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2010-08-11up
Kanataの「コスタリカ通信」
#012
コスタリカの国旗と国歌
コスタリカで街を歩いていると気付くのが、国旗の多さです。公的な機関だけではなく、街中のいたるところにあります。ロータリーの真ん中、保育園の小さな庭、政府機関の建物の前、バスや電車の柄、公園の遊具の柄。コスタリカの国旗はフランスの旗を二つつなげたとも言われています。理由は分かりませんが、タイの国旗ととても似ているなともいつも思います。元・コスタリカ大学教授のマリア・アモレッティさんによると、赤は労働、白は平和、青は空そしてモダニズム、つまり理想を表しているそうです。
大きなロータリーの真ん中にも国旗。
現在上海で行われている万博で、コスタリカは「平和と環境の国」として自国を紹介しています。コスタリカ人の友達や先生でも「軍隊がないんですよね」という話をすると、「だから平和がいっぱいなんだよ」と答える人は少なくありません。軍隊がないということはコスタリカ人にとって誇りのようです。
そして、彼らがコスタリカを平和だと思う大きな要素として、国歌も存在しています。この国歌の成り立ちはとても興味深く、もともと曲だけが1852年から存在していたのですが、他国の調査団の人々に「歌詞をつくるべきだ」と言われ、あわてて政府はコンクールをして、歌詞を募集したそうです。
ここで当選したのは、さらに興味深いことにアナーキストの男性の歌詞でした。1903年当時、上流階級と田舎で暮らす国民との格差はとても大きく、そのことに疑問を感じていた彼は、祖国に語りかけ、労働の尊さを訴える歌詞を書きました。わたしは、政府がアナーキストの歌詞を選んだことに驚きましたが、コスタリカ人の先生は他国に言われたからといって歌詞をつくったことに驚いたと言っていました。
保育園のお庭にも国旗。
その歌詞がこちらです。
気高い祖国よ、
きみの美しい国旗は
きみの命を表わす
きみの澄んだ青空の下
白く純粋な平和が憩う
粘り強い戦いの中で、きみの息子である素朴な農民たちは
汗を流し、多くのものを生み出し、
永遠の威信と尊敬、名誉を勝ち取った
おお、やさしい祖国よ!
おお、母の愛のような祖国よ!
誰かがきみの栄光を汚そうとするとき、きみは見るだろう
勇敢で雄々しい国民が、粗末な工具を武器に持ちかえるのを
おお、祖国よ!
きみの豊かな大地は
心地よい外套と生活の糧を与えてくれる
きみの澄んだ青空の下
労働と平和が永遠にありつづけるだろう!
マリア・アモレッティさんの研究によると、この国歌はお金のための労働ではなく、祖国のための労働を促していて、それは男性だけではなく女性の労働も含み、その労働が平和を導くというメッセージを持っているそうです。
この国歌はスポーツの試合前、毎朝7時のラジオ番組などで流されるとともに、小学校で歌われたり、卒業式や国家のセレモニーなどでも歌われています。
小さな公園にあったブランコの柄も国旗。
国歌が結果的に国民にナショナリズムを強要することになったとしても、やはり国歌のメッセージというものはとても重要です。とすれば、日本を考えた時、それはどうなのでしょうか? 国旗国歌にまつわる、さまざまな思いや歴史が、日本だけでなく、近隣諸国に暮らす人たちの間にも、しっかり と刻まれていることを、大学の授業や台湾へのフィールドワークを通じて学びました。多くの中南米諸国に囲まれて内陸国であるという地理関係や国民性によるところはもちろんあるし、それがそのまま国家の行動への注目の欠如になってはいけないと思いますが、国旗や祖国に誇りを持っているという姿はやはり素直にうらやまし いなと感じてしまいます。
国家のシンボルには、その国歌の今まで、現在、そしてこれからの行いのすべてが刻まれていくのだと思います。コスタリカの国旗や国歌から、日本の国旗や国歌に刻まれているものを受け入れ、さらにそこに誇りと思えるようなこれからを刻んでいかなければならないのだと考えさせられました。
電車の柄も国旗。
KANATAさんプロフィール
Kanata 大学を休学して2010年2月から1年の予定でコスタリカに滞在。日本の大学では国際学部に所属し、戦後日本の国際関係を中心に勉強をしている。大学の有志と憲法9条を考えるフリーペーパー「Piece of peace」を作成し3000部配布した。
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