今、沖縄の人たちは複雑な事情を乗り越えて「新しい米軍基地はいらない」と一つになり、選挙や集会など民主的な方法で意思表示を続けています。そうした民意をまるで無視し、工事のための海底調査などを力尽くで進めていくこの国。「辺野古・高江」は、ぎりぎりの抵抗が続く最前線の場所になっています。その現場に赴き、カレーや鍋を囲みながら「ゆんたく」(沖縄の言葉で「おしゃべり」の意)をする、沖縄の学生有志団体「ゆんたくるー」。彼らはそこで何を見て、何を考えているのか。沖縄の現状や本土に向けての思いなど、さまざまなことを沖縄より伝えてもらいます。「ゆんたくるー」の学生たちが交代で、ほぼ毎週連載でお届けします。
はいさい! 初めまして、ゆんたくるーの新垣康大と申します。
現在、ゆんたくるーの一員として活動をしておりますが、実は、昨年まで基地問題に対する関心があまりありませんでした。全く関心が無かったわけではありませんが、基地に対して賛成とか反対とかの意見もなく、ただ毎日メディアから流れる情報を見ては、「同じ沖縄人同士が、なぜ米軍基地をめぐって対立しているのだろう?」「座り込みの人たちはなんでここまで頑張り続けられるのだろう?」という、少し他人事のように思っていました。
しかし、ゆんたくるーのメンバーに出会い、沖縄でのとても大きな選挙や、昨年あった様々なことをきっかけに、今では普段の生活の中でも基地問題に対して考えるようになりました。
今回はその考え方、受け取り方が変わった以前と、今の自分について書いてみたいと思います。
○基地の存在は当たり前?
私は沖縄県内の大学に通う大学2年生で、出身は辺野古のすぐ近くです。あまりにも基地が身近すぎて、基地の存在が当たり前になっていました。反対運動を見ても、「どうせ行動を起こしても何も変わることはないだろう」、と思っており、「基地がなくなれば一番それが良いのかもしれないけど、それで恩恵を受けている人もいるようだし、基地はあってもなくてもどちらでもいいんじゃないか」という意見を持っていました。沖縄から出るまでは…。
○知られていなかった沖縄のこと
私は昨年、通っている大学の国内留学制度を利用し、一年ほど東京都内の大学で勉強してきました。その際、在京メディアが基地問題をあまり取り上げないこと、沖縄と本土とでは基地に対しての意識に違いがあることを知りました。
沖縄県知事選挙以降は新基地建設問題がメディアに多く取り上げられてきていますが、それ以前はあまり基地に関するニュースを見ませんでした。意識の違いに関しては、周りの学生に基地のことを聞いたとき、「基地問題は沖縄だけの問題」とよく言われたことです。他にも、6月23日の「慰霊の日」を知らない人が多いことや戦後の沖縄を知っている学生が少ないことも驚きでした。長崎・広島の原爆が投下された日や終戦記念日は知っているのに慰霊の日は知らないのです。
多くの学生は「沖縄に行ったことがある」、「いいところだよね」と言う。しかし、そこにある基地やそれによって引き起こされる問題には目を背けており、また、その背景となる沖縄戦のことも知らないことがすごくショックでした。
○基地について知らないことが悔しかった
しかし、何よりも悔しかったのは、東京で友だちや学生から基地問題に対して聞かれた際、十分に自分の意見を言うことができなかったこと。言えるのは、少し観たテレビや新聞から流れてきた情報だけで、自分は結局どっちつかず。もっと基地に対して関心を持ち、自分の考えを持っていれば、周りの友だちや学生に、基地に対しての興味・関心を促せたのではないかと思いました。その後悔は、沖縄に帰ったらもっと基地のこと、戦争のことを学びたいという原動力になりました。
そして、この2月に沖縄に帰り、ゆんたくるーに出会い、本当の基地問題を知る機会が多くなりました。主な活動は「辺野古カレーパーティー」。辺野古・キャンプシュワブのゲート前でメンバーが作ってきたカレーを囲みながら、参加者の基地に対する思いに耳を傾けました。それから毎日様々な視点から見る基地問題に対して悩み、考え、自分の意見をまとめようと必死に考えるようになりました。
○自分の目で見て、考えて
沖縄に帰ってきて、人生で初めて訪れたテント村と座り込みの現場は、「怖い場所」というイメージとは違い、今の沖縄の現状を見ることのできる場、学べる場、考えることのできる大切な場でした。こうやって、基地について考えるようになった私は、いつのまにか家族や友だちとも、自然に基地について話すようになっていました。今までは話しづらいというイメージで避けていた基地問題の話題は、話してみると意外とそれぞれが意見を持っていたのです。基地問題は様々な問題が折り重なっていて複雑ですが、それぞれに基地についての考え、意見があることを知ることができました。
私は基地のない沖縄が見たいと思っています。いつまでも基地に対しておんぶに抱っこの沖縄は見たくありません。ましてや新基地建設は断固反対です。沖縄の宝でもあるきれいな海を壊してまで新基地を作るのは理解できず、平和のために基地を造るというのは間違っていると思います。68年間守ってきた日本の平和憲法をもっと活かし、沖縄からはもちろん、日本からも米軍基地を撤廃し、そして非武装・非暴力の国で本当の平和をリードすべきです。まだまだ勉強中な面もありますが、これが今の私の考えです。
基地問題は、すぐに解決できる問題ではありませんが、行動しなければ何も起こらないし、何も変わらない。だから少しでも仲間たちと行動を起こして、僕が一番求める「平和」に日本が一歩一歩近づいていけるよう、これからもアクションを続けていきたいです。
・「5月15日:祖国復帰の日」に開催予定の「ゆんたく会」のお知らせ
The Day of Reversion
〜いま、「5.15」を考える〜
日時:5月15日(金) 16:00〜18:00
場所:cello(那覇市泉崎1-17-10 1F)
ゲスト:新崎盛暉(沖縄大学名誉教授)
人数:15人程度(学生・若者中心)
費用:ドリンク代(500円程度)
ゆんたくるーでは活動のためのドネーションを募っています。ご支援よろしくお願いします。
銀行名:ゆうちょ銀行
●ゆうちょから
記号:17070 番号:1196681
●他銀行から
店名:七〇八 預金種目:普通 口座番号:0119668
名義:ゆんたくるー(ユンタクルー)
辺野古近くの出身でも、「基地問題を他人事のように思っていた」という素直な思いを語ってくれた新垣さん。東京の友人たちが、あまりに沖縄戦の歴史や慰霊の日のことを知らないことに驚いたといいますが、思い返してみると、東京で育った私も、沖縄戦について授業ではほんの少ししか習わなかったような気がします。実際に現場に行って、見て、周りの人と話して、考えること。その大切さをあらためて思いました。カレーを囲みながら、どんな話をしているのか、どんな意見があるのか、ぜひ現場からの声を伝えてほしいです。