Kanata 大学を休学して2010年2月から1年の予定でコスタリカに滞在。日本の大学では国際学部に所属し、戦後日本の国際関係を中心に勉強をしている。大学の有志と憲法9条を考えるフリーペーパー「Piece of peace」を作成し3000部配布した。
はじめまして。わたしは現在、大学を1年間休学して中米の国コスタリカに来ています。コスタリカは、1948年以来「軍隊を捨てた国」で、軍事費に使ってきたお金を教育や福祉に使うという方針を持った国です。そのことを6年前に『通販生活』という雑誌を読んで知り、それからずっとこの国の存在が私の頭の中にありました。
2年前には、スタディーツアーに参加する機会があり、はじめてこの国を訪れ、政府関係者の方々のお話を聞いたり、村にホームステイしたりという2週間を過ごしました。もちろん問題は抱えているけれど「コスタリカは一人ひとりが『生きる』こと、『生きている』ことの素晴らしさを知っている国だな」と強く感じました。帰国後、コスタリカでできた友人とのメールのやりとりや日本で勉強を続けていく中で、コスタリカについてもっと知りたい、2年前の時には見られなかった、もしくは見ようともしなかった、問題も矛盾も含めた部分をきちんと見つめたいと思うようになりました。それで1年間の留学を決断したわけです。
そんないち大学生のわたしの視点から見つめたコスタリカを、少しでもみなさんに伝えていければ幸いです。まだまだ勉強不足の身なので、うまく伝えられなかったり、不適当な表現だったりすることもあるかもしれません。そのへんも含めて楽しんで読んでいただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします!
色鮮やかな花々が咲いている。
というわけで、数日前にコスタリカに到着しました。やはりこちらの太陽はとても強い! わたしが滞在している首都・サンホセは山間部なので日陰や朝、夜は涼しいです。今は乾期でちょうど花の季節なので、オレンジ、紫、赤などの色鮮やかな花が咲いていて、とてもきれいです。3月が一番暑い月で、5月くらいから半年間雨期になるそうです。
着いて早々の2月7日(日)に、大統領選挙がありました。これまでの大統領であるオスカル・アリアス氏はノーベル平和賞を受賞した人で2回目の大統領の任期でした。オスカル氏の党(PLN)から、今回はラウラ・チンチージャ氏という女性が立候補し、約46%の票を獲得し、当選しました。彼女は治安の改善や貿易の促進を政策に掲げているようで、コスタリカにとっては初めての女性大統領の誕生です。
街中にあるラウラ氏の看板。彼女の合言葉は「ADELANTE」=「前に」ラウラ氏のPLN党のカラーは、緑と白。
投票は国立の小学校で行われ、たくさんの人で賑わっていました。まだ選挙権のない子どもたちが投票の手伝いをしている姿もありました。街はたくさんの車が走り、自分の支持する政党の旗を振り、クラクションを鳴らして叫んでいる人たちであふれていました。選挙が終わった時間になってもそれは続き、というかますます勢いを増していきました。コスタリカ人にとって選挙はお祭りだという話を実感できた1日でした。中にはひとつの車から二種類の政党の旗が出ていて、家族の中でも支持する政党が分かれているのが分かりました。
国立の小学校で、自分の名前が貼られている教室の前で投票を待つ人々。服装でもどこの政党を支持しているかが分かる。赤と黄を着ている女性は、オットン支持。緑はラウラ支持。
わたしは去年8月に行なわれた衆議院選挙で、初めて選挙に参加しましたが、投票した政党にそこまでの思い入れはないし、投票の後もその政党の行いをじっくりと見つめ、必要があればおかしいと声をあげるようなこともしてきませんでした。自分の支持する政党の旗を振り、お祭り騒ぎをしている国民たちは、選挙が終わっても自分が支持する政党や違う政党の行いを見つめていくだろうし、支持される側の党員たちもいつも見られているという感覚をもって政治を行っていくのではないかと思います。
また今回の選挙は大統領を選ぶだけでなく、国会議員も選ぶものでした。翌日のニュースを見て、日本人のわたしは単純に女性の数が多いなと思いました。5年ほど前の女性国会議員比率の比較について書かれた新聞記事で、上位10位以内にコスタリカが入っているのに対し、日本は98位だと書かれていたのを思い出しました。
オットン・ソリス氏のPACを支持する人々。赤と黄色がPACのカラー。
4年前の大統領選挙では、アメリカのブッシュ前政権が促進したFTA(自由貿易協定)が焦点となり、FTA支持のオスカル氏に対して、FTAは貧富の差を拡大するとしたオットン・ソリス氏(PAC)が肉薄したという結果でした。しかし、2007年に行われた国民投票では僅差でFTAが可決されました。そして、今回もオットン氏は出馬しましたが、ラウラ氏が圧倒的に勝利し、今後ますますアメリカと協力した経済のかたちがつくられていくのではないかと思われます。
コスタリカに着いた早々、大きな「フィエスタ」を体験してしまった私ですが、普段の生活についてもレポートしていきたいと思います。では、また! ¡Hasta luego!
国立劇場は1897年に建てられたもので、とても美しく、現在でも楽団が演奏したり、コンサート会場として使われている。
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kanataさんは、コスタリカの社会や政治、暮らしについて見聞きしていく中で、
感じたこと、考えたことを、「コスタリカ通信」として書いてくれる予定です。
不定期連載でお届けします。お楽しみに!
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