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2010-10-20up
Kanataの「コスタリカ通信」
#016
自分が「外国人」になって感じたこと
コスタリカで開催されたフェンシング全米大会。 初めて生でフェンシングを観たけれど、すごい迫力だった。やっぱりキューバの選手はとても強い。
コスタリカの街を歩いていると、1日に1度は必ず「china」や「chinita」と声をかけられます。どちらも「中国人」という意味で、彼らにとってアジア人はみんな中国人のようなもので、見分けがつかないようです。これは、多くの日本人がニカラグア人とコスタリカ人を見分けられないのと同じことだと思います。声をかける人の大半はおじさんたちで、愛がこもっている時もあれば、明らかに嘲笑している時もあります。何も言わないで、こちらを見て笑っている人もいます。わたしの経験上では嘲笑する人は高校生男子に多く、わざと靴を踏まれたこともありました。
扇子のようなヤシと夕月。
そういった態度や行動に対して、もちろんいい気持ちはしませんが、違いに対して素直に反応してしまうのかなと思うときもあります。「どんな肌の色をしていたって同じ人間だ」というのが表面上だけ常識になっていて、外国人を見ても顔色ひとつ変えないというのも少し不自然でないのかな、とも思います。日本人の感覚としては、もし道で外国人とすれ違って驚いたとしても、それを表情に出したり、じろじろ見たりするのは失礼だと考えると思います。わたし自身も、日本にいた時には極力反応しないようにしていたような気がします。しかし、こちらの人々は「肌の色が違う、眼が細いから中国人だ!」と思い、思わず声に出してしまう。そんな感じなのかもしれません。
リモンのマンサニージョ海岸で自転車に乗る子どもたち。この地域を舞台にして、環境問題に取り組んだ女性の小説が書かれていて、高校生の必読書らしい。
最近はそう言われることにも慣れてきました。もちろん、その人とじっくり会話をする時は、「なぜ中国と日本は同じ言語を使っていないのか?」とか「韓国語も中国語も分かるのか?」という質問に対して、丁寧に説明をしますが、嘲笑ではない「china」や「chinita」という呼びかけにはイラっとしなくなりました。
また、「『china』じゃなくて『japonesa』(日本人)だ!」と返すと大抵相手の態度は良い方に少し変わります。道路で車を見ていても半分は日本車なのでは? と思ってしまうほどの普及率だし、カメラやパソコンなども日本製がとても多いです。彼らにとって、日本は技術が高いというイメージがとても強いようです。
差別というものを考えるときに、彼らがわたしのことを「china」と呼ぶ時に何を思うのか、ということと同時に、わたし自身がそれを訂正した時の彼らの態度の変化を見て、心の底ではどう感じているのか、を考えることが大切になってくると思います。
リモンのプエルト・ビエホからマンサニージョという海辺まで自転車に乗っていた時にみつけたハイビスカス。コーラルハイビスカスという名前のようだが、線香花火みたいでかわいいかった。
そこに優越感や差別意識はないと言えるのか。「みんな同じ人間です」というのが世界の共通認識になって、表面上では差別がなくなったかもしれませんが、そういった人の心の底にある考えにじっくり向き合わなければ、本当の意味で差別を考えたことにはならないのではないかと思います。
8月にカウィータのナマケモノ保護センターを訪れた際に、外国人としてこんな経験もしました。カウィータはパナマとの国境が近く不法入国者が多いため、ナマケモノ保護センターから街に行くまでのバスで、ある場所を通る度に警察にパスポートチェックをされました。普段からもちろんパスポートのコピーはつねに持ち歩いているのですが、サンホセにいる間は一度も警察にそれを見せるように言われたことはありませんでした。
9月15日の独立記念日の前夜。子どもたちは伝統衣装を着て、トーチを持って集まる。
自分の名前と写真のページのコピーだけで、入国スタンプの捺してあるページのコピーを持っていなかったわたしは、「いつ入国したのか証明できないから、認められない」と言われました。パスポートはサンホセの家にあったので、必死でそれを説明しましたが、なかなか分かってもらえず。渋々許してもらえたのですが、街から帰る度にそれを繰り返したので、街に行くのがとても憂鬱でした。そのうちの1回はかなり強く「だめだ」と言われて、もう戻れないかなと本気で思ったこともありました。何も悪いことをしていないのに犯罪者になったような気分を味わったのは、生まれて初めてのことでした。以前、在日朝鮮人の方がうっかり外国人登録証を家に忘れてしまった日に、どれだけビクビクしてその日を過ごしたのかということについて記述された本を読んだことがありました。わたしの感じた恐怖とは比べ物にならないと思いますが、日本にいる「外国人」の方々がどのようなことを感じているのかにとても興味がわきました。そう考えれば、もう二度と経験したくありませんが、よい経験ができたのかもしれません。
国立劇場にも独立記念日のために国旗がつけられた。コスタリカ中が国旗だらけだった。これが終わったらすぐ、クリスマス商戦がはじまった。
日本にいるとなかなか見えてこない、自分自身が日本人であるということ、「外国人」と日本人との関わりというものが、コスタリカにいることで自分の感覚として見えてくるような気がします。この感覚をここでのものだけにしないで、リアルに日本の抱える問題を考えていくことにつなげていきたいと思います。
*
道を歩いていると、
あちこちから「China(Chino)」の声が飛んでくる…
中南米を旅したことのある方なら、
そんな体験を一度はしているのでは?
自分が「外国人」として遇される立場になることで、
見えてくるものはいろいろありそうです。
KANATAさんプロフィール
Kanata 大学を休学して2010年2月から1年の予定でコスタリカに滞在。日本の大学では国際学部に所属し、戦後日本の国際関係を中心に勉強をしている。大学の有志と憲法9条を考えるフリーペーパー「Piece of peace」を作成し3000部配布した。
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