東京での暮らしを後にして、故郷である滋賀県米原市にUターンした渡部秀夫さんと優さんのご夫婦。自分たちの足もとを見つめながら、地域での新しい交友関係を作り、場づくりに挑戦しています。そんな暮らしの日々から考えたことを綴ったり、またそこで知り合った人たちや面白い試みについても紹介していくコラムです。不定期掲載でお送りします。
第7回
「指一本触れさせない」
とか言ってないで麹つくれ!
こんにちは。
味噌づくりと麹づくりをしながら、7ヵ月になる娘と麹菌に話しかける日々を過ごしています。
滋賀県の南東、東近江市にある野菜のごはんと暮らしの店「でこ姉妹舎」さんが主催した「琵琶湖とあしたの今に vol.2」というイベントに行ってきました。
でこさんは、大阪で震災瓦礫の焼却が始まることへの抗議として、京都から滋賀に移住。京都でされていたお店を、2013年の暮れから、引き続き滋賀でも始められました。このお店にかけるでこさんの想いを以下に紹介します。
・育った場所と育てられ方、育てた人がわかる野菜
・どこで何を使って作られたかわかる食品、加工品
・生きものの循環になるべく負担をかけない生活雑貨でこ姉妹舎では、そんなものたちを選んで、お客さまと「食べもののこと」「暮らしのこと」をたくさんお話しできる店をめざします。
環境へのさまざまな汚染が激増しているいま、一人ひとりの毎日の選択が未来につながっていくと思います。
でこ姉妹舎のホームページに書いてある「食べることは生きること」という言葉が素敵です。
このイベントでは、スワロウカフェさんによる「米軍基地がつくられている京都・宇川、沖縄のようす」そして、石川和広さんによる「暮らしに紛れこむ放射性ゴミ」という2つのお話があり、その後交流の時間が設けられました。
滋賀県の隣、京都において、高江、辺野古と同様の強引さをもって米軍基地が建設されていることを知り、驚くと同時に、徐々に地元の方たちとつながりつつあるというスワロウカフェさんの言葉に前向きな可能性も感じました。
そして印象的だったのが、参加者のほとんどが幼い子連れであったことです。年始に地域の寄り合いに出席して感じた閉塞感とは対照的でした。
ちなみに、スワロウカフェのメンバーである大野光明さんは沖縄問題についての本『沖縄闘争の時代1960/70 分断を乗り越える思想と実践』を出版されています。
イベント終了後、でこ姉妹舎の方との立ち話で、Vol.4のテーマが「海外移住」であると聞かされました。でこさんによると、昨年の衆院選後から国外移住という選択が現実的なものになったと口にするお母さんが増えたそうで、イベント告知するやいなや満席になったそうです。
「憧れの海外移住」というような、これまでの享楽的価値観の下に出てくる声ではなく、日本のよさ、美しい四季や素晴らしい知恵、伝統、日々の平凡な暮らしといったものを大切にしている人たちの中から、国外への移住を選択肢の一つに入れる人がでてきた現実。
我が子を愛することで、他人の子どもも愛おしくみえてくる。子どもという未来そのものを大切に育みたいと思い、試行錯誤している地に足のついた人たちの中から、こうした移住の声がでています。この声を勇ましく空虚な言葉ばかりを並べている現政権の頭でっかちは、危機感をもって聞くべきだろうと思います。
ここで記事にするにあたり、でこ姉妹舎さんからもひと言をお願いしようと思ったのですが、でこさんがブログに投稿されていた文章がそれにピッタリだと思ったので、それを借用させてもらうことにしました。
あれもこれもホントにぜんぶどれも理屈の通らんことを政府はいけしゃあしゃあとして、それがろくに報道もされないし、だいたいがみんな聞こうともしなくて、わずかばかりの人が理屈の通らんことすな!ってまともなことを言おうとすると叩かれる。ホントにぜんぶどれもこの国の政府の対応は同じ。私たち国民も、大飯を見た人が辺野古や高江を見ないし京丹後を見ないし、イラク戦争に加担した私たち日本人が再び自己責任論を繰り返すのは太平洋戦争の責任を問うことなく70年ものほほんと平和でバカでいた私たち日本人の本質。
滋賀にお越しの際はぜひ、でこ姉妹舎さんへお立寄りください〜。
でこ姉妹舎のおふたり
最近のアレコレ
■自主保育仲間ができました
去年の暮れに、自主保育の仲間集めをしているお母さん数人と出会いました。その方たちが目指す青空自主保育は、私たちが「森のようちえん」と呼んでいたものと方向性や求めているものが共通していたので、迷うことなく参加させていただくことになりました。仲間はすでに10名ほど集まり、あれやこれやと1年ではやりきれない程のやりたいことが出ています。
■山の恵みを活かしたい
今年は自伐林業も始めることにしました。もちろん田んぼつくりもおこないます。狩猟免許も取得しました〜。
■今後の予定
3月1日「まちづくり人財ノ森集会2015」に、ワークショップの話題提供者として参加させていただきます。
3月25日 映画『こどもの時間』上映会を友人たちと開きます。
以下、上映会に向けての個人的な想いです。
原発事故後の対応、先のダーウィシュ(自称イスラム国)の件と自民党が掲げる改憲草案の関係性、再び席巻した自己責任論、辺野古・高江・京丹後で進められているような繰り返される暴挙を取り上げもしない報道機関を見ていると暗澹たる気持になりますが、こんな時こそ、未来である子どもと向き合い、その姿から大人である私自身の在り方を学びたいです。
4月3日 サティシュ・クマールさんお話し会&ゆっくりマルシェに、企画、カタリバ、出店で参加させていただきます。出店では、沖縄やんばるの高江カンパグッズも販売いたします。
■手間ひまかけることの意味
いのちあるものを作り育むことは一種の行動制限が発生しますが、それは有限である身体感覚を取り戻し、情報過多の社会で溺れない確かさをもたらすと思います。
朝、隣で寝ている娘が発する言葉にならない声で目を覚ますと、娘はニコニコと笑顔で迎えてくれる。そんな平凡な暮らしに心から感謝します。そう思えば、テロ撲滅という大義名分で、異国の同じく平凡な暮らしを壊すことが許されるはずはありません。
それでは、また。
☆タイトルについて:日本人を標的にするというダーウィシュの発言を受けて、安倍内閣が発した戯言からきています。
「こどもの時間をみんなで観たい in 米原」のイラスト
住民の反対運動のなか、弾道ミサイルを探知する「Xバンドレーダー」を配備するための「米軍経ヶ岬通信所」(京丹後市)の建設工事が着工されたのは、2014年の5月のこと。近畿地方では初の在日米軍基地です。10月にはレーダーが搬入され、稼働が強行されました。今年2月には、基地に設置された発電機による低周波騒音が判明し、不調を訴える住民も出て、3台の発電機が止まりました。
同じような出来事があちこちで起こっています。自分の地域に足をつけて暮らしている人たちが、同じ思いをもつ他地域の人たちと手を結んで支え合えたら、これから強い力になっていくのではないでしょうか。