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2010-09-01up

Kanataの「コスタリカ通信」

#013

ナマケモノに会ってきました!

クレソンの一種をむしゃむしゃと食べるフタユビナマケモノたち。

 カリブ海側のリモン市カウィータというところにある、ナマケモノを保護する施設に2週間行ってきました。ここはAviarios del Caribeという場所で、毎日ひっきりなしに世界各国から観光客がやってきます。つねにいるボランティア8人は、92匹のフタユビナマケモノと15匹のミツユビナマケモノのケージの掃除とえさやりとその準備をひたすら毎日して、たまにギフトショップで品数を数えたりする仕事も行います。そのほかに、たくさん保護されているナマケモノの赤ちゃんをケージから出して、木に登る練習をさせたり、一緒に森の中を歩いたりするというのも毎日の仕事でした。

入口の看板。外国人観光客が多く、またオーナーの女性がアメリカ人(夫はコスタリカ人)なこともあり、施設内も英語表記が多い。

 ナマケモノは主に前足にある爪の数によって、フタユビナマケモノとミツユビナマケモノの2種類に分類されています。フタユビナマケモノは犬歯と臼歯があるので、果物や“花の”つぼみなど雑食ですが、ミツユビナマケモノは臼歯しか持っていないので、木の葉を食します。1日に16時間眠って、寿命は40歳というデータもあるそうですが、不確かでまだまだ謎に包まれた生物のようです。ホンジュラスからブラジルにかけて、平地から3000メートルまでの広い範囲に生息しているそうです。
 驚いたのは、ナマケモノには耳があるということ(写真を見てイメージしていたナマケモノには耳がなかったので)。そして必要な水分は、すべて食べ物から摂取するので水を飲まないということでした。そのため、与える餌はつねに水分が多いもので、木の葉は洗って、濡らして、ニンジンやサツマイモは千切りにして茹でて与えていました。

この施設がつくられることになったきっかけのミツユビナマケモノ、バターカップ。18歳。
彼女だけがケージの中ではなく、この天井からぶらさがったかごに乗っている。

 この施設に連れてこられるナマケモノたちは、人間の子どもに殴られて怪我を負ってしまったり、車にひかれてしまったり、また、電柱を木と思って登って電線に触れたことでやけどを負ってしまったり、木から落ちて身体に障害が残ってしまったりした大人のナマケモノたち。それに加え、ナマケモノの母親が、森林伐採による食糧減少のため育児放棄をしてしまったり、怪我をして育てられなくなってしまった孤児のナマケモノたちでした。ナマケモノの赤ちゃんは生まれて一年間はお母さんのおなかにくっついて、様々な生きる知恵を学ばなければいけないので、赤ちゃんの時点で孤児になってしまったナマケモノは残念ながら自然に還すことが難しいのが現状のようです。

生後2年2カ月のミツユビナマケモノのレイラと。すべてのナマケモノに名前が付いている。

 毎日多くの観光客がやってきて、彼らが払うツアーの料金(25USドル)やボランティアが毎日払う滞在費(30USドル)でこの保護施設の運営が行われている、というのは分かるのですが、ナマケモノを保護しなければならないという状況の原因には、コスタリカにおける動物に対する意識の低さがあります。例えばナマケモノが人間によって傷つけられているという現状もほとんど理解されていないし、森林伐採や農薬散布の問題も深刻です。その意味で、自国内においての働きかけがもっとなければいけないのではないか、と思いました。
 コスタリカでは、全国でナマケモノを見ることができるので、興味がない人がほとんどで、さらにこの施設で行っているツアーはコスタリカ人にはとても高くて、年間でも一人か二人しかやってこないそうです。しかし、やってくる観光客の住む国にはほとんどナマケモノは生息しておらず、ナマケモノの現状を知ったとしても直接何か行動を起こすというのはとても難しいことではないかと思いました。

電線に触れてしまったことで、やけどを負って、片腕をなくしたミツユビナマケモノ。
誰もがもう生きられないと思っていたのに、元気を取り戻したので、その強さからTOYOTAと名づけられた。

 また、わたしが滞在している間に、カウィータ国立公園で木から落ちて動けなくなっているところを発見されて運ばれてきたナマケモノ親子がいたのですが、お母さんの片腕の神経が切れてしまっているので、赤ちゃんを今後育てていくことはできないし、お母さんも自然に還すことはできないということでした。電線に触れてしまったり、車にひかれたことで怪我を負ったナマケモノは人間が責任を持って保護しなければならないと思いますが、こうして木から落ちて怪我をしてしまった場合、それで他の動物に食べられてしまったり、そこで力尽きてしまったとしてもそれが自然の摂理なのではないか、とわたしは思ってしまいました。でも、他のボランティアは「私がもし同じ状況でナマケモノを発見して、この施設の存在を知っていたら同じことをしていたと思う」と言っていたし、もしかしたらそのナマケモノが木から落ちた原因をつくったのは人間であるかもしれないし、どこまでが自然の摂理でどこからが人間のやりすぎになってしまうのかを考えるのは難しいことだと感じました。

フタユビナマケモノの赤ちゃん。ときどき耳が見える。

 リモン市にはバナナ農園が多く、それを首都に運ぶ鉄道をつくるために過去にジャマイカから移民がやってきたため、今でも黒人が多く住む地域です。また、気候もサンホセとはまったく違って、雨はほとんどふらず毎日とても蒸し暑かったです。印象的だったのは、サンホセでは親しい女性同士や男女が挨拶をするときは、ほっぺたをくっつけるのですが、リモンではこれをほとんど見かけませんでした。暑いからなのかもしれませんが、一つの国でもこうした違いがあるということを、現地に身を置いて地元の人と話すことで感じられた2週間でした。

高さは3メートルくらい、面積は一畳くらいのケージにナマケモノがいる。大人のナマケモノには1日2回えさを与えている。ゆでたニンジンとサツマイモ、ふかしたドッグフードを食べるフタユビナマケモノ。

カウィータ国立公園の海。野生のサルやナマケモノが生息している。わたしたちは、ハナグマに遭遇した。

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豊かな自然環境に恵まれ、
「エコツアー」の先進国ともされるコスタリカですが、
それだけに自然破壊への危機感が薄いという一面もあるのでしょうか?
「人間」と「自然」のかかわり方について、改めて考えさせられます。

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KANATAさんプロフィール

Kanata 大学を休学して2010年2月から1年の予定でコスタリカに滞在。日本の大学では国際学部に所属し、戦後日本の国際関係を中心に勉強をしている。大学の有志と憲法9条を考えるフリーペーパー「Piece of peace」を作成し3000部配布した。
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