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デスク日誌(19)

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構造腐敗

王様は裸だ

  安倍改造内閣が、ひどいことになっています。

 内閣改造でご祝儀相場、少しだけ上昇気配を見せた内閣支持率だったのですが、これでまたも大転落することは間違いありません。

 またしても、遠藤武彦農林水産大臣がスキャンダル辞任です。8月27日に任命されて、9月3日に辞任。たった8日間でした。

 辞任とはいっていますが、参院での与野党逆転に伴う自民党の国会対策上の措置です。自発的な辞任などではなく、クビ、すなわち解任であることは間違いありません。それも安倍首相の意志とは無関係に、与謝野官房長官と麻生幹事長が2人で決めた、ということのようです。安倍首相、自分の内閣に対する統率力さえ、すでに失っているのです。実質的には「麻生・与謝野内閣」であると、永田町では言われています。

 とうとう「王様は裸」になってしまった。

人材枯渇の政権党

 それにしても、ナントカ還元水大臣。バンソーコー大臣。そして今度の、なりたくなかった大臣。こうも素晴らしい方たちが続く自民党の人材豊富ぶりには、ほとほと感心するしかありません。

 先週のこのコラムに登場してくれたジャーナリスト氏の情報が、確度のとても高いものだったことが、改めてよく分かりました。それにしても、ジャーナリストたちが改造後たった数日で掴んだ情報です。首相官邸は1ヵ月以上もかけてあの恥ずかしい「身体検査」を行ったというのに、そんな情報すら事前に入手できなかったのでしょうか。

 ことに、今回の遠藤大臣の場合、公金の不正受給が会計検査院から3年も前に指摘されていたのに、それを放置していたという杜撰さです。すでに明らかになっていた事実です。官邸は、そんなことさえ掴めなかった----。

 もし、知っていたのに「まあ、このぐらいなら問題にはならないだろう」とタカをくくっていたとしたら、その危機管理能力の低さには呆れるしかありません。

 洩らしてはいけない情報はどんどん洩らしてしまう(防衛省)くせに、知っておかなければならない事柄を押さえておくこともできない(首相官邸)とあっては、とてもこの国を任せておけるような政府ではないと、言わざるを得ません。

 安倍内閣はレームダック化しています。ほとんどまともな政治家を起用することができなくなっています。まともな政治家が、自民党にはもはや枯渇している、という悲しい現実もあります。

 大臣に登用するには、政策面など二の次。まず身辺がキレイかどうかを洗わなければいけない。その結果、まともな政策立案能力などないけれど、とりあえずスキャンダルはなさそう、という人物しか大臣にはなれないという、不思議な矛盾にぶちあたったのです。

 なぜ、そういうバカバカしいことになったのか。それは、長年の自民党一党支配の政治が、政治機構を泥まみれにしてしまったからでしょう。

マネーロンダリング(資金洗浄)

 例えば、事務所や秘書の問題。

 自民党議員の多くは、知られているように2世3世議員たちです。すなわち、地盤という父親(親族)の出身地に根ざした後援会をまとめ上げます。

 それを自民党の各地方支部という名前にかさ上げして、政策など不要な選挙対策構造を作ってしまったのです。

 「ナントカ先生の息子だから応援する。親の代からの支持者だからな」というわけです。そこに、政策や思想の入り込む余地などありません。

 だから、議員であり続けるためには、政策も思想も必要ない。とにかく後援会や地方組織を維持し続けることが最優先されます。そうするために、各議員は必ず「地元事務所」なるものを構え、そこに多くの秘書をはりつける必要が生じるのです。

 なにしろ「選挙で落ちてしまえばただの人」です。どうあっても議員バッチがほしい。

 多くの自民党議員の場合、地方事務所に詰めている秘書と東京に常駐の秘書を合わせて、平均して25~30名ほどの秘書を抱えていると言われています。お金がかかるわけです。

 その費用をまかなうために、各議員は多くの政治団体を作り、かき集めた金をそこに回したり振り分けたりという操作をすることで、膨大な資金を捻出しているわけです。人によっては、30~40もの政治団体を傘下にしている例もあるほどです。「○○政治経済研究所」とか「21世紀××政経懇話会」などという、よくわけの分からない名称の団体のほとんどは、このような議員たちの政治資金の隠れ蓑になっていると考えて間違いありません。

 事務所費の架空計上も大きな問題です。本来なら無料であるはずの議員会館内の事務所の光熱水費などを適当に付け替えて、金の使い道を分からなくする。言ってみれば、黒い金の「マネーロン ダリング(資金洗浄)」、つまり、犯罪集団(ヤクザやマフィア)がよく使う手口です。

 国会議員の方々が、ヤクザまがいの手法を駆使している。

 松岡元農水相、赤城元農水相、そしていま問題になっている伊吹文科相などのケースが記憶に新しいはずです。

 同じ領収書のコピーをとって、その複数の政治団体に回す、というやり口もありました。同じ領収書のコピーが5カ所の政治団体で使われていた、というのが自民党を離党せざるを得なくなった玉沢徳一郎議員(元農水相、岩手)のケースです。

 また坂本由紀子外務政務官も、なったばかりの政務官を同じ疑惑で辞任しました。彼女も、政務官在位短時間記録更新です。

「領収書偽造」という犯罪

 しかし、みなさん、おかしいとは思いませんか?

 私には、「政治資金収支報告書」が、コピーの領収書の添付でかまわない、ということが信じられません。しかも、玉沢議員らの許しがたい点は、コピーの日付や宛先だけを書き換えて「偽造」していることです。「有印私文書偽造」、これは明らかに「犯罪」です。国会議員の方々は、平然と犯罪をおかしているということになります。

 もう少し厳しく言いましょう。国会議員というのは「犯罪者集団」です。少なくとも、多くの犯罪者を抱えた集団であることは否定できません。

 私の長年のサラリーマン生活でも、コピー領収書でOKなんてことは一度だってありませんでした。そんなことがまかり通る会社があるならば、教えてほしいものです。だいたい、コピーなら何万円だって何百万円だって領収書は自在に作れるじゃありませんか。

 そんなデタラメな法律が通用している世界、それが政界です。腐敗しないわけがない。

 問題を指摘された議員が、「そんな小さなことは私は知らなかった。すべて秘書に任せてある」と言い訳するのも、ある意味ではもっともなことです。30団体の会計報告書にすべて目を通す、なんてことは不可能。だいたい、自分がいくつの団体に関連しているのか、すべてを把握している自民党議員は少ないのではないでしょうか。

 (むろん、すべての議員たちが同様のことをしているわけではありません。民主党やその他の政党の議員でも、同じように多数の政治団体や秘書を抱えている人は多いようですが、公明党、社民党や共産党議員の場合、ほとんどが数ヵ所のようです)。

 各政党には、その所属議員数に応じて、国から政党助成金という公金(私たちの税金)を支給されています。それなのに、なお膨大な資金を必要とする、という現在の政治の仕組みこそがおかしい、間違っているのです。(共産党だけは、政党助成金の支給を拒否しています。念の為)。

 もし、この助成金制度をこれからも存続させるのであれば、一切の政治献金や企業献金を禁止しなければなりません。

 それができないならば、せめてひとりの議員に関連する政治団体は一つだけ、また議員事務所は東京(議員会館)と地元の2ヵ所だけ、というキツイ縛りをかけなければならないと思うのですが。

(小和田 志郎)

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