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40歳からの機動戦士ガンダム【第3回】「ガンダムの戦場がリアルな理由」

 なんてこった。「GUNDAM BIG EXPO」に行けなかった。30周年の記念行事だったというのに…。もしマガジン9条の読者で、同イベントに行かれた方がいましたら、どんな様子だったのか、ぜひメールでお教えください。さ、気を取り直して、今回からはガンダムの物語に入っていきたいと思います。


まずは、全43話をコンパクトにまとめた
劇場版3部作から見るのも一つの方法

 約30年間、頑なにガンダムを拒否してきた私の、その重い腰をあげるきっかけを与えてくれたのは、あるバラエティ番組でした(文末参照)。今から約3年前のことですが、その番組を見て「とにかく、どんなものか、ガンダムを見てみよう」となったのです。しかし、「もし、つまらなかったら…」という不安は当然あるわけで、まずは、ガンダム全43話をコンパクトにまとめた劇場版3部作をレンタル店で借りてみました。

劇場版は次の3作。

機動戦士ガンダム
(1981年3月14日公開)
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機動戦士ガンダムII  哀・戦士編
(1981年7月11日公開)
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機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編
(1982年3月13日公開)
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 もうお分かりでしょうが、この3作を見て、戦時下の壮大な人間ドラマにすっかり魅了されてしまったわけです。特に、マガ9のスタッフの端くれとして、憲法9条や日本の安全保障について考える機会がそれなりにあった私は、「ガンダムって、こんな反戦平和の物語だったの!?」という素直な驚きを感じてしまったのでした。

 当然、次のステップはテレビ本編全43話を見ること。07年2月、私は、全43話を11枚のDVDに収録した『機動戦士ガンダム DVD-BOX1』『同2』を新宿ヨドバシカメラで購入。以降、ガンダムの世界にどっぷりと浸ることになったのです。

 劇場版から見るというのは、ある意味「邪道」かもしれませんが、ガンダムに気軽に触れてみることが、まずは第一歩だと思うので、あえて私はお勧めします。


戦場で真っ先に犠牲となる市民の姿が、
物語の1回目から描かれていく

 さて、先週、私はしつこいほどガンダムの基本設定や時代状況を説明しましたが、ガンダムをまだ見たことがないという方は、ここから先を読む前に、前回の復習をすることをお勧めします。スペース・コロニーって? サイドって? 地球連邦政府って? ジオン公国って? この辺の基礎知識について、少し思い起こしてみてください。

「スペース・コロニー」内部のイメージ。大雑把に言ってしまえば、生活するうえでは地球とほとんど変わらないほど、コロニー内にはありとあらゆるものがそろっている。

 ガンダムが初めて放送されたのは1979年4月7日。第1話「ガンダム大地に立つ」では、一民間人でしかない主人公の少年アムロ・レイ(15歳)が、地球連邦軍が開発した人型ロボット(注1)「ガンダム」の操縦士になるきっかけが描かれ、アムロの永遠のライバルとなるジオン軍のシャア少佐も登場します。第1話の時点で、地球連邦軍とジオン軍による戦争は8ヶ月が経過していて、歴史的に見れば戦争も後半に入っています。

(注1):正式の表記は「人型ロボット」ではなく「モビルスーツ」であることや、その理由などはいずれ説明しますが、当面は分かりやすさを優先して「人型ロボット」とあえて表記します。

 アムロ・レイは「サイド7」に住む15歳の少年。父親は連邦軍の兵器開発に関わる技術者で、その影響なのか、アムロ本人も機械いじりが大好きです。最初の登場シーンでは、白のランニングシャツにシマシマのパンツ姿で、朝食をとるのも忘れて機械いじりに熱中しています。

 それまでのいわゆる「ロボットアニメ」や「ヒーロー戦隊もの」などの主役の多くが、見た目はもちろん、その言動も「強さ」や「賢さ」をみなぎらせていたように私は記憶していただけに、このアムロの姿には正直言って違和感を覚えました。でも、そうした主人公像が、ガンダムの魅力を増すひとつの要因になっていることが、物語を追っていくうちに分かってきます。

