080123up
東京の郊外、まだ近所に雑木林や畑が点在するような土地柄ですから、いろんな種類の鳥たちがやってきます。
なかでも面白いのは、インコです。
けっこう大きな、緑色のかなり派手な鳥です。体長は20~30センチほどでしょうか。どう見ても日本の固有種なんかじゃありません。ペットとして飼われていた南国産の鳥が逃げ出し、いつの間にか日本の気候に適応して繁殖し始めたのでしょう。
よく気をつけて見てみると、このインコ、けっこういろんなところに出没しているようです。近所の公園や墓地などでも見かけるのです。それなりに逞しいものです。この近所に、相当数が生息しているようです。
我が家には、たいてい数羽の群れでやってきます。ギーッギーッと、あまり鳴き声は可愛くない。けれど、やはり珍しいので、私たち夫婦のちょっとした自慢です。
好物は、ひまわりの種。でも、こいつがちょっと厄介です。うまく殻を割って中身だけを食べるのですが、その殻を餌台の周りにやたらと撒き散らす。掃除に手間がかかるのです。
そのほかにも、いろんな訪問者を楽しんでいます。
いちばん多いのがシジュウカラ。メジロも可愛い。それに、オナガ(こいつの声はギャアギャアうるさい)、ヒヨドリ(イーヨ、イーヨ、と鳴きます)、ムクドリ、ツグミ、ときにはセグロセキレイやカワラヒワなんて珍客もやってきます。もちろん、スズメさんたちは常連さん。見ていると、何時間でも飽きません。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざ(?)をご存知でしょう。
<風が吹くと砂ぼこりがひどく、そのため眼をやられて盲人が増える。盲人は三味線を弾くので、三味線に張る猫の皮が必要。 そこで猫が皮にされてしまって減るので、鼠が増える。鼠は桶をかじるので桶の需要が増え、桶屋が儲かる>
まあ、なんとも回りくどいリクツ。だから、なんだかよくわけの分からないヘリクツをこう表現するのです。
「あ、このヘリクツにそっくりだな」と思ってしまったのが、最近、政府首脳がしきりに言い立てる“あるリクツ”です。
ガソリンの暫定税率について、町村官房長官や伊吹自民党幹事長は、次のように言います。
「ガソリン税は、いまの水準に据え置くべきだ。もし、いまの税率を廃止してガソリンの値段を安くすると、消費者はどんどんガソリンを使って車を乗り回す。すると、温暖化の原因になる二酸化炭素をいま以上に排出することになる。それが更なる地球の温暖化につながり、ひいては環境破壊の原因となる。したがって、ガソリンの値段は高くしておくべきだ」
どうですか?
まったく“桶屋理論”と同じでしょ?
いままで環境問題については不熱心だった政治家の方々が、突然、環境保護派に大変身。呆れてしまいます。
こんなマヤカシのリクツを並べ立てるのは、むろん、業界癒着の典型例である“道路工事”をこれからもどしどし行って、そこからのオイシイ利益にあずかろう、という政治家や官僚たちのさもしい魂胆であることは間違いありません。
土建業者からの政治献金や裏金をあてにする政治家。天下り先の確保のために、道路行政にまつわる様々な機構や組織をつくり続ける必要のある官僚たち。この両者が手を結んででっち上げた、なんともひどい“屁理屈”です。
(1)だいたい、この「暫定税率」というやつが、34年間にもわたって、続いているということがおかしい。
(「広辞苑」によれば、「暫定」とは、「本式に決定せず、しばらくそれと定めること。臨時の措置」とされています)。臨時の措置が、見直しもされずに30年以上も続いているのです。
この法律は、正式には「揮発油税」といい、1957年に制定されたもの。そこへ、道路をもっとたくさん造りたい田中角栄元首相が「列島改造論」を打ち出し、“暫定的に”税率を引き上げたのが、1973年でした。
これが34年もの間、9回にわたって“暫定的に”引き伸ばされてきたのです。しかし、この暫定措置は、08年3月31日で期限が切れます。つまり、延長されなければ、ガソリンの値段に上乗せされている現在の“税金”がなくなり、その分(リッターあたり約25円)安くなる、というわけです。
そろそろ「暫定」を見直す時期でしょう。
(2)「ガソリンを安くすると、ガソリンの消費が増える」と政府は言いますが、思い出してみてください。つい半年ほど前までは、リッター120円前後だったではありませんか。そのころは何も言わず、これだけガソリンの値段が高騰しているのに、この高値をそのまま維持するべきだ、というのはおかしい。
元の値段にようやく戻るだけのことなのです。つまり、消費が半年前の水準に戻るだけのこと。それを、急にガソリン消費が増える、というのはどう考えてもマヤカシです。そんな統計があるのか、根拠を示すべきです。
(3)「東京などでは、開かずの踏み切りや渋滞道路がまだたくさんある。その解消のために、どうしても道路財源としてのガソリン税は必要だ」と、政治家たちは言います。
しかし、東京のためというのなら、やはり地方切り捨てになるではないか。
そう切り返されると、政治家たちはすぐに「いや、地方の道路整備にももちろん、膨大な財源が必要だから、ガソリン税を廃止するわけにはいかない」と、今度は突然、地方重視に早変わりします。まことに、政治家という種族はたくさんの舌をお持ちです。
(4)さてそれでは、小泉政権で掲げた“道路行政改革”のスローガンはどこへ消えたのか?
あの時、全国の道路網を見直し、必要な高速道路は約9千キロとし、それまでの約1万4千キロという案を見直すことにしたはずです。それがいつの間にか、1万4千キロが復活してしまっています。そりゃあ、財源も必要でしょう。
あの道路行政見直しも、自民党の大きな公約だったはず。これもまた「あれは、公約というほどのものだったかねえ」ととぼけるんですか、福田さん?
こうして見てくると、このガソリン暫定税率の延長は、まったくの旧い自民党の道路族の復活と、国土交通省の官僚たちの思い通りだということが分かってきます。
凄まじいガソリンの値段の高騰への、国民の悲鳴など、どこ吹く風です。
地方振興策と道路行政を結び付けてはいけません。道路をつくり続けることが、まるで地方を活性化させる切り札のようなことを言う連中の懐が、道路に予算が付くたびに温かくなる。そんなことを許していてはならないのです。
道路財源は、実際は使いきれずに、かなり膨大な金額が余って繰り越されているといいます。
なぜそこをきちんと追求し、不透明な道路財源の実態を明らかにしようとしないのか。お金が余っているならば、なぜそれ以上の税金が必要なのか。
それらの情報を国民の前に開示して、その上で、あとどれだけの道路を造るべきかを議論するのが、筋と言うものではないでしょうか。
それは、与野党を問わずに言えることです。
(鈴木 耕)
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