若手ダンスユニットがヒップホップで9条をアピール!
‘07年6月15日、東京・池袋にある豊島区民センターホールにて、従来の憲法関連の集会とはひと味違った異色のイベントが開かれました。
「豊島九条の会」の主催でおこなわれたこのイベントは、若い世代に憲法に関心を持ってもらおうと開かれたもの。目玉は豊島区内の中学校の卒業生が中心となって結成された7人編成のダンス・ボーカルユニット「I.K.B.(アイ・ケー・ビー)」と尺八奏者の宮田耕八朗さんのセッションで、会場はI.K.B.のファンや友人たちで通路まで埋め尽くされ、開始前からライヴコンサートのような熱気を帯びていました。
イベントでは前半に宮田さんとI.K.B.がそれぞれソロライヴをおこなった後、一橋大学大学院教授で政治学者の渡辺治さんが、「10代でもわかるように話したい」と、9条“改正”で日本の平和とくらしがどうなるかに関してお話しされました。
10代でもわかる講座
「どうなる? 9条“改正”後の日本の平和とくらし」
渡辺さんは改憲を主張する人の多くが挙げる「北朝鮮の脅威」について、
「北朝鮮は本当に怖い国なのか。たしかにかの国は軍国主義だが軍隊は日本に比べてもはるかに祖末なもの。GDPは日本の260分の1しかなく、国の財政は2500〜2600億円で、日本でいえば足立区(2100億)ぐらい。日本の財政は、東京だけで12兆円にもなり、軍事費で見ても日本と北朝鮮は20対1。
侵略戦争をするのにはまず国が大きくなくてはならない。北朝鮮が攻めてくると聞いたら足立区が攻めてくると考えてみれば、それが現実的かどうかわかるはず」と説明しました。
また、与党が改憲を押し進めようとする理由について、
「改憲しなくても、日本がもし侵略されたら自衛隊は身体を張って防衛することが可能。アメリカ軍がいなくても十分防衛する能力があり、改憲の必要はない。9条改正というのはアメリカと一緒になって先制攻撃をすることに賛成するということだ」と話し、さらに
「北朝鮮に対してもっとも核兵器の禁止を主張できるのは日本だ。
なのに6カ国協議で日本に覇気がないのは改憲したい人間が協議をおこなっているから。
一方で自民党は環境権を盛り込むことに反対している。利益誘導の政治ができないからだ。知る権利についても反対している。なのに“時代に合わなくなってきている、足りないところが出てきた”と改憲しようとしているなんて矛盾ではないだろうか」と力強く訴えました。
最後に渡辺さんは
「60年間、隙あらば変えようといびられてきたがかろうじて憲法は守られて来た。それは市民の声のおかげ。戦争を知らない世代が75%を占めていることがその成果を物語っている。今、戦争を知らない国民がもっと増える日本やアジアを作っていけるかどうかが問われているし、改憲への流れをストップするにはまだ間に合います」と結びました。
日本は平和を世界にする架け橋に
イベントの後半は、宮田さんの尺八とI.K.B.のヒップホップダンスが和と洋の共演を、続いてI.K.B.のメンバーが「俺たちはこう思う」というアピールをおこないました。
メンバーのほとんどがまだ10代という彼らは、それぞれ
「僕らは戦争を全く知らない日本に生まれ、戦争について何も考えずに平和な時代を過ごしてきた。けれども今日のイベントに自分たちが出演することで、同じ世代に戦争についても考えてほしいと思った」
「日本のいちばんの良さであった9条が改正されようとしていると聞いて驚いたし不安に思った。メンバーで話し合って、9条改正には賛成できない、という意見でまとまった」
「9条は他の国にはなかなかないものだ。戦争をなくすことは時間がかかるけど、せっかく戦争をしないと決めているのだから、日本はもっと世界を平和にする架け橋になったらいい」
と自分なりのことばで観客に訴えかけ、大きな拍手が巻き起こっていました。
オレらのコトバで同世代に伝えたい
イベントの後、楽屋を訪ねてあらためて彼らひとりひとりに9条に対する思いを聞いてみました。
