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2010-10-20up

B級記者どん・わんたろうが「ちょっと吼えてみました」

【第22回】

議員って
自分の給料を自分で決めるんだよ

 自分たちの給料を自分たちで決められる。しかも、その原資は強制力をもって集められた公金である。こんなに都合の良い職場、どう探したってほかにはない。

 どこって、議員さんの話である。給料(報酬)もボーナス(期末手当)も、金額は法律や条例で定められるが、それを議決するのは当の自分たちだ。国会議員には文書通信交通滞在費(月100万円)、地方議員の多くには政務調査費なるものまで支給される。

 神奈川県在住の知人が面白い記事を見せてくれた。朝日新聞の横浜版(9月29日付、10月1日付)で地方議員の報酬や政務調査費を調べている。記事の中味に主張を感じられないのが惜しまれるが、取り上げられたデータにはいろいろと考えさせられる。

 全国の市区町村で最高給とみられる横浜市議(定数92)の場合、一般議員の給料+ボーナスは年間約1600万円。加えて、政務調査費が1人あたり年660万円(こちらは課税対象外)。合わせて2260万円だ。どう考えたって少ないとは言えないでしょ、このご時世。サラリーマンの平均の5人分も貰っている計算である。

 議会への平均的な出席日数は、年間80日程度とのこと。それ以外にも「仕事」はあるんだろうけど、単純に割り算すると、日給28万2500円! 月給だって、この金額を稼ぐために苦労している人は数多いというのに。

 名古屋市議会の実態も、さして変わるまい。だから私は、河村たかし・名古屋市長の「年約1600万円の議員報酬の半減」という問題提起に賛同する。市議の皆さんに同情すべき余地があるとすれば、「自分の給料を自分で減らす」なんてハナから無理なことを求められている点だ。人間、誰だって自分がかわいいんだから。

 「半減」を4回も否決した市議会にしても、給料を月20万円減らすことを9月議会で決めている(といっても、月額79万円で、来年4月までの期間限定だが)。リコールという過激な手法が、いいきっかけになったのではないか。市民が大きな関心を持ったことと併せて、河村市長がこれだけの騒ぎにした意味は少なからずあったと言える。

 議員の報酬って、公務員と同じ水準で十分だと思う。議員さんたち、自分の給料は下げないくせに、公務員の給料はもっと下げろと騒いでいるんだから、ちょうど良いや。それに、私の各地での経験から、どう見たって仕事熱心な公務員のほうが、一般的な議員より、よほどしっかり働いているぜ。名古屋市議は「報酬が半分になると、やる気のある人が議員になれなくなる」なんて反対理由を述べているが、思い上がるのもいい加減にしてほしい。

 かつて、ある県議会を取材していた時、4年間の任期中、本会議での質問にほとんど立たないベテラン議員がざらにいた。「若手に華を持たせる」と悪びれずに語っていた。そういえば、議会事務局の職員に質問を書かせている議員もおられました。もはや過去の遺物だと信じたいが…。最近の取材実感としても、住民を代表して首長や執行部をチェックするという本来の役割を忘れ、どっちを向いているのか分からない議員、やたら威張る議員が相変わらず目につく。

 「民意無視」も気になる。10年ほど前になるが、愛媛県大洲市では有権者の53%、熊本県人吉市では49%が署名して、それぞれダム建設の是非を住民投票で問うてほしいと直接請求したところ、どちらも市議会にあっさり否決された。議会が住民投票や直接請求を嫌う傾向は、今もそんなに変わっていない。住民投票が多用されれば自分たちの存在意義がなくなっちゃうと、度量の小さな議員は心配するのだろうが、有権者の半数が求めていれば、もはや「間接民主制」は拒否する理由にならないですよ。

 議員報酬の話に戻せば、議員の数を減らしすぎると、多様な意見が反映しにくくなったり、首長へのチェックが甘くなったりする心配があるので、1人あたりの給料を大幅に下げて一定の人数を保つのがベターだと思う。残念ながら、議員の報酬がいきなり減ることはないだろうから、当面の課題は、自分たちの給料を自分たちが決める方式の改善だ。片山善博総務相は「議員の報酬や定数など、議会の問題を議会が決めるのは変だという人もいる。そういうものも住民投票の対象にするのは一つのアイデア」と語っている(9月29日付・朝日新聞朝刊)。期待をもって見守りたい。

 もちろん、国会議員には率先垂範を求める。民主党の参院選での公約は「国会議員経費の2割削減」である。くれぐれもお忘れなきよう。

 さんざん議員の悪口を書いてきたけれど、選んでいるのは私たちなんだよね。これは反省しなきゃいけない。そして、次の選挙で、よりマシな選択をしなければ。その材料を得るためにも、まずは身近な議会を傍聴することをお勧めします。議場での様子を見ているだけで、選挙の時には決して表に出ない、議員の一面を覗くことが出来ますよ。

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「自分たちの給料減額を自分たちで決める」って、
たしかになかなかハードルが高そう。
ともあれ、まずはそうした給与面だけでなく、
1人ひとりが議会や議員に対して、
「自分たちが選んだ」自覚を持つことが必要そうです。

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どん・わんたろうさんプロフィール

どん・わんたろう約20年間、現場一筋で幅広いジャンルを地道に取材し、「B級記者」を自認する。
派手なスクープや社内の出世には縁がないが、どんな原稿にも、きっちり気持ちを込めるのを身上にしている。関心のあるテーマは、憲法を中心に、基地問題や地方自治、冤罪など。
「犬になること」にあこがれ、ペンネームは仲良しだった犬の名にちなむ。「しごと」募集中。

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