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2010-06-2up

伊藤塾・明日の法律家講座レポート

2010年5月19日@伊藤塾本校

「けんぽう手習い塾」でおなじみの伊藤真さんが主宰する、資格試験学校の伊藤塾では、
法律家・行政官を目指す塾生向けの公開講演会を定期的に実施しています。
弁護士、裁判官、ジャーナリスト、NGO活動家など
さまざまな分野で活躍中の人を講師に招いて行われている
「明日の法律家講座」を、 随時レポートしていきます。
なおこの講演会は、一般にも無料で公開されています。

ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン
の問題を知っていますか?

「新日系フィリピン人(JFC)の現状と問題点」
講演者:カルメリータ・ヌキさん(DAWN代表)

 ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン(JFC)とは、フィリピン人の女性と日本人の男性の間に生まれた子どもたちをさすことが多く、日本およびフィリピンの両国で、現在10万から20万人がいると推定されています。彼ら/彼女らの中には、さまざまな事情により父親から認知を受けることができなかったり、養育費どころか、会ってももらえない子どもも少なくないそうです。母親と子どもはフィリピンに取り残された状態におかれその結果、子どもの人権が侵害されるといった問題があります。
 DAWN(ドーン)は、1996年、JFCの子どもたちと、母親であるフィリピン人移住女性の権利と福利を守り、自立支援することを目的として発足したフィリピンに本部があるNGO団体です。女性と子どもたちが、再び移住という選択をすることなく、フィリピンで生きていくことを可能にするために、さまざまな支援を行っています。
 今回の講座では、DAWN代表のカルメリータ・ヌキさんをはじめ、4人の現地スタッフ、JFCの子どもたち8人、日本でボランティア活動に従事しているスタッフらが伊藤塾のセミナーホールに集まりました。
 まずは代表のカルメリータさんより、「多くのJFCには、貧困や差別、そして国家の保障が十分に受けられないという問題がある」との指摘があり、そのためDAWNでは、フィリピンの女性移住労働者とその家族のために、「カウンセリングと法律相談」や「アドボカシー」、「母親たちの自立生計支援」そして「ネットワークづくり」に取り組んでいるのだという報告がありました。

 つづいて当事者である子どもたち、8人が自己紹介をしました。7歳から19歳までの子どもたちは、将来の夢を「弁護士」「医者」「ビジネスウーマン」「エンジニア」など次々にはっきりと語ります。今回、子どもたちはDAWN劇団「あけぼの」での日本公演のために来日しました。「あけぼの」は、JFCの抱える問題を広く知ってもらうためのミュージカルを行なっており、今回も全国8カ所で公演をしました。

 講演後、DAWN—JAPANスタッフの通訳で、質疑応答の時間を持ちました。1998年東京で発足したDAWN—JAPANは、DAWNを日本で支援するために集まった有志によるNGO団体で、今回もDAWN劇団「あけぼの」の公演のとりまとめなどを行っています。会場から「日本人として何かしたいと思いますが、どんなお手伝いができるでしょうか?」との問いにカルメリータさんは、「いずれもボランティアですが、二つの仕事があります。一つは、フィリピン語と英語の通訳、翻訳、そして『あけぼの』公演のサポートです。もうひとつは、JFCのお父さん探しです。『一目でも会いたい』という思いを持っている子どもが多いですから、希望をかなえてあげたいと、少しの手がかりをもとに探し出す努力をします。うまく探すことができたら、親子関係が作れないか、交渉をしますが、うまくいくのは、1/10もないのが現実です」と厳しい現状を語ってくれました。
 またJFCの問題は現在もなお進行形だとはしながらも、「10年前に比べて、状況は良くなっている」との報告もありました。それには日本の法律の改正が大きく関わっていました。2009年、国籍法が改正施行され、両親が婚姻関係になくとも日本人の父親(または母親)の認知があれば国籍が取得できるようになったこと。また2004年に国が人身取引の被害を認め、在留資格の改正をしたことなども、歯止めになっているようです。一方で、フィリピンから日本に向かう人びとの流れはとどまらず、渡航ルートや手段が潜在化する中で、フィリピン人移住女性とJFCの問題は見えづらくなっているとの指摘もされています。

伊藤塾では、今秋よりJFCの子供たちの未来の夢をかなえる一歩として、
DAWNとパートナーシップを結び、社員採用を予定しています。

・関連図書
  「フィリピン女性エンターテイナーの夢と現実」(明石書店)

・国籍法の改正について 
  http://www.moj.go.jp/MINJI/minji163.html

・在留資格「興行」に関わる基準省令の改正について
  http://www.immi-moj.go.jp/keiziban/happyou/zairyuu.html

・DAWN 
  http://www.dawnphil.org/index.htm

・DAWN—JAPAN 
  http://www.dawnjapan.dawnphil.org/

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講演では、代表のカルメリータさんが、
日本政府や社会への不平や憤りといったことを
まったく口にしないことがかえって印象的でした。
もっと深く知りたい、何かできることをないか、そう思わずにはいられません。

来週は、5月22日に行われた元最高裁判事の福田博さんの講演
「日本の民主主義の将来」の模様をレポートします。

今後の「明日の法律家講座」の予定は、こちらにあります。

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