察の態度をどう思うか?」と原口大臣に質問。その答えが上記の発言だ。
 会見終了後、廊下に出た私は記者クラブ所属の記者が電話でこう話すのを聞いた。
「フリーの記者に質問されちゃって…。でも、この問題は後で広がるかもしれないから書いておいたほうがいい」
 結果的に、この原口大臣発言は複数の記者クラブ所属メディアが記事にしてました。

2010年2月12日@金融庁大臣室

「記者会見だって、私はここ(大臣室)だったら、記者だと言っている人たちに限定しているわけじゃない。誰でも来ていい。渋谷でうろうろして、シンナー吸ってヘラヘラしているような若者でもかまわないんだよ」
(亀井静香金融担当大臣)

 2月12日は、亀井大臣の記者会見より早い時間に原口総務大臣の記者会見が参議院内の食堂で予定されていた。私も参加しようと駆けつけたが、参議院の入り口で警備の人に突きつけられた答えは「入れません」。
 国会内に入るには、首から提げる写真入りの記者証と、記章と呼ばれるバッチの二つが揃っていないとダメなのだ。
 しかも記者証とバッチを入手するためには「国会記者会」という記者クラブを通す必要がある。私のようなフリーの雑誌記者が国会記者会に申請をするには雑誌協会の推薦も必要。現状ではかなりハードルが高い。
 そもそも、任意団体にすぎない記者クラブが推薦する人物を決めている現状について、会見のオープン化を進めてきた亀井大臣はどう考えているのか? そんな疑問を抱いた私の質問に対する大臣の回答が上記のもの。
 亀井大臣は「極端だ、と言われるかもしれないけど」と前置きした上で「もっとオープンにしたらいい」と答えた。その根底にあるのは、「当たり前ですよ、主権者なんだから」という、ごくごく当たり前の考え方だ。

2010年2月12日@金融庁大臣室

「国民のみなさんは、記者クラブ自体が、いわばカルテル組織だってことをよくわかっていらっしゃらない。そのことをご理解いただくためにも、カルテルの外にいるみなさんもしっかりやってください」
(大塚耕平内閣府副大臣)

 金融庁は記者クラブ向けの記者会見とは別に、大臣主催でフリーや雑誌記者向けの「もう一つの記者会見」を開いている。
 一日二回も会見を開く理由は簡単。「会見をオープンにしよう」という亀井大臣の提案を、記者クラブ側が突っぱねているからだ。
 この新しい試みを支えるのが、「もう一つの会見」で進行役を務める大塚副大臣。大塚副大臣は記者クラブ問題をきちんと認識している数少ない政治家だけに、大臣とのコンビネーションも絶妙だ。
 たとえば2月16日の会見では、オリンピックでの日本代表選手の服装問題について亀井大臣に質問が飛んだ。
「オレは言う資格ないよなぁ。いつもヘソ出してるとか、スネ毛が見えるとか言われてるんだから…」
 大臣が質問に答えながらワイシャツに手をかけると、副大臣は間髪入れずに「大臣、見せなくていいです(笑)」。さらに亀井大臣も「ヘソがきれいだから見せようかと思ったんだけど…」とポツリ。
 ちなみに亀井大臣がときどき締めているネクタイは、大塚副大臣がプレゼントしたもの。黄色地に緑色の小さな亀があしらわれている。

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テレビや新聞では、なぜか伝えられないこんな大臣の言葉と記者の質問。
なんだかものすごく「大臣室」が近い存在になってきました。
そして「主権者なんだから当たり前」を、
私たちの方が取り戻す時がやってきたのかも。
次回もお楽しみに!

畠山さんの「つぶやき」も読んでね!

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