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2010-06-30up
伊藤塾・明日の法律家講座レポート
2010年6月12日@伊藤塾本校
「けんぽう手習い塾」でおなじみの伊藤真さんが主宰する、資格試験学校の伊藤塾では、
法律家・行政官を目指す塾生向けの公開講演会を定期的に実施しています。
弁護士、裁判官、ジャーナリスト、NGO活動家など
さまざまな分野で活躍中の人を講師に招いて行われている
「明日の法律家講座」を、
随時レポートしていきます。
なおこの講演会は、一般にも無料で公開されています。
「核兵器も米軍基地もいらない!」
9条市民外交でつくる平和で持続可能な地球社会を目指して
講演者:吉岡達也さん(「ピースボート」共同代表)
1960年生まれ。国際交流NGOピースボートの1983年創設時からのメンバーの一人。2008年の「9条世界会議」の共同代表、アナン前国連事務総長の呼び掛けで始まった紛争予防ネットワーク「GPPAC」の国際運営委員でもある。
「ピースボート」の共同代表の吉岡達也さんは、これまでアフガニスタン、旧ユーゴ、ニカラグアなど紛争地をはじめ世界80カ国以上を訪問。毎年3000人以上が参加する世界一周クルーズに同行しています。それらの体験から吉岡さんは、「国際紛争は武力では解決できない」、「紛争地における人道支援は、丸腰でないと信頼関係は作れない」と言います。折しも今、普天間基地移設問題で、米軍基地と沖縄の犠牲、日米同盟の見直しがクローズアップされると同時に、抑止力をどうするか? アジアの安全保障は? など国内世論は様々な問題で揺れています。しかし世界は、これをどのように見ているのでしょうか?
吉岡さんがこれまでの体験から語る、新しい「安全保障」の考え方について以下にその概要を紹介します。
*
5月末には普天間基地問題が日本をゆるがしました。「基地は沖縄県外か国外へ」、という鳩山さんの言葉を信じて、沖縄県民も私たちも期待をしましたが、結局は、辺野古案にもどってしまいました。大手マスコミは、「鳩山さんの無能さ」ばかりを書き立てましたが、結局は「日米同盟」「安全保障」そして「抑止力」という名の下に、「沖縄の人たちが犠牲になるのは、仕方ない」といったムードを作り出しているようにも見えます。
しかしこのような状況について、国際的な常識や国際的な世論というものは、どのように見ているのだろうか、と思うのです。
南米の国、エクアドルでは昨年、核兵器保有と外国軍基地を全面禁止した新憲法を採択し、実際に南米最大の米国海軍基地を追い出しました。アメリカの裏庭と言われている南米においても、そのようなことが可能になっているのです。そんな彼らから見たら、かつて10万人近い市民がアメリカ軍の侵攻によって犠牲になった沖縄が、今もなお巨大な米軍基地に支配されていること自体が信じられないのではないでしょうか。
さて、普天間の問題が明るみに出たところで、「日米同盟をどうするか?」という見直しを求める声も出てきました。その時、「では米軍が出てった後はどうする? 北朝鮮や中国の脅威は? 自主防衛をどう考えるべきか?」という問いかけがさらに強まってくることになるでしょう。そしてそれについて、マスコミや学者任せではなく、市民が真剣に議論をするべき時が来たのだと思います。
私は、理想として9条を掲げるだけでなく「現実的に日本の安全保障を9条で実現する」という立場です。ピースボートでの経験から「9条外交」は、今まさに時代の流れに合っていると思います。そして日本の持つ「9条」、そして「ヒロシマ・ナガサキ」の体験は、国際社会の中で非常に特異なインパクトを持っているということを、世界各地で感じています。
軍隊を持たないことを憲法で規定している「9条」は、ある意味、「国家」としてはありえないことかもしれません。しかし、その9条は、世界第二位の経済大国にまでなった現実の憲法の一条項として存在しているのです。
もちろん、9条の存在理由の一つは日本人の加害者としての強い反省の念に基づいています。そのこともあり、残念ながら日本の外務省はこの9条の存在を世界に対してあまり宣伝してこなかったわけですが、今こそ日本は世界に対して、この「特異」な憲法の理念と存在意義を説明しアピールすべき時を迎えているのだと思います。
世界は、明らかに軍事的な安全保障に縛られた時代から、非軍事的な「人間の安全保障」の時代に大きく変化しつつあります。このような時代において、他国への侵略、沖縄戦、ヒロシマ・ナガサキといった悲劇を土台として、しかし同時に、人間の可能性と理想の実現を強く信じるところから生まれた9条の理念は、武力によらない「安全保障」を作り上げていく国際社会の中心理念になりうると思うのです。
まずは草の根から、戦争と軍隊を否定し、武力によらない平和の実現を目指す憲法9条の理念と存在を、国際社会に広めていく行動を起こしていきましょう! そう、みなさんに呼びかけたいと思います。
*
菅政権誕生以後、報道の数も激減した「普天間」問題。
しかし、普天間「移転」の問題そのものだけでなく、
今後の日米関係はどうあるべきなのか、
そして日本の安全保障はどういう形によるべきなのか、
今こそ本質的な議論が必要なのではないでしょうか?
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