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レポートno012
 京都大学・原子炉実験所の小出裕章氏は、映画『六ヶ所村ラプソディー』にも登場し、六ヶ所再処理工場の非常な危険性について、原子力を専門とする科学者の立場から指摘している。
 ところで、核とは何だろう?

 このセミナーは、漠然とした「核」への疑問や恐ろしさ、不安について、現状について教えてもらう良い機会となった
写真:イケダトオル

●核とは何だろう?
 核の開発は第二次世界大戦中に行われ、原爆製造計画・マッハッタン計画が始まり、10万人を超える科学者や労働者が投入され、完成。すぐさま、原爆の人体実験さながら、広島・長崎に投下された。この「実験」によって核分裂反応によるエネルギーのすさまじさと、放出される放射能がどのような被害をもたらすかが、60年をかけて明らかになっていった。

 マンハッタン計画で生み出され、開発された技術により「ウラン濃縮」「原子炉」「再処理」の施設、材料があれば、原子爆弾はいつでも作れることのようだ。

 一般に、私たちは、核とは、原爆や劣化ウランのような軍事利用するもので、原子力は、エネルギーであり平和利用するものだと思っているのではないだろうか?

 実際、私たちの国には、原子力発電所が、全国に50以上、プルトニウムは、長崎型原爆が2000個分ある。そして再処理工場は、青森県の六ヶ所村に作られ、来年の本格稼動を前に、試験運転がされているところだ。これで日本は、核兵器非保有国のうち、「ウラン濃縮」「原子炉」「再処理工場」の3者すべてを保有している世界で唯一の国となったわけである。
 小出先生は「六カ国協議では、北朝鮮やイラクには、軍事利用だけでなく「平和」利用も含め、あらゆる核(=原子力)の放棄を主張しています。核に平和利用も軍事利用もない、という考えが根本にある証拠ではないでしょうか。しかしアメリカと仲のいい国は『原子力開発』と認められ、そうでないのは「核開発」と断罪されるのが、今の国際社会」。
 そう聞くと、日本が「非核三原則」を堅持続けてきたという話が、とてもうそ臭くおもえてくる。

●放射能の被害について
 私たちの足元にある「核」の問題は、将来軍用に、いわゆる核兵器にいつでも転用できる、ということのほかに、確実に降りかかってくる危険、放射能汚染がある。すでに原子力発電所の事故で死者が出ているが、再処理工場で扱う放射能は、原子力発電所が1年で放出する放射能を1日で放出するそうだ。放射能は、目にみえないし、匂いもまったくないし、微量であれば、すぐに反応が現れるわけでもない。しかし、すでに英国の再処理工場での例が示すように、近海は深刻な放射能汚染で、対岸にあるアイルランドの国会は、処理工場の停止を求め続けている。環境や人体への悪影響が強く示唆され、おまけに事故の危険がつきまとうため、フランスやドイツ、オランダでは、すでに停止が決められている再処理工場。なのになぜ今、日本で始めようとしているのか?

●核抑止論を乗り越えるためには
 「核抑止論が核兵器廃絶の一番の敵。乗り越えるには、放射線の恐ろしさを正確に伝える必要がある。以前のインタビュー「この人に聞きたい」肥田舜太郎氏のことばを、再び考えてみる。
 力のあるものが優位に立てるという論理が、今もなおあり続けるならば、日本が9条を変えて、軍隊を持つことになると、当然、いずれは核武装もという話になるのだろうか。
 このままでは、「今ある自衛隊は、実際には軍のようなものだから、軍にしたら?」という9条改憲派から、「核兵器を持つために、軍にする必要がある」といった、9条改憲派が増えるのでは、といった懸念がある。改憲派はこういうだろう、「実際には使わないから大丈夫だ」。それが核抑止論者の考えである。

 もちろんこれは日本だけの問題ではない。これを乗り越えるためには、核というものは、爆弾という形で直接的に落とされなくても、じわじわと時間をかけて、けれど確実に人を殺してゆく放射線を大量に出しているという現実を、広く知らせることであろう。被害は、核兵器を落とされた人や国だけが被害を受けるわけではなく、保有国、加害国にもふりそそぐ。

 セミナーで配られた黄色いブックレット『beyond the nuclear age知ることからはじめよう』(スロービジネスカンパニー)には、核と原子力の基本がわかりやすく書かれている。


 また、肥田先生も登場する映画『ヒバクシャ 世界の終わりに』(鎌仲ひとみ監督) は、イラクの劣化ウラン弾による放射能被曝の現実や、原爆を作り投下し、今も保有するアメリカの市民もまた、核に苦しみ続けていることがわかる。私はこの映画のDVDを購入してみたのだが、付録についていたイラクからのアメリカ帰還兵メリッサの証言は、衝撃的である。そこには敵も味方もない。ただ、「国家」のパワーゲームの道具にされ、見捨てられた元女性軍人の悲劇。はげしい怒りがこみ上げる。
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絶望的になりそうな、今日このごろだが、
やはり肥田先生の言葉に希望をつなぎたい。
「戦争や核は、人類が防ごうと思ったら防げることです。
そのために平和憲法だって作られたんです。
50年後か100年後かわからない。
でもきっと人類は、今の間違った方向を軌道修正できると信じています。」

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