彼らは今回のイベントに出演するにあたり、池袋を拠点に活動する若手弁護士の大山勇一さんから9条とは何か、そして現在の改憲問題についてしっかりとレクチャーを受けたといいます。
YASSくん(20歳)
「9条については今回初めて知った。友だちに話したら、みんな知らなかった。“もし9条が変えられて戦争ができる国になったとしたら、だるくね?”と友だちは言っていた。“戦争反対”とストレートに言うのはなかなかむずかしいけれど、今回のようなイベントに出たりして自分なりのメッセージを伝えていきたい」
Ryusukeくん(19歳)
「みなさん、僕らのライヴをあたたかく見守ってくれてありがとうございます。9条について家族と話しました。もし若者が戦争に駆り出されることになるとしたら家族はすごく心配するだろうと思う。友だちにも話したら“そんなのいやだ”と言っていた。
今、若者がこの問題に耳を傾けていないと思ったので、プライベートでも友だちに伝えていきたいです」
Soulくん(16歳)
「お客さんがとてもあたたかかったのがうれしかったし、自分たちの話をよく聞いて応援してくれてると感じました。9条の会の方々に、9条が変えられようとしていることを知るいい機会を与えてもらったと思います。自分の人生のプラスになったと思う。
この問題を友だちに話したら、びっくりして“ヤバいね”と言っていました。大山弁護士は“1人が10人に伝えていけば広がるよ”と教えてもらった。僕らも活動していく中で、少しでも多くの人に平和を願う気持ちを伝えたい」
麻璃也さん(19歳)
「イベントではお客さんがもっとしーんとしているかなと思っていたけれどとてもあたたかみを感じた。9条についてお父さんと話したら、“今さら変えるのはおかしい”と言っていた。若い世代はニュースなどをあまり見ないと思うので、これから自分たちのことばで伝えていきたいと思います」
Takayukiくん(19歳)
「今日はとても楽しかった。前まで9条なんて全然わからなかったけれど、少しだけわかるようになった。メンバー内でもこれまであまり考えてこなかったと思う。憲法に関しても、その他の問題、ゴミに関することとか、かんたんなことからでも取り組んでいきたい」
Tsuneくん(18歳)
「今日のイベントに友だちを誘ったときに、中身を説明したら“それならそういう話も聞かなきゃね”と言って来てくれた。
自分の父親は改憲に賛成してる。“最近の若者は甘ったれているから徴兵制で鍛え直したほうがいい”って。でも自分はとりあえず軍隊には行きたくない。
人の考えは生まれた場所や環境、そこで作られる価値観で変わってくるから、お互いを否定しあっていたら始まらないと思う。歌もそういう気持ちで作ってる。
オレらはまだ若いし、今回のイベントも最初は“こんな子たち出して大丈夫?”って思われてたかもしれないけど、おとなが言っても聞く耳を持たない世代に、オレらから言ったほうが伝わることだってある。オレは勉強は大キライだけど、9条の話はちゃんと聞けたし、友だちに伝えたいって思ったよ」
Tsutomuくん(19歳)
「9条の会のかたがたがノリがよくてうれしかった。友だちを誘ったら、“9条を守りたい”と言ってくれた。やっぱり争いごとっていやだと思う。そういう気持ちから広めていきたい」
ふだんはなかなか話すことがない「憲法」について、とてもまじめに、正直に語ってくれた彼ら。
9条の問題は若い世代にとっては特に敷居が高いイメージもあり、話しづらい話題かもしれないですが、このようなイベントがもっと増え、多くの人が身近な問題と感じるきっかけになってくれたら、と感じました。
I.K.B.は現在、人気ダンスユニット”ZOO”のメンバー、MARK氏のプロデュースによりメジャーデビューに向けて準備中とのこと。
ぜひ応援してあげてください!
(さみら)
*I.K.B.公式サイト
http://www.ikbikb.com/
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