ゴールデンウィーク2日目、夏日となった4月29日の東京。
全国でも人の行き来がもっとも激しいスクランブル交差点のひとつである渋谷のハチ公口前交差点に、突然、9の数字を身につけた若者たちが現れました。
彼らは青空の下、カラフルな色のTシャツや傘、アクセサリー、ビラなど、思い思いの9ファッションに身を包んで、スクランブル交差点を楽しそうに往復し続けます。
彼らがおこなっているのは「渋谷スクランブルジャッ9」というパフォーマンス。
「4/29の午前11時から、9を身につけて渋谷スクランブル交差点を練り歩こう」というきわめてシンプルな呼びかけのもとに、毎年40名ほどが集まっておこなっており、今年で4年目となるといいます。
背中に大きく「9」がプリントされたTシャツを着た人や、自分でししゅうを施してきた人、スカーフを9の形にして服に縫い付けた人、9の形をしたパンを手にした人など、スタイルは実にさまざま。
みんなとってもおしゃれで、アピール度満点です。
人ごみの中、縦に手をつないで渡ったり、ジャンプしたり、交差点のど真ん中で全員で「9」の人文字を作ったり、信号待ちのあいだも身体を使って一斉に「9」を表現したり。
もちろん、他の通行人にじゃまにならないように気をつけながらですが、大声で主張を唱えたり歌を歌ったりするという方法ではなく、ただ楽しそうに往復を続ける彼らのパフォーマンスは、大いに通行人の注目を集めました。
呼びかけ人の藤井芳広さん(28歳)は、
「拡声器で“○○反対!”と叫ぶだけがデモじゃない。デモとはデモンストレーション=表現の略。普段歩いている街の中で表現する。そして平和や表現をより身近なものにする。それが“渋谷スクランブルジャッ9”です。
歩いていると“何をやってるんですか?”と尋ねられますが、どう答えるかはまったく自由。参加者それぞれのことばで伝えられたらいいと思うんですよ」と説明してくれました。
私も「9」と大きく書かれたビラの「9」の部分をお尻のポケットに差し、一緒に飛んだりはねたりしながら写真を撮っていたのですが、何人もの人が興味深そうに「何やってるんですか?」「プロモーションビデオかなんかの撮影ですか?」と尋ねてきました。
「9条を表現してるんです」というと、ほとんどが「ああ、そうなんですか! いいですね」ととたんに笑顔になってくれたのがとても印象的でした。
交差点を9往復(たぶん)したところで、だいたい1時間が経過。
最初は動きがどことなく固かった参加者たちも、何度も往復するうちにどんどん動きがアクティブになり、「楽しい〜!」と連発していました。
参加者のひとり、かつべかよさんは、
「最初はひとりひとりで歩いていたけれど、途中からみんなで真ん中で9を作ったりしたら、一体感が生まれて、ひとつの思いを大きく表せたという気持ちになれました。1回目より2回目、と往復する回数が増えるごとに気持ちが盛り上がって、とっても楽しかった!」と話してくれました。
ともすると「NO!!」のメッセージだけが協調されがちな9条に関する運動。
もちろんすべての人に関心を持ってほしいと思うものの、「反対!」「阻止!」という打ち消しのメッセージだけでは、抵抗感を持つ人も少なくないのではないでしょうか。
知ってもらう、考えてもらう手段のひとつに「なんか楽しそう」というきっかけがあってもいい。こんな自由な発想で9条が伝えられたら、9条はもっともっと大きな力になれるはず、と思った連休のひとときでした。
(よしだっち)