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2010-09-15up

Kanataの「コスタリカ通信」

#014

小さな共同体、シレンシオ村での滞在

 1週間という短い時間でしたが、2年前に訪れたことのあるシレンシオ村に行ってきました。この村はコスタリカ南部のプンタレナス市に位置しています。1973年に共同体として誕生したこの村はプロジェクトがおよそ10あり、それぞれの収入を一度集めてから、分配するという形式を取っているため貧富の差はほとんどないそうです。プロジェクトは、村の面積の半分近くを占めているパームヤシの収穫、パームヤシの実を運ぶための道路整備、植林、観光、牧場、無農薬農園、野生動物のレスキューセンターなどです。人口は500人ほどで、ほとんどの人が顔見知りという状況です。この村は1年ほど前までJICAの青年海外協力隊隊員の方々が代々駐在して、プロジェクトの支援を行っていた村でもあり、2年前の訪問ではわたしもお世話になりました。

ホームステイしたお家。2年前と同じ家族と過ごしたのだが、村の中で引越していた。この村に警察は存在しないが、家の周りも過剰な防犯はしていない。

 また、10年前からボランティアの受け入れを行っていて、2年前の訪問のときも今回も、牧場や無農薬農園でお手伝いをさせてもらいました。そのため、村人たちは外国人と接することに慣れていて、あいさつをしたり話したりするのもとても気持ちがいいものでした。2年前の訪問では、村一番の長老の95歳の誕生日会に行き、多くの村人たちが集まりお祝いしていた姿がとても印象に残っています。そして、みんなが知り合いという空間の心地よさを感じ、一人ひとりがここに生きているということが、それだけでとても尊いものなのだということを実感しました。また、この村でホームステイをした際に、ほとんどスペイン語が話せなかったためにとても悔しい思いをしたことが、スペイン語を学ぶ強い動機になりました。

ボランティアの人たちと一緒に公園のベンチなどを掃除して、色を塗り替えた。ボランティアの多くはヨーロッパからで、わたしの滞在期間はスペイン、フランス、オランダ、スイス、ドイツからの人たちだった。

 今回具体的にやった仕事は、牧場での乳搾りやサトウキビの収穫、無農薬農園でのコリアンダーの収穫や堆肥のための生ごみ集め、野生動物のレスキューセンターでの檻の掃除やえさやり、公園のベンチの色塗りなどでした。
 2年前に感じたように、みんなが知り合いの心地よさは今回も感じました。いつもみんな会っているような状況なので、村人同士のあいさつはそれぞれ独特で、口笛だったりもしました。赤ちゃんが家族以外のみんなから可愛がられ、愛されている姿もほほえましかったです。2年前との変化は、97歳の長老が2カ月前に亡くなっていたこと、そしてホームステイした家族に新しい赤ちゃんが生まれていたことなどでした。当たり前のことかもしれませんが、生と死がめぐっていることを感じました。
 今回、村人たちと話してみて驚いたことは、子どもはいるけど結婚をしていないカップルが多くいるということでした。この話は先日、ナマケモノ保護施設のあるカウィータに行ったときにも聞いてはいたのですが、子どもができたら結婚というイメージを持っているので、あまりピンときていませんでした。彼らはunion libre(直訳すると自由結婚)と呼ばれていますが、コスタリカでは3年以上一緒に暮したら夫として、妻としての権利が発生するという法律があります。もし、子どもがいたとしたら子どもの養育費を払わなければならないということです。でも、わたしのホームステイ先のお父さんはカトリック教徒で信仰心が強く、union libreの話をすると「神の前ではきちんとした夫婦であるべきだ」と言っていました。また、他の村人も「彼らは責任を取りたくないだけなんだ」と言っていました。

村にある小学校。午前中は低学年、午後は高学年が通っている。教室は2つか3つと小さく、ほとんどの先生が村の外からやってくる。

 小さな社会主義のようなこの村の仕組みでは、一番上に39人からなる総合議会が位置し、その下に教育委員会、運営審議会、監視委員会、さらにその下にそれぞれのプロジェクトの長が位置しています。この仕組みの中で、村人たちの職は決定されるため、職業選択の自由はありません。それぞれの仕事によっては、日曜日も働く人もいます。日曜も含め、毎朝4時半に起きて働かなくてはならない牧場での仕事に「つらい」とこぼしていた同い年の男性もいました。村人に「この村での問題は何か?」と尋ねると、娯楽が少ない中で、アルコールや大麻が問題になっているという答えが返ってきました。これらのやりとりから、仕事が大変なのはどこにいても何をやっても同じだと思いますが、自分がどういう生き方をするのかということについてとても考えさせられました。また、この村の雰囲気がわたしにはとても心地よく感じられましたが、ずっと暮らしていくなかでみんなが知り合いという空間の中には、心地よさとともにしんどさもあるのだろうと思います。それでも、みんなが助け合ってのんびりと生きているこの村はとても魅力的で、多くの人と出会えたことで、あと2回くらいは行きたいなと感じた1週間でした。

無農薬農園のパパイヤ畑。100%無農薬の堆肥をつくるために、コスタリカ大学とも協力をして開発をしている。

子どものためのおまつり。音楽を流して、お母さんたちが料理をふるまって、子どもたちは遊んでいる。コスタリカの子どもの日は9月9日。

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職業選択の自由はなく、娯楽も少ないけれど、
誰もが「支えあい」の中で暮らしていくことができる。
それを「窮屈」と感じるのか、「温かい」と取るのか。
小さな社会主義共同体の姿からは、いろんなことを考えさせられます。

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KANATAさんプロフィール

Kanata 大学を休学して2010年2月から1年の予定でコスタリカに滞在。日本の大学では国際学部に所属し、戦後日本の国際関係を中心に勉強をしている。大学の有志と憲法9条を考えるフリーペーパー「Piece of peace」を作成し3000部配布した。
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