 「ジオン公国」と名乗った「サイド3」が独立を勝ち取るために地球連邦政府に宣戦を布告。この戦争がガンダムの物語の軸だということは、すでに触れました。「サイド3」以外のサイドは、中立を宣言しているところもありますが、基本的には地球連邦傘下にあると言ってよいでしょう。

 アムロが暮らす「サイド7」に連邦軍の新型軍艦が入港するのですが、その軍艦を追ってジオン軍が「サイド7」に迫ったため、アムロを含む「サイド7」の住民たちは軍より避難命令を受けます。連邦軍の新型軍艦を尾行してきたジオン軍の人型ロボットが「サイド7」に侵入し、連邦軍への攻撃を開始。アムロたち一般市民が隠れる退避カプセルも危険な状態に陥ったため、そこを出ることになります。

 敵の攻撃下、街中を逃げ、さまよう住民たち。アムロのもとに友達の少女が駆け寄ってくると、彼女の後ろで爆弾が炸裂。次のシーンでは、それまで逃げ惑っていた多くの市民の死体が映し出されます。その中で、母親と祖父の死体に寄り添って泣き叫ぶ少女――。

 先日、30周年を記念した「ガンダム宇宙世紀大全」という番組がNHK−BSで約1週間にわたって放送されました。その第4夜(7月30日放送)では、原作・総監督を務めた「ガンダム生みの親」とも言うべき富野由悠季さんの過去の発言が紹介されましたが、「何を考えながらガンダムを作ったのか?」という問いに対して、こう答えています。

 「(当時)ロボットものというのは(中略)、しょせん異星人が出てくるとか、地球征服をする人が出てくるという基本的なパターンがあって、そのロボットを動かさなくちゃいけないという仕事をかなりやらされました。ですから自分が『ストーリー権』を握ったときには、やってみたいことがいっぱいあったわけです。(中略)例えば、戦闘があれば絶対に被害者がいるはず。(当時の)ロボットものというのはたえず、その被害者集団っていうのが見えないところで、あっけらかんと戦闘しているのがとても我慢がならなかったんです。だから例えば、(戦争が起きれば)難民っていうのがあるわけだし、それから戦場というものに遭遇してしまった家族がいたら、その物語というのがあるのではないかと」(1985年放送『ETV8』より。一部要約)

 まさに、その言葉どおり、戦闘の最中、恐怖におののき、逃げ惑い、真っ先に犠牲になる一般市民の姿がガンダムでは随所に描かれていきます。

 さて、そろそろ今回の紙幅が尽きそうですが、実は、今まで書いたことは第1話の約半分の話(話の順序は入り乱れていますが)。ここまで触れた場面だけでも、ガンダムにおいて戦争がリアルに描かれていることが理解していただけると思いますが、第1話で私が最も感心させられたのは別のシーンでした。軍隊(軍人)や戦争の本質を表しているかのようなそれらのシーンを見たとき、私はこの先ガンダムにハマっていくことを予感したといっても過言ではありません。次回はそのシーンについて触れていきたいと思います。

(氷高優)

私にガンダムへ一歩踏み込むきっかけを与えてくれたのは「アメトーーク」というバラエティ番組でした。この番組に登場した宮迫博之、土田晃之、品川祐ほかの「ガンダム芸人」たちによって、ガンダムの魅力を教えられたわけです。連載3回目を読んでみても「まったく興味なし」という方には、この「アメトーーク」のDVDをまず見ることをお薦めします。2006年11月9日放送の第1回「ガンダム芸人」、07年1月25日放送の第2回「ガンダム芸人VS越中詩郎芸人」、共にDVDで発売されています。仮に、ガンダムに興味が持てなくても、バラエティ番組として十分楽しめますので、一度ご覧になってみてください。

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