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2010-07-07up
Kanataの「コスタリカ通信」
#010
社会主義の国・キューバへ
先日キューバに行ってきました。3月にグアテマラに旅行に行ったときと同じく、ビザの関係で一度コスタリカを出国しなくてはいけなかったのですが、その行き先をキューバに決めたのは、自分にとって未知の社会主義国家を見てみたいという気持ちを持ったからでした。
結局、5日間の日程では郊外に出ることができず、首都ハバナ(スペイン語ではLa Habana ラ・アバーナ)のハバナ・ビエハと呼ばれる旧市街だけを見て回る旅行になりました。郊外に出たり、新市街にも行ってみたいと思っていたのですが、何しろ旧市街を歩くのがとてもおもしろく、それだけで時間が足りなくなってしまいました。
ホセ・マルティンの像付近からの革命広場の様子。周りに政府関係の建物が並ぶ。左がチェ・ゲバラで右がカストロ。国家評議会議長の演説などに使われ、多いときは数十万人の人々が集まるらしい
ハバナの旧市街は、古くは16世紀頃につくられたカテドラルや要塞などの歴史を持ち続けている街で、古く美しい建物が多く残っています。その建物を観光資源にしようという政府の政策のもと、いたるところでその修復工事が行われ、街はどんどんきれいになっています。
現在はその過渡期という感じで、きれいに修復された建物を観に来ている観光客もいるけれど、上を見上げると古い建物のベランダに洗濯物が干されていたり、玄関から外を眺めている人がいたりと、人々の暮らしも見ることができました。修復された建物が並ぶ広場には地元の人々はとても買えないような高い海外ブランドのお店がオープンしていると思うと、ちょっと横の道では、建物の中から鶏の鳴き声やラテン音楽が聞こえてきたり、ゴミの臭いにおいが鼻をついたり。大きな変化の途中だからこそ、見られる両面がとても興味深く、コスタリカよりずっと暑い日差しの中、毎日歩き続けました。修復工事が終わってしまったら、あの生活感あふれる光景は見られなくなってしまうのかもしれません。
街を上から見た様子。奥に見えるきれいに修復された建物の手前には、屋上で洗濯ものを干す暮らしの様子が見える
また、街を歩きながら、よくこんなにも多くの歴史ある建物が残ったものだと感心してしまいましたが、逆にこれだけの建物を壊すほどの余裕がなかったことや日本の伝統的な建築である木造と違って、石で造られた家はそんなに簡単に壊せないことも関係しているのかもしれないと思いました。
修復中の建物
また、芸術の豊かさを感じることも多くありました。どのレストランに行っても、ギターを弾く人たちがいたり、いい声で歌ってくれる人がいたり。キューバのバレエは世界的にもとても有名で、バレエの公演やモダンダンスの公演、修道院を使ったコンサートなども毎晩のように行われていました。コスタリカでは、音楽を学ぶのには多くのお金が必要で、そのためになかなか音楽家が出てこないという話を耳にします。CDを買いに行っても、コスタリカ人の歌手のものよりも、アメリカやコロンビアの歌手のものがほとんどと感じるくらいです。
キューバの日没は20:30ごろと遅い時間ですが、夜の公演が終わった22時ごろでも旧市街の街を歩くことができて、お店のショーウィンドーにもシャッターなどが全くと言っていいほどなかったことは驚きでした。23時すぎでも、道端でドミノをしている大人たちや、親に連れられて歩く小さな子どももいました。
警察の姿は、日中見かけましたが特に多いとは感じませんでした。
旧市街のはしっこの海で遊ぶ子どもや大人たちの向こうに、ビルが立ち並ぶ新市街が見える
国民が利用するスーパーを観光客も同様に使うことができるのですが、棚はスカスカで物は多くありませんでした。観光でキューバを訪れたことのあるコスタリカ人は、その様子を「pobre」(貧しい、乏しい、かわいそうな)と表現していました。
政府によるさまざまな制限がある中で、それを窮屈に感じている国民がいたり問題も抱えていると思いますが、昼間から通りに多くの人がいて、あまりカツカツ仕事をしている感じのしない生活、物は少ないけれど、芸術に触れあう機会が多くある暮らしというのも、物があふれ格差の広がる世界の中に存在しているのだということを感じた旅でした。
また、政府が観光を推進するという政策を打ち出し、観光客がキューバにやってくるということは、海外の文化や考え方も同時にやってくると言えると思います。その中で、資本主義ではなく、自分たちの考えをもう一度選ぶことができるのか――これからのキューバに注目したいところです。
キューバの生産物サトウキビから作られるラム酒にミントとライムと砂糖を入れたモヒートと呼ばれるカクテル。海に囲まれているのにほとんど魚を食べず、肉ばっかりのキューバ料理はなかなか口に合わなかったが、このカクテルはおいしかった
*
医療費・教育費無料などの充実した社会保障制度の一方で、
慢性的な経済危機のニュースも伝えられるキューバ。
先月の朝日新聞では、「床屋と美容室の民営化が進んでいる」とのニュースも。
Kanataさんが感じたとおり、まさに過渡期にあるといえそうです。
KANATAさんプロフィール
Kanata 大学を休学して2010年2月から1年の予定でコスタリカに滞在。日本の大学では国際学部に所属し、戦後日本の国際関係を中心に勉強をしている。大学の有志と憲法9条を考えるフリーペーパー「Piece of peace」を作成し3000部配布した。
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